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設立から2年で電動バイクの国内トップシェアを獲得し、現在は東南アジア市場の開拓を急ピッチで進めているテラモーターズ。その代表の徳重徹さんがライフネット生命の勉強会で、現在の日本のビジネスマンに活を入れました。
(前編はこちら)

■東南アジアに横たわる巨大市場

テラモーターズがいま重点的に進出しているのは東南アジア諸国。中でも、ベトナムとインドネシアに力を入れています。理由は簡単明瞭。そこにビジネスチャンスがあるからです。

ガソリンバイクの販売台数は、日本が年間約30万台に対して、ベトナムでは300万台、インドネシアは700万台。中国では1,500万台以上。桁違いに大きなバイク市場が大陸の向こうに横たわっているのです。

「現地に行くとわかりますが、ベトナムではみなマスクをしてバイクに乗っているんですね。排気ガスのせいで空気が非常に汚いからです。マスクだけでなく、最近ではさらに黒いサングラスまでかけているので、まるで銀行強盗が集団で動いているみたい(笑)。タイやインドネシアもこれに近い状態です。僕はここを変えていきたいんですよ」

ベトナムの街中にはバイクがあふれ、排気ガスのためマスクをしている。

ベトナムの街中にはバイクがあふれ、排気ガスのためマスクをしている。

すでにベトナムには、15箇所にショールームを開設し、2014年10月から販売を開始しました。日本製品のクオリティを武器に、電動バイク約36万台の市場で30%のシェア、10万台を当面の目標に掲げています。バングラデシュでの事業もいよいよスタート。中国メーカーの攻勢が激しいものの、徳重氏は40万台の市場で30%のシェアを確保したいと意気込みます。

■リスク回避の姿勢が信用度の高さを帳消しにする

月のうち、3週間はアジアを巡る日々。忙しい毎日の中で徳重さんは、日本人や日本企業への評価の高さを実感する一方で、日本人に何が足りないのかを悟ります。

「アジアの人々の間で、日本人はNATOだと言われています。これ何の略だかわかりますか?No Action Talk Only。話はするけれど行動はしない人たちだと思われているんですよ。でも、僕に言わせれば、No Action Reserch Onlyかな。大企業のえらい人が『うちのミャンマー市場の攻略はどうなっているんだ』と部下に命じて、調べさせてレポートをあげて終わり(笑)。行動しないのはリスクを恐れてばかりいるからです。アジアの経営者はリスクよりも機会ロスが怖い。だから意思決定が早くなる。日本人は信用度の高さは抜群なのに、スピード感がなく、コミットが少ないため、せっかくの信頼度の高さが帳消しになっているんですよ」

リスクを回避し、安全策に甘んじる日本企業が多いため、リスクをいとわず攻めるテラモーターズは現地企業からは驚きの目で受け止められています。日本企業が打ち合わせや商談にやってくる際には、多人数で来社するケースが多いことから、現地企業は椅子を4つから5つ用意するのが通例ですが、テラモーターズの場合、訪れるのはたった1名。しかも、その1名に裁量権があり、その場で意思決定を行っています。意見を交わし、具体的な商談に入っても「後は、社に持ち帰ってから」となりがちな日本企業とはまったく異なる対応を、スピード重視のアジアの企業が歓迎しないはずがありません。

「海外進出する企業にはよくグローバル人材が必要だと言われていますが、僕から言わせれば、大事なのは使命感や信念を持つこと。語学ができるのも必要ですが、僕の英語なんかブロークンですよ。自分が何者で何を目指し、何を成し遂げようとしているのか。自分はこれをやるべきだという使命が明確であれば、それは海外の人にもちゃんと響くし、意気に感じてくれる人は絶対にいます。そうした人材は特に向こうの重鎮や財閥の方にも好まれますね」

(次ページ)テクニックより、信念を持て