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編集長の岩田です。2014年12月21日(日曜日)に行われた HONZ × d-labo × Book Lover’s Dayのイベントに参加いたしました。
ライフネットジャーナル オンラインでは、そのトークイベントのなかから、HONZの東えりかさんと当社会長兼CEO出口のコメントを中心に、2014年のオススメ書籍についてご紹介いたします。

※HONZとは読むに値する「おすすめ本」を厳選された読み手が、何冊もの本を読み、そのなかから1冊を選び出して紹介するサイトです。

2014年1番印象に残った本は……

東:HONZの東えりかです。今日は出口さんに来ていただきました。出口さん、よろしくお願いいたします。
出口さんをご紹介しますと、ライフネット生命の会長兼CEOです。2014年は『「働き方」の教科書』とか、『本の「使い方」』、『ビジネスに効く最強の「読書」』とか、『仕事に効く教養としての「世界史」』、『部下を持ったら必ず読む「任せ方」の教科書』など多数出されています。いつもはビジネス関係のご講演が多いんですが、今日は本に限ってお話をうかがいます。2014年に読んでおもしろかった本や、最近読んでいらっしゃる本について教えてください。

出口:2014年に印象に残ったのは、『知ろうとすること。』という、すごい短い、濃厚な本です。これは、糸井重里さんと東京大学の早野龍五先生による対談です。なんで心に残ったかというと、やっぱり物事をちゃんと知るということは、ものすごく大事、ということがひしひしとわかったからです。世の中には、“トンデモ本”が山ほどあります。この本には、世の中にある“トンデモ本”とか根拠のないことについては、誠実な態度で粘り強く「おかしいですよ」ということを言い続けなきゃいけない、ということが書いてあるんです。

『知ろうとすること。』早野龍五・糸井重里著(新潮社)

『知ろうとすること。』早野龍五・糸井重里著(新潮社)

僕はたまたま昨日ちょっと用事があって、上海に行ってきて、先ほど帰ってきたんですが、上海ではほとんどどこにも行く時間がなかったんですけど、唯一大きい本屋には寄ったんです。本屋で何を一生懸命探していたかといえば、たとえば南京の話とか、愛国教育の話とかいわゆる反日の本を探しました。ですが、その本屋にはどこにもないんです。置いてある本は子供向けの世界文学全集とか、歴史の本とかビジネスの本とか、普通の本屋なんですよ。

1か所しか行かなかったので間違っているかもしれないんですけど、日本の本屋に行くと恥ずかしくなりますよね。例えば、中国韓国はこんなに嫌われているけれど、日本はこんなに好かれてるとかいう本を平気で置くじゃないですか。こういうタイトルがいかに違和感があるというと、例えば学校のクラスで、僕はクラス中に好かれてるけれど、AくんBくんはクラス中に嫌われてるって、言って回ることですよね。だから、こういうのを見ると本当にファクトを見るということがすごく大事だと思います。この本はすごく薄いので、ぜひみなさんも読んでほしいんです。

東:『知ろうとすること。』は、わたしも書評を一度書いているのですが、すばらしい本だと思います。早野さんは、東日本大震災が起こった直後から、報道されていることを科学的に分析して、Twitterでずっと流しはじめたんですわたしはこの方のTwitterを見て、この人しか信じなかったです。

早野先生は物理の先生ですけど、この方のやっていることを見て、他の専門の先生たちがどんどん分析していくんです。だから、この人のところに巨大なデータが集まってきたんですね。だから、今でもそのデータを使って、この先生はいろいろ研究を続けているのですが、そのこともやさしく書いてあります。非常におもしろい。新潮文庫ですね。これはよく作った本だとわたしも思いました。

出口:僕はやっぱり、改めて人間には何が大事やっていうことを教えてもらったという意味で、2014年のベストワンかなと。

東:いろんなところでこの本は取り上げられていますが、やっぱり懐疑的な人というか、これが嘘だっていう人はどれだけ言っても絶対信じない。信じるか信じないかはあなた次第です、ほんとうに。

出口:これだけデータを出しても、信じない人ってやっぱりいるんですよね。それでも僕は言い続けるべきだと思います。信じないのだったら、あなたは何のデータを根拠に不安を煽るようなことを言ってるんですかと。それを糸井さんが一生懸命、そういう人がいっぱいいるんで、それはもう根気強く、違いますよと、何が根拠ですかと、単なる思い込みでしょうということを言い続けています。そのスタンスが僕はすごいと思いました。

あと、ふっと思い出したんですけど、『ニッポン景観論』という本があって。これもすごくシンプルな本なんですけど、上海の夜の街を歩いてると、並木がすごく綺麗なんですよね。上海の街並みにも木がたくさんあって、落ち葉がたくさん落ちるんでけれども、ちゃんと掃いてるんです。僕も気がつかなかったんですけど、『ニッポン景観論』を読んで気がついたのは、日本では最近、落ち葉が嫌になってくるので木の枝を徹底的に伐っちゃおうとするでしょ。

『ニッポン景観論』アレックス・カー著(集英社新書)

『ニッポン景観論』アレックス・カー著(集英社新書)

そうすると、この本は日本に住んでる外国の方がいろんな写真を入れて日本の景観を訴えてるんですけど、ほんとに街が貧しくなるんですよね。海外に行ってみたら、あの『ニッポン景観論』に書いてあることはすごくおもしろかったなと。これもすごい薄い本で、写真が半分ぐらいなんで、すぐ読めます。

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