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「目指すは日本発のメガベンチャー」。国内の電動バイク・電気スクーターの日本最大手に成長したテラモーターズの代表取締役社長、徳重徹さんはそう語ります。テラモーターズのチャレンジングスピリッツの原点はどこにあるのでしょうか? ライフネット生命の勉強会で、チャレンジングスピリッツの原点につながる自らの信念や使命感を語ってくれました。

■アジアの空港に降りるたびにアドレナリンが湧く

設立は2010年。その後、わずか2年で年間販売台数3,000台を突破して、電動バイクの国内トップシェアを獲得。東南アジアを中心に海外市場にも積極的に進出を図るテラモーターズは、常に「ベンチャーらしくない」と形容されてきた企業です。

コンテンツ・ビジネスなどソフトの分野で事業を拡大するベンチャーが多数派を占める日本において、徳重さんはベンチャーでありながら製造業を営み、日本で成功をおさめた後に海外に打って出るという手順を取らず、最初から世界市場を目指して事業を進めてきました。しかも、その活動領域はベンチャーにありがちなニッチな市場ではありません。ホンダやヤマハといった巨大企業との競合を余儀なくされる領域です。

ベトナム・ハノイのショールーム、大盛況のオープニング

ベトナム・ハノイのショールーム、大盛況のオープニング

ベンチャーなのに製造業を営み、ベンチャーなのに最初から世界を目指し、ベンチャーなのに大手領域に挑む。どの角度から見てもこれまでの日本のベンチャー像とは異質の存在であるテラモーターズ。その経営の舵取りを担う徳重さんは、アジアの空港に降りるたびに挑戦心に火がつくと語ります。

「ジャカルタの空港でもバンコクの空港でも、イミグレーションですぐに目に飛び込んでくるのはサムソンの広告です。置いてあるカメラはLGの製品ですしね。バングラデシュに行くと、今度は中国のファーウェイの看板が目立つようになる。いまや東南アジアでの日本企業の存在感はゼロ。あの光景を見ると、アドレナリンが出るというか、どんなに眠くても一気に目が覚めます(笑)。アメリカだって、いまやテレビのトップメーカーはビジオですし、中国のシャオミはたった5年で1兆円の売り上げを達成しました。しかしながら、いまの日本には世界でわたりあえる企業が本当に少ない。完全に他のアジア勢にしてやられています。どうして、世界の人にできて日本人にできないのか。その痛烈なる疑問が僕の原点です」

■戦後日本の卓越した経済人、財界人の言葉に勇気づけられた

世界で活躍するベンチャー企業がないのなら、自分がやってやろう。そんな気概に満ちた徳重さんもかつては内気で神経質な学生だったといいます。

「僕はベンチャー企業の中でもクレージーな人だと言われていますが、山口の超田舎の出身で、もともとは普通の人間だったんですよ(笑)。起業家を目指すきっかけのひとつになったのは、大学に落ちて浪人生活を送っていた頃ですね。周りは現役で大学に入学する学生ばかり。浪人なんて学年300人中2人いるかいないかの厳しい環境で、僕はいろいろな本を読みました。中でも、勇気づけられたのが昔の起業家に関する本です」

永野重雄、松下幸之助、土光敏夫。徳重さんは、戦後の日本の発展に貢献した経済人、財界人に関する書籍を読みあさりました。その中で、思考プロセスについて大きな学びがあったと語る本が、1979年に発行された永野重雄さんの「君は夜逃げしたことがあるか―私の人生体験と経営理念」です。

新日鉄の会長をつとめ、日本商工会議所会頭や経団連顧問などを歴任した永野さんの華々しいキャリアに似つかわしくないタイトルの本には、ないない尽くしの環境の中で、いかに結果を出すか、その考え方と行動プロセスが克明につづられていました。

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