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日米の文化の違いとして、よく「日本は喋りすぎないのが美徳」「アメリカでは言葉で表さないと伝わらない」なんて言われます。そのため、グローバル化が進むビジネスの現場においては、自己アピールが苦手な内向的な日本人は不利だと指摘されています。

しかし、それは本当なのか? 国際的に活躍しようと思ったら、誰もが外交的な性格にならなないといけないのでしょうか。『なぜ、あの人の頼みは聞いてしまうのか?』など、ビジネスにおける言語とコミュニケーションの関係にまつわる著書が多くある、明治大学法学部教授の堀田秀吾さんに聞きました。

■日本人は世界でいちばん人間関係を大切にする

まず、日本人の特徴について見てみましょう。「国際的に見ても、確かに日本人には内向的な傾向を持つ人が多いです。しかし正確にいえば、内向的というよりも、集団主義的なのです」と堀田さんは言います。

堀田秀吾さん

堀田秀吾さん

1985年から94年にかけて、文部科学省の統計数理研究所が行った、国際的な国民性に関する比較調査(7カ国国際比較調査)によると、日本人のもっとも顕著な特徴として「人間関係を重視する」傾向が見られたそうです。

「生活においては、『友人・知人をきわめて重要である』とし、仕事では、『仕事はできるが、他人の事情や心配事に無関心な人』よりも、『他人と仲が良くできる人』が望ましいとします。つまり、ルールよりも調和を重んじ、気の合った人と働くことを求める国民性です」

ちなみに、これほど大規模な国際的調査は行われていないものの、日本人の国民性に関する調査は継続的に行われており、近年は若い世代を中心に「人間同士の絆」を求める傾向が強まっているそうです。

統計数理研究所が公表した日本人の国民性調査で、上司と「仕事以外の付き合いがあった方がよい」と答えたのは(筆者注:直近の2013年調査では)20代で72%、30代で66%に上り、1973年調査の20代で73%、30代で69%に近い結果となった。1998年はそれぞれ50%と45%にまで落ち込んでおり、若い世代が職場で深い人間関係を志向している傾向が浮かび上がった。

「給料が多いが運動会や旅行などはしない会社」と「給料はいくらか少ないが運動会や旅行などをして、家族的な雰囲気のある会社」のどちらに勤めたいかを尋ねると、2013年調査では「家族的な雰囲気の会社」を選んだ30代は46%で前回より11ポイントも増えた。20代も3ポイント増の48%だった。(2014年11月1日 、西日本新聞夕刊)

反対に、グローバル市場の中心であるアメリカ人は、かなり個人主義的。どの国でも調和を重んじる人を求める傾向はあるのですが、アメリカだけ、他の国に比べて「調和より一定の原則(ルール)に従う人」を好む傾向が見られたのです。

「こうした考え方の違いの根底には、日本語と英語の構造の違いが密接に関係しています。私たちの性格は、自分で思っている以上に言語に縛られているのです」

■「花びん壊れちゃった」に見る主体性のなさ

日本人の集団主義的な特徴――自己主張が控えめで、調和を重んじる――といったものの由来は、実は「日本語の構造」にあると指摘する堀田さん。これはどういうことなのか。

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