■SEO対策より大事だったこと──信用を高めるには

──どうやってこれだけのアクセスが集まるようになったんですか?
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田原:あえてSEO対策はそんなにせずに、情報の網羅度をとにかく上げるということに注力した結果、信用が上がっていったのだと思います。

いまは「Antenna」などのキュレーションメディアにも配信していますが、もうちょっと外部配信を増やしていきたいと思っています。

富田:大きい美術館だから載せるとか、小さい美術館だから載せないというような区別なく、こちらで取捨選択せず網羅的に掲載しようというポリシーが当初からずっとあるので、「こんな展覧会もTABに載ってるんだ」と見てくださる方も多いと思います。

田原:はじめた当初は、まだウェブサイトを持っていない美術館やギャラリーなどもあって、こちらが集めて発信した情報がウェブ上で一番早い、ということもありました。

──サイトのデザインや使いやすさも評価されていますね。

富田:やるんだったらユーザーが足を運びたくなるようなものにしたい、そばにおきたくなるようなものにしたいという思いで力を入れてきたところです。

創業メンバーは今も仕事のかたわらTABに関わり続けていますが、元々ウェブが本業ということもあって、「いまだったらこういうサイトにしていくべきだよね」ということを反映させているのではと思います。

──新しいメディアを作る、というと、出資を募って、それを元手にキャピタルゲインを得られるまでがんばる、というパターンが多いように思うのですが。

富田:私もスタッフとして入ったときに不思議に思ったくらい、そういう話がない組織なんです(笑)。「これがあったらみんなが喜ぶし、ためになるし、自分たちも楽しいし、そこで生まれるコミュニティがハッピーだといいよね」ということで続いているところがあります。他にはあまりないかも知れません。なので、みんなずっと愛情をもって関わってくれていると思います。

■運営資金はどこから?

──NPOというと、よく助成金や受託事業で運営していくことがありますが、GADAGOさんはいかがですか?

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富田:過去には助成をいただいて活動したこともあったんですけれども、主に広告をメディアに載せて運営することが中心になっていて、現在は自立した運営になっています。

田原:おかげさまで、広告は増えてきています。10年前は、広告費といっても、意味合い的には助成金的な形で活動を応援してくれていたような企業もあったと思うんですが、最近はウェブにしてもフリーペーパーにしても、「これを見るとお客さんがきてくれるから」ということで純粋な広告として出してくれるようになりました。バナー広告のクリック率が平均1%以上となっていることも、好評をいただいています。広告主は、大きなアートイベントを手がけるような企業や広告代理店から、小さなギャラリーまで、色々なところに出していただいていますので、バランスはいいと思います。

富田:もうちょっと全体が膨らんで行くといいのですが(笑)。

──この10年というと、リーマンショックなどもあったなかで、順調に広告をのばしてきたわけですか?

田原:実はリーマンショックの後くらいに、かなり厳しい時期がありました。アート業界は実業界よりちょっと遅れて景気が冷え込むんですが、2010年の頭くらいが一番辛くて、活動を続けるために一時期寄付募集のキャンペーンをやりました。そこで色々な方がご支援くださって、なんとか持ち直すことができました。

キャンペーンで開催したトークイベントなどで、実際たくさんの方にお会いすると、ああ、これだけの方々に支えられているんだな、ということを実感しました。

富田:今みたいに[クラウドファンディング]の仕組みが整う前の時代のことなので、寄付をしてくださるかたも特別な感覚もあったと思うんですけど、寄付をくださった方々のお名前が並んだリストを見ると、こういう方々に支えられているんだなと、今でも思いますね。

──関西版も始まりましたね。

富田:「KANSAI ART BEAT」は一時休止していたのですが、2013年6月に再開することができました。情報の形式とか運営のしかたはTABとまったく同じですが、エリア独特の状況をふまえて、地元に根ざした活動になるようにがんばっています。

(後編につづく)

●Tokyo Art Beat

<クレジット>
取材・文/ライフネットジャーナル オンライン編集部
撮影/鈴木慎平