お金に関する大ベストセラーとして知られる『金持ち父さん 貧乏父さん』。アメリカで刊行された同書が日本で刊行されたのは2000年のことでしたが、今もなお書店に並ぶほど広く読まれています。

2013年には改訂版も刊行。リーマン・ショック後の経済状況を反映し、「年功序列」「終身雇用」の神話が崩壊した現代で、組織に頼らずに稼いでいくための実践的な“お金の哲学”を指南しています。

共著者であるシャロン・レクター氏(公認会計士)も序文で語っているように、著者のロバート・キヨサキ氏が紹介するお金に関する考え方は、会計の勉強を専門的にしてきたわけではないので、その道のプロフェッショナルから異論が唱えられたのは事実。しかし……、とレクター氏はこう述べます。

読者の中には会計の知識をすでに豊富に持っている方もいるかもしれないが、この本を読む際は、これまで教科書で習った知識はちょっとわきに置いて忘れていただきたい。そして、真っ白な状態でロバートの理論に耳を貸してほしい。

ロバートの展開する理論の中には、一般に受け入れられている会計の知識と真っ向から対立するようなものも多い。だが、投資家として成功している人たちが決定を下すときいったいどんな分析を行っているかを知るには、ロバートの理論は大いに役立つ。

このように“専門的ではないが役に立つ”と評される『金持ち父さん 貧乏父さん』のエッセンスを要約すると、次のようなものになります。

負債を減らして、資産を増やすべし

たったこれだけ。ここでいう「負債」とは、投資の損失のようなものだけではなく、車や家のローン、保険料、光熱費など、いわゆる「支出」の全般を指しています。

そして「負債」と「資産」に対する捉え方も、本書のなかで「金持ち父さん」がこう説明しています。

資産は私のポケットにお金を入れてくれる
負債は私のポケットからお金をとっていく

そこで議論になるのが、「持ち家は資産」という考えが正しいのかという点です。実際に『金持ち父さん 貧乏父さん』のなかでも、この点をめぐって議論する話が収められています。

結論からいうと、金持ち父さん的な考え方では「持ち家は負債」と語っています。その理由は、

①ローンを終えるまでの長期間、本当の意味で“自分のもの”でない
②固定資産税など、持ち家には多額の税金がかかってしまう
③メンテナンスに必要な経費も自分で出す必要がある
④家や土地の価値は時代とともに下がる可能性が大いにある
⑤投資にまわすことのできる資金が減る

に集約されます。つまり、「私のポケットからお金をもっていく要素があまりに多い」ということ。もちろん、「持ち家はいざとなったら人に売ったり貸したりすることができる。賃貸ではそれはできない。ならば、資産といえるのでは?」といった反論もあるでしょう。

しかし「金持ち父さん」はそうは考えないのです。あくまで、ポケットからお金が出ていくものは負債と捉えるべきだと主張します。ここに本書のエッセンスがあります。

人が貧乏になる原因は、「資産よりも負債が上回っており、収入(給料など)のほとんどを負債(住宅ローンなど)に投じてしまうから」なのだと「金持ち父さん」は指摘します。だから年収がどれだけ高くても、生活が苦しいと嘆く人がいつの時代も絶えないのです。

これを防ぐ方法は多くありません。ひとつは給料や売上が今よりも増えるように一生懸命に働く。そして、もうひとつは資産を増やしていく――つまり、株式や不動産投資など給料以外に収入を得る方法を模索することです。

持ち家が負債である理由に、⑤「投資にまわすことのできる資金が減る」があげられている理由がここにあります。

すでに多額の収入を得ているのならいいのですが、ほとんどの人は家計をなんとかやり繰りして持ち家のローン返済計画を立てているはず。そうなると、資産を増やすためにまわせるお金が手元になく、いつまでも苦しい生活を脱せられない。特に年功序列制ではない組織が増えた現代では、やがて年収が上がっていくことも期待できない。だから、「持ち家は負債」だと断言するのです。

「金持ち父さん」になるために必要なのは、日々の収入のなかから資産を増やすためのお金をある程度は確保していくこと。資産を増やすことを優先して、家計の多くを負債の返済(住宅ローンだけでなく、クレジットカードや車のローンも該当します)にあてるような生活を避けることが基本であると、本書は説いています。

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<書籍データ>
改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書房)
著者:ロバート・キヨサキ
翻訳:白根美保子

<クレジット>
文/小山田裕哉