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――子どもを生み、育てることは楽しい、人生が豊かになる。だから、国はそれを支援するのが義務である。そう国民が求めたわけですね。

白河:ええ。しかしフランスとは反対に、日本は社会の流動性を前提にした議論が十分でないと思います。専業主婦を中心とした伝統的な家族形態が理想であって、その例外にどう対処していくのか、という捉え方になっている。

あるお母さんが言っていたのですが、「日本は子どもを持てば持つほど損をする」。最近は幼児教育の無償化が進んでいますが、本当に無償化が必要なのは教育費が高騰していく10代ではないかと。学歴とキャリアがまだまだ直結する今の日本社会では、子どもにちゃんとした教育を与えてあげたい、塾や大学にも行かせてあげたいと願うからこそ、子どもを増やすことをあきらめるわけです。

フランスはその現実もちゃんと踏まえていて、共働きで、子どもがたくさんいる人ほど得をするような制度になっています。子どもを持つことで被る不利益を政府が負担しているのです(※)

(※)フランスの子育て手当は1人目だと累計で約600 万円。日本も約400万円に達するので大きな差はないが、フランスは2人目、3人目……と増えるほど給付額が増えていくのが特徴。2人目だと累計で約1,900 万円、3人目だと累計で約3,900 万円にも達するという。

■結婚や出産も個人の自由だと知らない女性はまだまだ多い

──フランスの例は確かに理想的だし、参考になるところが多いですね。ただ、今の日本では、「子どもを生むのは得か損か」みたいな議論をすると、まず間違いなく炎上してしまい、そこで話が終わってしまうケースがあまりにも多いように感じます。

白河:人によって理想とする子育てにはいろいろなかたちがあります。それはもちろん大事にしないと。ただ、今は6人に1人の子どもが貧困状態にあるといわれています(厚生労働省「子どもの相対的貧困率」より)。そして、社会の流動性は高まることはあれ、決して元に戻ることはないでしょう。だったら、それを前提とした議論をしていかないと、何も解決しないと思います。

日本の女性はこれまで、企業では滅私奉公、家庭では良妻賢母であることが求められていました。つまり、どこにも「私」がなかったんです。でもこれからは、いかに自分を取り戻し、いかに自分で自分の将来を考えて決断するかが重要になっていく。そして、社会はそんな女性たちを支える方向に進むしか少子化を解決する道はないでしょう。

──もはや子どもを生むことは、働き続けることを選ぶのと同じように「選択」のひとつですからね。

白河:私が「婚活」や「妊活」という言葉で伝えたいことも結局それなんですよ。どうして「活」がついているかというと、自分で考えて決断する女性になってほしいから。講演などで地方に行くと、未だに結婚や出産が個人の自由だと認識していない人がたくさんいるんです。

もちろん、誰かに強制されているわけじゃないですよ。でも女性に生まれたからには、「いつかはしなければいけないもの(=女性の義務)」だと考えているわけです。

そういう考え方だと、「結婚も出産もいつかやらなきゃいけないものだから、今はとりあえず考えることを保留しよう」となってしまう。でも昔の村社会みたいに半ば強引に結婚させられる時代じゃないから、良い出会いがなかったら、ずっと独身になってしまう。さらに、いつか結婚をすると思って若い時代を過ごしているから、仕事のキャリアも築けていない。

主婦になるにせよ、仕事を続けていくにせよ、若いときから自分で考えて、自分で決断しないと何も手に入らないし、誰も手を差し伸べてくれない。「しまった!」と気が付いてからでは遅いんですよ。

<プロフィール>
白河桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授。内閣府「新たな少子化社会政策大綱」有識者委員。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。著書に『「婚活」症候群』『女子と就活』『格付けしあう女たち』『「産む」と「働く」の教科書』など多数

<クレジット>
取材・文・撮影/小山田裕哉