ハートの風船と看護士昔は“不治の病”だったものが、医学の発達で次々と“治療できる病”になっている長寿社会。だからこそ、「病気になったら、いくらかかるんだろう?」「大ケガをしたら、どのくらい入院するんだろう?」と、生きていくための治療費が心配になることがあります。身近に大病や大ケガの経験者がいない限り、こうした費用感はなかなか想像もつきません。

想像がつかないと、不安になったり、考えるのが面倒になって、“とにかく保障がたくさんついた保険に入れば安心だろう”と思いがちです。

でも、高い保険料でたくさんの保障を買う前に、日本の公的な保険制度を知っておくと、少し不安が減って、納得できる保険料におさえることができるかも知れません。

■「高額療養費制度」をご存じですか?

高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)とは、病院や薬局で1ヶ月(※1)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する公的な制度です。

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高額療養費制度の自己負担額の計算方法(※2)
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※1 
高額療養費制度は「1日~末日」を「1ヶ月」として医療費を計算しています。
※2 
被保険者の年収等によって医療費の自己負担限度額が異なります。

公的な医療保険が適用されない費用には、民間の医療保険で備えましょう
入院時の医療費以外にかかる出費(「差額ベッド代」、「入院中の食事代」、「先進医療」など)には、民間の医療保険で備えましょう。

[ご参考] 高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省ウェブサイト)

■70歳未満の加入者の自己負担限度額

区分 月単位の上限額
●年収約1,160万円以上
健保:標準報酬月額(標報)83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円 + (医療費-842,000円)× 1%
<4月目~:140,100円>
●年収約770〜1,160万円
健保:標報53万円~79万円以上
国保:旧ただし書き所得600万円~901万円
167,400円 + (医療費-558,000円)× 1%
<4月目~:93,000円>
●年収約370〜770万円
健保:標報28万円~50万円以上
国保:旧ただし書き所得210万円~600万円
80,100円 + (医療費-267,000円)× 1%
<4月目~:44,400円>
●年収約370万円以下
健保:標報28万円~50万円以上
国保:旧ただし書き所得210万円~600万円
57,600円
<4月目~:44,400円>
●低所得者(住民税非課税) 35,400円
<4月目~:24,600円>

※ 健康保険制度の改正に伴い、平成27年1月診療分より高額療養費制度が変わりました。
※差額ベッド代、食事代、保険外の負担分は対象となりません。
※ 「旧ただし書所得」とは、「収入」(事業収入、給与収入等)から、必要経費等を控除し(「総所得金額等」)、さらに「所得控除」(基礎控除、配偶者控除等)のうち、「基礎控除」のみを控除した後の所得金額です。
※ この表は、全国厚生労働関係部局長会議(2014年1月22日厚生労働省保険局)資料をもとに作成しています。
※ <4月目~>は多数該当の額
※ 70歳以上の自己負担限度額については、制度変更前の金額が据え置きです。
※ 標準報酬月額については、全国健康保険協会のホームページをご確認ください。

■限度額適用認定証について

「高額療養費制度」は、あとから申請することにより自己負担限度額を超えた額が支給されます。
しかし、あとから支給されるとはいえ、一時的には大きな負担になります。

そこで、70歳未満の方が「限度額適用認定証」という書類と保険証を医療機関等の窓口(※1)に提示すると、1ヵ月 (1日から月末まで)の窓口でのお支払いが自己負担限度額まで(※2)となります。

なお、事前に申請に必要な手続きや申請書については、加入されている医療保険の保険者までお問い合わせください。

※1 保険医療機関(入院・外来別)、保険薬局等それぞれでの取扱いとなります。
※2 同月に入院や外来など複数受診がある場合は、高額療養費の申請が必要となることがあります。保険外負担分(差額ベッド代など)や、入院時の食事負担額等は対象外となります。

■高額療養費制度における合算の仕組み

世帯で複数の方が同じ月に病気やケガをして医療機関で受診した場合や、お一人が複数の医療機関で受診したり、一つの医療機関で入院と外来で受診した場合は、自己負担額を世帯で合算することができ、その合算した額が自己負担限度額を超えた場合は、超えた額が払い戻されます。

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※自己負担額の基準

  • 医療機関ごとに計算します。同じ医療機関であっても、医科入院、医科外来、歯科入院、歯科外来にわけて計算します。
  • 医療機関から交付された処方せんにより調剤薬局で調剤を受けた場合は、薬局で支払った自己負担額を処方せんを交付した医療機関に含めて計算します。

■民間の医療保険では、公的な医療保険制度で備えられない“自己負担分”をカバーしましょう

上記のように、高額療養費制度が適用されたとしても、自己負担は発生します。また、公的な医療保険が適用とならない、差額ベッド代や先進医療などについては、全額自己負担となります。

自己負担も入院日数が長くなったり、療養期間が長引けば長引くほど大きくなりますから、民間の医療保険を検討する際は、「医療費の心配をせずに治療に専念できるための保障」を得られる保険商品を基本に考えるとよいでしょう。

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そのほか、保険についての気になる点や疑問点などには、こちらの解説をご覧いただけます。

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構成/ライフネットジャーナル オンライン編集部