LIFE VIDEO株式会社 土屋敏男さん

LIFE VIDEO株式会社 土屋敏男さん

日本テレビで『進め!電波少年』をはじめとする、数々のヒット番組をプロデュースしてきた土屋敏男さん。テレビ制作の現場を経て、2012年7月ひとりひとりの人生のドキュメンタリー番組を作成する、LIFE VIDEO株式会社の代表取締役社長に就任します。新事業を興す時に心がけるべきことを、ライフネット生命の社内勉強会で語ってくれました。
(前編はこちら)

■テレビを作る上での教訓は、あらゆる事業に当てはまる

土屋さんがヒット番組を次々に生み出していく過程で得た気づきは、コンテンツビジネス全般、ひいては、あらゆる業種のビジネスに応用できることだと言います。

「コンテンツビジネスというのは、『技術』『ビジネス』『表現』の3つの要素で成り立っています。『技術』『ビジネス』というのは、数値化が可能。しかし『表現』は数値化することができない。ということは、例えば会議の場で、「表現内容」について参加者同士で認識をあわせることが非常に難しい。だから会議では、数字だけをターゲットに次の指針を決めようとしてしまいますが、どこかで見誤ってしまう。これは『表現』の重要性が大きいテレビ業界で顕著に現れやすいというのはあるけれども、すべての業種に対して言えることだと、僕は思います」

視聴率低下の危機が叫ばれているテレビ業界では、具体的にどんな事が起こっているのでしょうか。

「テレビ局は免許制なので、新規参入ができません。そのため、ある種の護送船団と言われることもあるけれど、その分公共性も非常に高い。ということは、クレームに弱い。インターネットによってクレームがリアルタイムに顕在化するようになってしまったので、誰からもクレームのこない番組を作ろうとしてしまいます。そのために、いろいろな部署で会議にかければかけるほど、イノベーティブな事は起こりにくくなってしまうのです。

テレビの歴史を振り返っても、みんなが『企画として面白いね』、『絶対当たるね』と言ったものは、必ずハズれている。逆に、最近大きく当たった『家政婦のミタ』、『あまちゃん』、『半沢直樹』なんかは、最初は当たるわけないとそれぞれの社内で反対意見があった。みんなが反対するものが、案の定外れることもあるので、『反対されれば必ず当たる』というわけではないですが、『みんなが賛成するものは失敗する』、これは僕の経験上、確実に言えます」

■新事業への思いと、これから───

30数年もの間テレビ制作に携わってきた過程で、土屋さんの中に「テレビでない映像コンテンツを作りたい」という思いが、徐々に芽生えてきました。「テレビ局が向いていない方向に、ブルーオーシャンがあるのでは?」と考えるようになったそうです。

また、自身のお義父さまが亡くなられたことも、ひとつのきっかけになりました。義父が生前に仕事をしていた時のエピソードを、昔の仕事仲間がお葬式で聞かせてくれたそうです。考えてみたら、「親が自分の仕事や人生を、子に語って聞かせる」という機会がほとんどないということに気がつきました。現在の姿しか見えていない親の幼少期から成人時代には、想像もできない波乱万丈な人生があります。その過去の姿を知ることは、子が未来に向かうための、かけがえのない指針になるはずです。「ひとりひとりの人生のドラマを残したい」と強く思い、事業を立ち上げることを決めました。

(次ページ)新事業、LIFE VIDEOとは?