■自分の周りの人たちをもっとハッピーにする仕事をしたい

「ファンドの投資業務をこなす中で、これが僕が本当にやりたいことだったのかなと次第に思うようになりました。どうせやるなら自分の周りの人たちをもっとハッピーにすることをしたくなった。といっても、結論を出すまでは半年ぐらい悶々としていました」

「悶々とした時間」に、曽原さんはがむしゃらに動きました。本当に起業をするのか、あるいは大企業での新規事業の立ち上げなども視野に入れるのか。できるだけ多くの人と会い、話を交わし、いくつかのスタートアップに入ることも検討し、2013年5月に曽原さんは起業への決意を固めます。

「起業して何をやるのか」の答えを強力に後押ししたのが、プライベートでのできごとでした。投資ファンドを辞めたいと上司に報告した3日後、曽原さんは奥様に妊娠を告げられたのです。

「自分にも子どもができて、子育てをしていかなければならない。だったら、『子育て』を自分のドメインにしてやっていこうと考えました。」

株式会社センジュが提供する、パパ・ママのための子どもとお出かけ応援アプリ「comolib」

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■働く子育て層にフォーカスし応援するサービスを

急浮上したかに見える「子育て」というキーワードですが、実は曽原さんのこれまでのキャリアを振り返ると、何度もクロスする場面がありました。

一度目は、学生時代に起業したコンサルティング会社での経験です。ある大きな病院が認定こども園を立ち上げたいと曽原さんの会社に相談を持ちかけたのです。二度目は、マッキンゼーでのプロジェクト。某企業から「空きスペースを利用して保育園を始めたい」という依頼を受け、曽原さんはプロジェクトメンバーとして保育園立ち上げに奮闘しました。リサーチしコンサルする過程で知り得た保育業界の問題点や参入障壁。振返ってみるとこれらはすべて、「子育て」をドメインとする曽原さんの得難い財産といえるでしょう。

「子育て」の領域で、ユーザーの役に立つ、ユーザーに大いに喜ばれるサービスはないものか──。さまざまなプランを模索する中で、曽原さんはお出かけアプリのアイデアにたどりつきます。

「働く子育て層にしっかりとフォーカスして、応援するサービスを提供したいという考えがベースですね。会社を作ったのが1月。3月末から実際にプロダクトづくりを始めましたが、最初の1ヶ月は情報収集に明け暮れました。みなどういうアプリを使っているのか、どういう情報が求められているのかを徹底的にヒアリングして、アプリを設計していったんですよ」と曽原さん。

到達地点がクリアになった曽原さんに、もう迷いはありません。曽原さんを始めとする創業スタッフはアプリの完成に向けて走り始めました。
(後編につづく)

<プロフィール>
曽原健太郎(そはら・けんたろう)
2009年3月に東京大学経済学部卒業。マッキンゼー・アンド・カンパニーに新卒で入社し、2011年8月に退社。翌月、ベインキャピタルに転職し、2013年8月まで勤めた後、ソーシャルショッピングアプリ「origami」を運営する知己の康井義貴氏に誘われ、半年間の約束でorigamiに入社。2014年1月に、「男女問わず、子育てをしながら自らの人生を歩む人を増やす」というビジョンのもと、子育て中で忙しい人が本当に求めているサービスを開発するセンジュを設立した。2014年10月にリリースしたスマートフォン向けアプリ「comolib」は、子連れお出かけ情報の口コミ件数では業界No.1を誇る。

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン編集部
文/三田村蕗子