曽原健太郎さん(株式会社センジュ 代表取締役)

曽原健太郎さん(株式会社センジュ 代表取締役)

子どもといっしょに出かけられる場所の情報を、口コミと共に紹介するスマートフォン向けアプリ「comolib」。2014年10月にリリースされるや、子育て中のママやパパからの圧倒的な支持を獲得しています。人気のアプリは、どのようにして生み出されたのでしょうか。運営するセンジュの代表取締役・曽原健太郎さんから起業への経緯や、アプリへの思いをうかがいました。

■大学3年で起業に挑戦

ベビーカーで入店可能か、おむつ替えコーナーや授乳ルーム、個室はあるのか、はたして全面禁煙なのか。子どもを連れてどこかの場所にお出かけするとき、パパとママが気になるのはこうした細かい情報です。
安心して出かけたい。実際に利用した人の口コミ情報も知りたい。そうした要望をかなえるべく、スマートフォン向けアプリ「comolib」は誕生しました。運営するのは、曽原健太郎さんが2014年1月に設立したセンジュです。

曽原さんにとってセンジュは初の起業ではありません。大学3年のときに5才年上の先輩と事業立ち上げ支援コンサルティングの会社を立ち上げました。

「シニアによる若者向け事業の立ち上げを支援するコンサルティングの会社を立ち上げました。最初に手がけたのは、若手社会人向けのテーラーメイドスーツを作るビジネスでした。スーツ会社のオーナーさんがクライアントで、我々は集客やブランディングを手掛けました。ビジネスとしては上手く回っていたのですが、結局、先輩からのアドバイスもあり、大学卒業後はマッキンゼー・アンド・カンパニーに就職しました」

■プレーヤーとして事業をやっていく楽しさを実感

その後、曽原さんはマッキンゼーから米系投資ファンドのベインキャピタルに転職。ちょうど、ベインキャピタルが外食産業のすかいらーくを買収し事業再編を行うタイミングだったため、曽原さんはすかいらーくグループの中で、マーケティングの業務改革を支援することになりました。

買収以前のすかいらーくは、以前の社長の方針で「マーケティング」という言葉が社内NGだった会社。マーケティング的な視点や発想がない土壌に種をまき、花を育て、実を結ばせていく取り組みに、曽原さんは確かな手応えを感じ取ったといいます。

「それまではマーケティング部門はありませんでした。そこに経験豊富なCMO(Chief Marketing Officer)を連れてきて、マーケティングチームを作ったわけです。ただ、ほとんどの方がそれまで外資系の人と働いた経験がないので、僕がファンド側からサポートに入り、現場と経営陣との橋渡しのような役割を担いました。広告設計やメニュー開発等を仕組みの面から改善しました。すると自分達がやったことが3か月後ぐらいから目に見えて結果が出てきたんですね。プレーヤーとして事業をやっていくのはやっぱり楽しいなと実感しました」

成果をあげたとはいえ、曽原さんはすかいらーくの社員ではありません。約1年が経過し、すかいらーくの事業を軌道に乗せる使命を果たした曽原さんは、ベインキャピタルから別の投資案件に入るよう命じられました。
組織の一員である以上は当然の人事です。しかし、曽原さんは自分の中にむくむくと沸き上がってきた思いを打ち消すことができず、ある「決断」を下すことになるのです。

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