鼻をかむ女性「あれ、鼻がむずむずするかも…」「目がかゆい気がする…」といった症状が出てきた人がいるのではないでしょうか?
毎年春先に発症する方の多い、花粉症。今回は、そんな花粉症についてのさまざまなお悩みにお答えしたいと思います。

■症状が出て来たら…まずは原因チェック!

鼻がむずむずする、といった症状が出て来た場合、まずは耳鼻咽喉科にいって「抗原(アレルギー性鼻炎の元になる物質、杉花粉症なら杉)」を調べてもらいましょう。
花粉症は杉だけではなく、カモガヤやブタクサといった花粉に反応している可能性もあります。また、ハウスダストなど、花粉が原因ではないこともあるのです。

また毎年花粉症になっているけれど、いつもと少し症状が違うな…という場合、以下のようなことが考えられます。

*風邪症状
意外と多いのが、風邪。体温測定を怠らないようにしましょう。その他、副鼻腔炎(ふくびこうえん、ちくのうしょう)などの可能性もあります。

*別のアレルギー反応
前述したように、他アレルギーに反応するようになった可能性があります。可能であれば3年〜4年毎に抗体は調べ直しましょう。

*シーズン前なのにムズムズする
暖冬の場合、杉花粉は暖かい地域で晩秋から冬にかけても飛んでいます。
飛散ゼロといっても、実は基準に満たないというだけで、まったく杉花粉が飛んでない訳ではありません。

*シーズン終了後に鼻が詰まる
市販の点鼻薬で、鼻のとおりを良くするタイプのもの(血管収縮剤系)を使い続けると、「点鼻薬性鼻炎」となり、鼻の粘膜腫脹が治まらず、シーズンが終わっても鼻が詰まり続けてしまうことがあります。

*筋肉注射のリバウンド!?
前年に1本で1シーズン効果があるという筋肉ステロイドの注射(これはアレルギー学会や耳鼻科で認められてない治療ですが……)をすると、翌年症状が強くなる可能性があると言われています。

話題の「舌下治療」ってどんな治療??

■「舌下治療」とは?

あるアレルギー物質(抗原)に対する鼻炎などがあったときに、その抗原を身体に注射する「減感作療法」という治療法があります。舌下療法は、この減感作療法を基に考えられています。

そもそも花粉症とはどのようにしてなるのでしょうか?
そのメカニズムから説明します。

●花粉症のメカニズム
まず、花粉が体内に侵入すると、身体は花粉を異物と判断しこれに対抗するため”IgE抗体”という抗体を作り出します。

なお、この”IgE抗体”が体内で作られるかどうかは、主に遺伝的な体質によって決まっており、つまりは、同じ環境で育っても花粉症になる人と、ならない人がいるのは、この”IgE抗体”が作られる体質か否かということの違いだと言われています。(食生活や環境汚染など、他環境因子がIgE抗体の生成に関わっているとの報告もあります)

この生成された”IgE抗体”は、鼻や目の粘膜にある肥満細胞という細胞と結合し、以後、花粉の侵入がある度に→IgE抗体生成→肥満細胞と結合という流れを繰り返し、結果、IgE抗体と結合された肥満細胞が増加していきます。

そしてこれが一定レベルまで蓄積されると、様々な化学伝達物質が放出され、目のかゆみや、鼻水、鼻詰まりといった花粉症の症状を引き起こすのです。

よく花粉症になるまでの過程を
「コップに水が溜まっていくように、花粉が身体の中に蓄積されていき、コップ(基準量)から溢れたら花粉症になる」
と例えられたりしますが、実際溜まっていくのはこの”IgE抗体と結合した肥満細胞”ということになります。

杉花粉●減感作療法とは?
減感作療法は、花粉症発症の元となる、IgE抗体の代わりに”IgG抗体”という抗体を意図的に作っておき、花粉とIgE抗体が結び付くのを邪魔する方法です。

例えば杉花粉症の場合……
まず、血液検査や皮内検査で、抗原が杉であることを確認します。
杉であることが確認出来たら、杉の花粉(抗原)エキスを身体に注射していき、体内にIgG抗体を作っていくのです。最初は薄い濃度のエキスから注入していき、次第に濃くしていきます。これを繰り返すことで、身体に杉の「抗体に対する抗体」をつくり、症状を出なくします。

今まで、この減感作療法は診療機関の外来時に、皮下注射で行われていました。

●自宅で簡単?「シダトレン」とは?

しかし、
外来ではなく→自宅で、自分で
注射ではなく→舌の下に抗原エキスを垂らす
という方法の、スギ花粉症の舌下免疫療法治療薬「シダトレン」が2014年秋より保険適応として発売されました。

このシダトレンは、どこの医療機関でも処方しているわけではなく、認定された医師のみが扱う事が出来ます。
舌下療法は従来の方法に比べ、自宅で出来る上に注射をする必要もないため、患者の負担が少なく、治療が継続し易いとされています。

しかし、副作用を含め、治療を始めるに当たって、以下は必ず確認しておきたいポイントです。

*ポイント1:長期の治療
治療は治療期間が2〜3年と、長期にわたります。また花粉が飛んでいない時期にも薬剤の服用が必要です。
・シダトレンの服用(舌下に2分間保持)を毎日継続出来る
・少なくとも1ヶ月に1度受診出来る
といった条件が必須です。

*ポイント2:効果は絶対ではない
すべての患者さんに効果が期待できるわけでなく、効果があって治療を終了した場合も時間の経過とともに、減弱する可能性も考えられます。
またすぐに効果が現れるものではないため、根気良い治療が必要となります。

ポイント3:現在は杉花粉のみ
現状、杉花粉に効果のある薬しか開発されていないため、杉以外の抗原と重複する花粉症である場合、その効果への期待は薄くなります。
最近は杉単独の花粉症である患者さんは少ない状況です。

*ポイント4:副作用
副作用が起こりえます。後に述べるアナフィラキシーのような重篤な症状を引き起こす場合もありますので、注意が必要です。
家庭において服用されるため、副作用が起きた場合は患者さん自身による適切な対処も必要となります。

主な副作用
口内炎、舌下腫脹、咽喉頭そう痒感、口腔内腫脹、耳そう痒感、頭痛、アナフィラキシーショック等

薬を投与後、数分から15分以内に 血圧低下、呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫、蕁麻疹 等の異常が認められたときは投与をすぐに中止し、すぐに救急車を呼ぶなど対応しましょう。命に関わる重篤な症状かもしれません。


 

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文責/Doctors Me