15041403_1いつでもどこでもメールが確認できるようになった昨今、日々の仕事時間の大部分を返信に費やしてしまっている人が多いのではないでしょうか?

しかし忘れてはならないのは、メールの返信は仕事の目的ではなく手段であるということ。ですので本来の業務に集中して成果を挙げ、しかもいつもより早く帰るためにも、返信を効率化することはとっても大切なのです。

では、私たちはどんな点に気をつけるべきなのか。ビジネスメールに関するセミナーやコンサルティングを行う、アイ・コミュニケーション代表の平野友朗さんにうかがいました。

■メールの処理は1分以内!読んだときが返信するとき

「職種や立場にもよりますが、例えば30代の管理職であれば、1日に何十通、多い人では100通以上もメールが送られてきてしまいます。そうすると、返信に1通3分もかけていられない。1日の業務がメールの返信で終わってしまいますからね」

必要なのは、あれこれ文章の書き方に頭を悩ませるより、

  • 返信は1分以内
  • 読んだら即返信

とルールを決めてしまうこと。これは平野さん自身が実践していることだそうです。

「最近はLINEのようなSNSでビジネスの連絡をとる人も多く、スマホに仕事の通知がどんどん入ってきます。“即レス”が求められてきているのです。しかし、メールの返信にばかり気を取られていたら、集中して仕事をする時間がとれません。

だから、1日のうちにメールを見る時間を決めてしまい、それ以外の時間は開封しないほうがかえって仕事の効率が良くなります。そして、見たら即返信する。決して後回しにはしないことが大切です」

■返信では引用(インライン)を積極的に使おう

たまにメールの返信で「インラインにて失礼します」と書く人がいます。これは受信した文章を引用しながら返信すること。以下のような文章を見たことがあるでしょう。

お世話になっております。ライフネット生命の●●です。

> 先日の打ち合わせの内容を
> 添付にまとめました。
> ご確認のほどお願いします。

確かに拝受しました。引き続き、よろしくお願い致します。

この「> 先日の~」が引用です。あらかじめ「失礼します」と断る人もいるように、世の中には「引用が失礼かどうか」気になっている人が多いようです。しかし、平野さんは「むしろ積極的に多用すべきです」と引用を肯定します。

メール文章の基本は、上から下まで1回読めば理解できることであって、名文を書く必要はありません。挨拶がまったくない、敬語を無視するといったあまりにも失礼な文章でなければ、引用自体には何の問題もありません。マナーとしても、わざわざ『失礼します』と断る必要はないでしょう。そもそも断ったことにより、『失礼だと思うならやるなよ』と思われてしまうことすらありますからね」

さらに、インラインを使いこなせるようになれば、メールの返信はかなり早くなると平野さん。

「1分以内で返信するルールを実践するためには、文章の内容について毎回考えている余裕はありません。そこで相手の文章を引用しながら、それに答えていくかたちで書き進める。すると、しっかり会話になりながら、要点をきちんと抑えたメールになるのです。こうすれば返信が早くなるばかりでなく、確認漏れもなくなります」

ただ、その際はどこが引用かわかるように「> 」をしっかり付けましょう。

■大容量の添付ファイルは送らない!

仕事でもフリーメールを使う人が増えています。例えばGmailであれば25MBまでの大容量ファイルが送れるため、重宝している人も多いでしょう。

しかし、ビジネスでは相手が同じ環境にあるとは限らないもの。ネットセキュリティが厳しい企業であれば、一部のフリーメールは受信できない、もしくはフリーメールからの添付ファイルを開けないケースがあったりします。さらに社内のネット環境によっては、受信できてもダウンロードに異常に時間がかかってしまうこともあるのです。

「そうしたことが起こるたびに『ファイルが受信できないようですが……』と問い合わせが発生し、やることが増えてしまいます。だったら、最初から大容量ファイルは添付せず、外部のストレージを使うなどする。もし社内セキュリティの関係で相手が外部ストレージからダウンロードできない環境であれば、電話で『どうやって送ればいいでしょう?』と確認したほうが手間をはぶけます」

■メールは連絡手段として万能ではないと覚えておく

添付ファイルの例からもわかるように、メールはすべてを解決してくれる魔法のツールではありません。

社内の人への連絡であれば、席まで行って声をかけたほうが早いこともあるでしょう。社外の人にも、まず電話で要件を済ませて、メールは念のためにまとめを送るだけ、なんてほうが効率は良いケースもあります。

「要するに、メールの文章をあれこれと見直す前に、日々の仕事の流れを見直すことが大切ということです。この用件の連絡手段として、本当にメールは最適なのか? それを意識しながら仕事をしていけば、処理しなければならないタスクを確実に減らせるようになるはずです」

■依頼メールは「なぜ、あなたに頼むのか」必ず書く!

こうしたルールを踏まえたうえで、本当に重要なメールを集中して書く。それがビジネスメールのやり取りを効率化する近道です。

では最後に、平野さんが教える重要なメールで使いたい豆知識を。

「例えば何かを依頼するときは、相手に自己重要感を抱かせることが大切です。つまり……」

・なぜ、あなたに受けてほしいのか。理由を明確にする
→相手は「どうして自分がこの仕事を依頼されたのか」知りたいもの。誰でも良い仕事だと思われないように、自分の熱意を記す。

・そして、この仕事を受けることでどんなメリットがあるか書く
→それがギャラでなくとも、ビジネスである以上はちゃんと相手のメリットを事前に伝えてあげる。とりあえず感触だけでも、と連絡するのは失礼。

・会ったときの印象や具体的なエピソードを入れる
→ビジネス書の著者であれば、本のどういったところに感動して依頼することを決めたのか、簡潔に自分の思いをまとめる。

こうした点を最初のメールで踏まえてあげることで、相手からの確認の数もグッと減り、仕事を円滑に進めるようになるでしょう。

今や仕事のあらゆるところでメールは使われます。今回紹介したルールを実践していくだけでも、日々の仕事を効率化し、いつもより30分、人によってはもっと早く業務を終えることが可能になるのです。

<プロフィール>
平野友朗(ひらの・ともあき)
株式会社アイ・コミュニケーション代表、一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事。日本初のビジネスメール教育事業を立ち上げ、ビジネスメールの研修プログラムの開発やツールの提供を行なう。著書に『カリスマ講師に学ぶ! 実践ビジネスメール教室』『ビジネスメールの常識・非常識』など多数
アイ・コミュニケーション
一般社団法人日本ビジネスメール協会
ビジネスメールの教科書 

<クレジット>
取材・文/小山田裕哉