15010601_1東京で美術館やギャラリーに行こうと思ったら、何を見て展覧会の情報を調べますか? 情報サイト「Tokyo Art Beat」は、大小さまざまなアートの催しをバイリンガルで網羅的に掲載している、日本のアート界最大級のサイトです。ウェブだけではなく、いまや発行するフリーペーパーは10万部、TwitterやFacebookのフォロワー数はトータルで15万を超え、提供するふたつの有料アプリのダウンロード数は累計15万にのぼります。この充実した情報とインターフェイスは、果たしてどのように作られているのでしょうか。Tokyo Art Beatを運営するNPO法人GADAGOの富田さよさんと、田原新司郎さんにお話を伺いました。

■「こんな情報が欲しい」というアート好きの思いから

──東京のアート・デザインイベント情報を網羅的に集約しているサイト「Tokyo Art Beat」は、どのように生まれたのでしょうか。

富田:2003年頃に、美術を見るのが好きなフランス人2人と日本人1人が東京で出会って、「東京にはたくさんのアート・デザインイベントがあるのに、情報がひとつに集約されていない」ということから、自分たちで情報を集めて発信し始めたのが始まりです。たまたまその3人は、プログラマー、デザイナー、マーケターという組み合わせで、インターネットに興味がある人たちだったので、自分たちでサイトを作ろうということになりました。その翌年(2004年)の10月に「Tokyo Art Beat」(TAB)のサイトをリリースして、その次の年には運営母体としてNPO法人GADAGOを設立しました。

この組織名は、英語の「GOTTA GO」、行こうよ、というニュアンスの言葉にちなみ、とにかく足を運んでアートやデザインを楽しもうよ、という思いでつけられたものです。

──情報を収集して、編集して、発信し続けるって、大変なことではないですか?

「Tokyo Art Beat」のウェブサイト。月間5〜600のイベント情報がアップされる。

「Tokyo Art Beat」のウェブサイト。月間5〜600のイベント情報がアップされる。

田原・富田:はい、大変です(笑)。

富田:いまは多くの美術館やギャラリーからメールで情報をいただけるようになりましたが、それでもメールやサイトやリリースなどから、すべて人力で情報を収集して、入力して、編集して、ということを行っています。

設立当初から、創設者の友達などのツテで、美術に興味があるとか、こういうことをやるんだったら協力するよ、というボランティアベースの人たちがちょっとずつ集まってきて、仕事や学業のかたわら、情報収集と入力のお手伝いをいただいていました。

そこから組織が整備されてきて、いまはインターンを4か月毎に採用して仕事をしていただいています。

──インターンはどんな方なんですか?

富田:割合としては学生が多いですね。社会人を経験してアートに興味をお持ちの方など、色々な方がいらっしゃいます。

参加動機もさまざまです。インターネットやデザインに興味があるとか、ウェブサイト自体に興味があるとか、アートのキュレーションやマネジメントに興味がある人もいますし、自分でアートを作る方もいらっしゃいます。

──そうすると、スタッフの陣容としては?

富田:常勤スタッフ3名と、翻訳者が3名、インターンは6名です。アプリや、隔月で発行しているフリーペーパー専属のインターンもいます。

──立ち上げ時の勢いや思いを継続していくことや、インターンスタッフを途切れることなく採用していくのは大変ではないですか?

富田:はい。でもむしろ、インターンのような形で、色々な人が関わることで与えてくれる刺激や、運んでくれる新しい風によって継続できているところもあると思います。スタッフ3人だけだったら広がらなかったことにもチャレンジできたりします。

──インターンを卒業した人たちは、その後どのように?

富田:TABの協力者になっていってくれている面が多々あります。たとえば、美術館やギャラリーに就職する人もいますし、美術雑誌の編集者になる方もいます。アート関連の職に就いても就かなくても、様々な形でTABに関心を持ち続けてくれるので、そういうネットワークの広がりが、インターンの制度を通してできているのが本当にありがたいです。

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