ショッピングモールでAsMamaへの参加を呼びかけ。大勢のママたち、サポーターたちが集まってくる。

ショッピングモールでAsMamaへの参加を呼びかけ。大勢のママたち、サポーターたちが集まってくる。写真左端が甲田恵子さん

ご近所の顔見知り同士で子どもを預け預かる仕組み、地域共助。ネットの仕組みを使って、この昔ながらの助け合いの形を現代に蘇らせたのが、AsMamaが運営する「子育てシェア」のサービスです。

子育てシェアサービスの大きな特徴の一つとして、もし支援者が子どもを預かっている最中に何らかの事故が起きた場合、最高5,000万円の賠償責任保険が適用されることが挙げられます。しかし、保険適用までの道のりは困難の連続だったとのこと。

地域の親子の出会いやつながりを深めるイベント開催にも力を注ぐ甲田恵子さんは、いかにして保険適用を実現させたのでしょう。諦めることなく走り続ける甲田さんにお話をお聞きしました。
(前編はこちら)

■絶対に保険をつけたかった

──「子育てシェア」はこれまで世の中になかったサービスです。賠償責任保険をつけるまでには大変なご苦労があったのでは?

甲田:前職で広報の仕事についていたので、危機管理のプロとしてやってきたつもりです。従業員が事故を起こしたり、地域共助の中で事故が起きたら、社会的倫理的責任は免れないなと思っていました。だから絶対に保険はつけたかった。

ただ、こんなに苦労するとは思わなかった。甘かったですね。保険会社は100社ほど回ったでしょうか。でも、どこもまったく相手にしてくれない。従業員にかける保険はあっても、一般の人の頼りあいという行為に保険をかけるなんてありえないというんですね。「いったい、いくら用意できるんですか?」と何度聞かれたことか(笑)。

ようやく、保険商品を作ってもらえそうな手応えを1社から得ることができましたが、保険料は「会員数×1万円が保険料としてギリギリかな」と言われました。それを「10分の1か100分の1にしてほしい」とお願いすると、返ってきた回答は「素人の相談には乗れない」。ほとほと途方に暮れて、ロイズ(保険組合)に問い合わせをしたこともあります。

──先方の反応はいかがでしたか?

甲田:イギリスの本社に電話を入れて、「保険商品を作りたい」と交渉しました。すると、「どこの保険会社か」と聞かれたので、「保険会社じゃない。チャイルドケアのプラットフォームを提供している会社だ」と答えると、「日本は、保険会社じゃなければ保険商品は作れない。引受会社はどうするんだ?」と。いま思えば当然の反応ですが、当時はそこまで切羽詰まっていました。

──それでも、諦めなかったんですね?

甲田:どうしようかと悩んでいるときに、前職のときに知り合いだった保険会社の方に相談する機会を得ることができました。もうこちらは背水の陣ですから、必死です。先方の会社にうかがって、「私たちは、知らない人同士をマッチングするのではなく、昔から当たり前にあった地域での頼りあいを実現している。友人や知人の子どもを見るのであれば、通常よりも事故の確率は少ない」と力説しました。保険はいったい何のためにあるんですか、良かれと思って助けた人が経済的に困窮する社会でいいんですか。そこまで言いました(笑)。

──粘り勝ちですね。普通のロジックであれば、絶対に通らなかったと思います。

甲田:私もそう思います。だって、ほかの保険会社や金融機関から「どうやって保険が通ったのか」とよく聞かれますから(笑)。でも、一般の人は「保険はあって当然」と思っていますよ。使う使わないは別にして保険があるのは本当に安心です。賠償責任保険を適用できたことで依頼する人、される人の心理的ハードルが解けました。でも、保険があるからといって、子どもを雑にみる人なんていません。実際、「子育てシェア」ではクレームも事故もひとつも起きていない。保険というのは一種のお守りみたいなものなんです。

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