『長期投資家の「先を読む」発想法』を上梓したさわかみ投信会長の澤上篤人さんと、『「働き方」の教科書』を刊行したライフネット生命会長兼CEOの出口治明。「投資も人生も長期で考えよう」というテーマで2人が熱いトークを繰り広げました。

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※セミナーは2015年1月19日(月)に行われました。

■気になる日本経済のこれからについて

出口:私が澤上さんに最初にお目にかかったのは、ライフネット生命を立ち上げる前でした。後ろ盾も何もないライフネットを多くの人に知ってもらい、信頼してもらうためには何をすればいいかを澤上さんに教えてもらおうと考えた。そうしたら、実にからっと気持ちよく、秘訣を教えてくれました。

澤上:ああ、そうでしたね。

出口:澤上さんからのアドバイスは、「簡単だよ。僕がやっているように辻説法をしなさい」。「僕は1年間に300回くらい話をしている」と言われて、そうか、自分で発信するしかないなと思いました。だからライフネットを開業してから、何でもやっています。本も書けばブログもやる。20代の部下に指示されてツイッターやフェイスブックも始めたり、全国に講演へ行っている。これね、全部、澤上さんの教えなんですよ(笑)。だから、澤上さんとこういう場でお話ができるのは、とてもうれしいことですね。

澤上:私も光栄です。今日はよろしくお願いします。でも、せっかくなので堅苦しい話は一切やめにして、テンポがよくて小気味いい勉強会にしましょうよ。聞いた人の心の奥深いところに染みこんで、何か行動に移したくなる勉強会じゃないとね。

出口:おっしゃる通り(笑)。では、早速、お題の「日本経済のこれから」について、澤上さんの率直な意見を聞かせてください。

澤上:アベノミクスについてはいろいろ言われていますが、私の意見は、はっきりしています。みなさん、国に期待するのはもうやめた方がいい。経済は、国がどうこうするものじゃない。誰か偉い人がやるものでもない。一人一人の生活が集まって経済になるんです。

■日本の未来は明るいと思う理由とは……

澤上:いまの状態をもっと良くしたいと思うなら、一人一人がまず行動すること。大事なのは、各自が将来に向けて何をやっていくか。あるいは何をやろうとしていくのか。こっちの方がはるかに重要です。

出口:僕も本当にそう思いますね。よく、この国は政治家がちゃんとした成長戦略を描かないからダメだと言われますが、二世、三世の政治家も増えてきているし、役人は賢くて優秀だけれど商売をしたことがない。どちらも金儲けをしたことがない人たちです。その人たちに国の成長戦略を考えてくれというのはどこかで限界がある(笑)。これは、昔から不思議で仕方がない。澤上さんがおっしゃったように、大事なのは個々の人が何ができるかですよ。ただ、僕は割と楽観してて日本は明るいと思っているんですよね。

澤上:おお、その根拠を聞きましょう。

出口:根拠は極めて簡単で、要するにまだ何にもしてないから(笑)。例えば、女性の社会進出や政治参加などに関する2014年度版男女平等度ランキング(世界経済フォーラム)では、日本は104位というひどい順位です。労働の流動化もしていない。つまり、伸びしろが山ほどあるから、未来は明るいと思うわけです。

日本は資源がないとか言う人がいますが、本当ですかと尋ねたい。確かに石油は出ないかもしれませんが、海洋面積を含めたら日本は世界で6番目に大きい国ですよ。都市鉱山があって、車もたくさん走っている。雨もいっぱい降るし、水も豊富にある。でも、まだ何にも手がつけきれていない(笑)。僕はそう考えています。じゃあ、これからどういう風に生活防衛や金融について考えていけばいいか。これについては、澤上さんにぜひお聞きしたいと思います。

澤上:ずいぶん、ストレートに来ましたね(笑)。しょっぱなで、みなさんに「行動しろ」と申し上げましたが、きちんと行動した人と、何もせずにただ国頼みや会社頼みで、誰かがなんとかしてくれると考えている他力本願のまま生きている人の間では、気がつかない差がついてくると思います。これはもう仕方がない。残念なことですが。

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