小暮太一さん(経済ジャーナリスト)

木暮太一さん(経済ジャーナリスト)

仕事では人一倍努力しているつもり。
現に毎日すごく忙しいのに、なぜだろう、もう何年も給料は伸び悩んでいる。
家計を切り詰めれば、つい漏れてしまう「生活が苦しい」の一言。
いったい、この状態からどうすれば脱出できるのか――。

世の中にはさまざまな“節約術”や“蓄財術”の方法があふれています。
しかし実は、毎日の節約に気を取られるよりも、お金に対する考え方を根本から見直す方が、「生活が楽になる」ための近道なのです。

今回は『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか』『カイジ「命より重い!」お金の話』など、働き方とお金に関する多数の著書を執筆された経済ジャーナリストの木暮太一さんに、“私たちが身につけるべきお金の心構え”についてうかがいました。

心構え1 給料が増えても、生活水準を上げてはいけない

心構え2 資産の多さは、幸福度とは関係ないと知る

心構え3 固定費を削るより、1円あたりの満足度を高める

■心構え1 給料が増えても、生活水準を上げてはいけない

今より豊かな生活をしたいと思ったときに、「もっと給料が増えないかなあ」とため息混じりに漏らしてしまう人は多いのではないでしょうか。しかし、私たちは給料が増えれば本当に生活が楽になるのでしょうか?

試しにGoogleで「生活が苦しい 年収」と検索してみましょう。すると、「年収500万円でも」「年収800万円でも」「年収1,000万円でも」と、あらゆる収入層の人が「生活が苦しい」とあえいでいるのがわかります。

とはいえ、「年収1,000万円」の人も不満を持っているとは少々意外。ビジネスパーソンにとってあこがれの存在であるはずの高収入の人たちも、「生活が苦しい」と感じてしまうのはなぜなのか。

「その根本的な原因は『給料』に対する根本的な勘違いにあります。年功序列制をベースとしたいわゆる“日本企業”に勤めている人たちの給料は、そもそも努力や成果を基準に決められているわけではありません。明日も元気に働いてもらうために必要な『必要経費』を企業から支払われているに過ぎないのです」

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例えば、同じ仕事をしても都心と地方で給料に差が出ることは珍しくありません。それは東京で働く人のほうが優秀だからではなく、都心のほうが家賃や生活費などが単純に高いからです。また、同じ会社であまり仕事をしていないように見えるオジサンの給料が高いのも、年齢が上がるほど、家族を養うために必要な費用が増えていくためだと説明できます。

「こうして考えると、高収入でも給料に不満を持つ理由がわかるはずです。高収入のビジネスパーソンのほとんどは激務で、ストレスも過剰です。それを解消するためには、普通の人より多くの“コスト”がかかる。つまり、『生きていくために必要な経費』が高いのです。

仕事でどれだけ成果を挙げていても、給料は経費なので明日も働くために“必要な分”しかもらえません。ということは、ごく普通に給料と同じ水準の生活をしていたら、余分なお金はなくなってしまう理屈になります。これが収入の多さにかかわらず『生活が苦しい』と感じてしまう理由です」

特に高収入の人たちは、「頑張った自分へのご褒美」「収入に見合った生活がしたい」という思いが働くため、生活の水準を上げてしまいがちです。しかし、外資系金融機関のように自分が稼いだ利益が給料に直結するような仕事(利益分け前方式)でもない限り、給料は基本的に「必要経費」でしかありません。それなのに給料に合わせて生活水準を上げてしまうから、いくら仕事を頑張っても“余裕がない”状態から脱することができないのです。

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