15050802_1毎年、4月になると進学、就職や転職など新しい生活をスタートされる方がたくさんいらっしゃいます。同じ学校、職場でも学年や部署が変わったり、新しい仲間が加わったりと何らかの環境の変化がある方も多いと思います。入学式や入社式、歓迎会等を終えて、5月の大型連休が始まる頃になるとチラホラ出てくるのが「五月病」という言葉です。情報番組や電車の中吊りなどでも、この季節必ず見かけるのがこの「五月病」というテーマです。

■「五月病」ってどんな症状のこと?

今回はこの五月病とは一体何なのか、主な症状と自分でできる予防法、また、いざかかってしまった場合の対処法についてお話したいと思います。

「五月病」とは主に、新しく学校に入ったり、就職したり、あるいは転職や転居をしたりと環境の変化があった方に見られやすいもので、新しい環境にうまく適応できないことによる症状をまとめてこう呼んでいます。「五月病」は正式な診断名ではなく、医学的には「適応障害」や、状態により「うつ病」に分類されることもあります。

症状としては、気分の落ち込み、仕事や勉強に対する意欲や集中力の低下、不眠、食欲不振、焦りや現状に対する不安感、孤独感などが見られます。

発症の時期としては、その名の通り5月の上旬、ゴールデンウイーク明けに症状が出ることが多いです。この時期に多い理由としては、大きな期待を胸に新生活をはじめてはみたものの、新しい職場環境や生活環境に上手く適応できないことが挙げられます。

具体的には、違和感や劣等感、焦りや「こんなはずじゃなかった…」という後悔を胸に抱えたまま、大型連休に突入し、日々の生活の中で抑えていた不安や不満が一気に爆発したり、長い休みの後、また同じ環境に戻ることに対する億劫さや嫌悪感を自覚するといったことです。

■「五月病」にならないためにできること

五月病は、真面目で几帳面、内向的で周りの人に気を遣うタイプの方に多いとされ、生活の中で仕事の占める割合が身体的・精神的に高かったり、人からの評価を非常に気にする、といった性格傾向もリスクファクターとして考えられます。

五月病にかからないためには、まず、自分に対しても周囲に対しても、「完璧主義」をやめることです。6割できればまずまずOK、7割できたら上出来、といった心構えで生活することが大切です。さまざまなことに期待し過ぎたり、とらわれ過ぎたりせず、いい意味で「あきらめる」「割り切る」といった自己防衛法を身につけることも非常に役に立つでしょう。

特に、慣れない環境で自分がスマートにふるまえないのは、仕事や学業の面でも、周囲とのコミュニケーションの面でも、至極当たり前のことです。数か月経てば、自分の置かれている環境や周りの人間関係も、徐々に見えてくるはずですし、4月、5月に自分が思っていた状況と現実の間には大きな開きがあることに驚くこともあるかと思います。この時期はまだ序盤ですから、ある程度「やり過ごす」ことも大切です。

また、ひとりで悩みを背負い込まないことも大切です。少し周りを見渡せば、自分と同じ状況に置かれている仲間がたくさんいることに気付くはずです。何も、同じ職場や学校の同期である必要はありません。地元の友達や、かつての同級生など誰でも構わないので、自分と同じように新生活に悩みを抱えている知り合いと悩みを打ち明けあう場、例えば食事に行ったりカラオケに行ったりする機会を設けて発散するようにしましょう。

ただ、心配なのはお酒を飲む場合。1杯、2杯であれば構わないのですが、日常生活に悩みがあるとつい深酒をしがちです。また、アルコールは飲んでいる間は良いのですが、覚めた後に抑うつ気分を増してしまうという性質がありますので、適量を守るようにしましょう。

さらに、他のほとんどの病気に対しても言えることですが、生活習慣、特に食生活のバランスや適度な運動、規則的な睡眠時間を保つことは、五月病に関してもきわめて効果的です。中でもスポーツは非常に良いストレス解消になる上、睡眠の質もあげてくれますので、忙しい毎日とは思いますが、週に数回は体を動かす機会を持ちましょう。

■「五月病」かな? と思ったら

もし、万が一「五月病」の症状が出てきてしまったら? まず、一度立ち止まって、自分の生活を見直すことが大切です。

一旦、原因となっている仕事、勉強から気持ちの上で距離を置くことです。「転職したい」「浪人して別の大学に行きなおした方がいいんじゃないか」と思ったら、まずひと呼吸おいて、少なくとも週末2日間は仕事や学校から離れて過ごすようにしましょう。家族と過ごすのもいいですし、ひとりで趣味に没頭したり、自然に接したり、遠出をしたい気持ちになったら泊まりがけで出かけるのも気分転換にいいと思います。上手く気持ちの切り替えができたら、これだけでもずいぶん気が楽になることがあります。

また、落ち着いて考えてみても実際に自分の求めていたこととは違う、現状の職場や学校が長期的に考えても自分のためにならないと思ったら、方向転換のための準備を始めても良いと思います。

一方、少し休んでみて、環境の問題と言うよりもやはり自分自身が本来の自分とは違う、どうしても前向きな気持ちになれないと感じたら、初期のうつ病に移行している可能性がありますので、メンタルクリニックや精神科など専門医を受診して相談してみましょう。

五月病にかかるのは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、新しい環境に真摯に適応してやっていこうとするからこそ出ている症状ですから、自分の中の違和感を無理に否定しようとせずに、早めに気付いて対処してください。

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文責/Doctors Me