Professional business man with cloud network headテクノロジーの発達により、仕事をめぐる環境は大きく変化しました。なかでも、スマートフォンの普及は、私たちの働き方に大きく影響しています。
メリットとしては、いつでもどこでも仕事に関する情報をチェックしたり、仲間と共有したりできるようになったことです。しかし、そのメリットと思われていたことがデメリットにもなっているのです。どういうことか。

ビジネスパーソンのなかには、仕事に関するメールの新着通知をスマホで受信できるようにしている人もいると思います。そういう設定をされている方の多くは、仕事のメールにTwitterやFacebook、LINEなどのSNS、さらに最近ではニュースアプリなどの更新といった情報が加わり、スマホが絶えず何かを“お知らせ”している状態になっているかと思います。

これは便利な半面、仕事をスムーズに進めるうえでは障害になっていることがあるのです。

世界15か国で読まれる、仕事の能率向上に関する名著『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』(ケリー・グリーソン著)によると、効率よく仕事をしていくためのたったひとつのルールは、「優先順位」をつけることではなく、とにかく「すぐやる」こと。同書は、これを繰り返し、いろんなケースを例に述べているのです。

個人の能率を向上させる第1のルールは、これだ。
初めて触れたり読んだりしたときに、取りかかること。
これは、すぐにできないこととか、すぐにやってはいけないことについてではない。できること、するべきこと。しかもあなたがやってはいけないことについて言っているのだ。
(中略)
やろうと思っていることに手をつけて、『すぐやる』のだ。

朝、会社に着いて、机の書類を手にとる。「そうだ、この返事を書かなくては」。そう思っているうちに、メールが来たり、電話がかかってきたり、いろいろな雑事に追われます。それらすべてに対応していると、いつまで経っても最初に思った「書類の返事を書く」ということはできません。

だから、仕事には「優先順位」をつけるべきじゃないの?――答えはNOだと、著者のグリーソンは言います。

彼が提唱する能率向上のメソッドは、仕事を「やるべきか、やらないべきか」の2種類にしか区別しません。判断はそのどちらかでしかないので、書類を手にとった時点で「返事を書くべきか、書かないべきか」を決めなければならないのです。そして、「やる」と決めたら「すぐにやる」こと。これが仕事の能率を劇的にアップさせる唯一のルールだといいます。

この方法の良い点は、まず第一に、作業の集中力が上がります。「すぐやる」と決めることで、かえって時間の制約も生まれ、テキパキと物事をこなすようになっていきます。

第2に、「すぐやる」ことで、「本当にやるべきこと」に力を入れることができるようになります。仕事がたまっている状態とは、大抵の場合、細々とした雑事に追われていることがほとんど。返信を書きそびれたメールボックスのように、ちょっとずつ後回しにしたことが累積していき、身動きをとれなくしてしまいます。細かい雑事ほど「すぐやる」ことで、こうした事態を未然に防ぐことができるのです。

ビジネスの利益につながるのは、雑事を片付けることではなく、何か企画を考えたり、新しい提案を考えたりすることです。結局のところ、仕事の能率を上げる手段とは、集中力をいかに上げるかということに尽きます。

同書では、この本当にやるべきことに「集中」するためにも、仕事は「すぐやる」と決めてしまうことがもっとも効果的だと説いています。それも作業に優先順位をつけるのではなく、機械的に判断し、機械的にこなしていく

その観点で、新着通知でいっぱいのスマホについて考えてみましょう。

仕事を「すぐやる」と決めれば、メールは「見た瞬間に返信するか、しないか判断する」のがルールになります。「それなら、メールが届いた瞬間にスマホでチェックできるようにしておけば、絶えず判断でき、ムダが減るじゃないか」という言い分があるでしょう。しかし著者のグリーソンによると、それは間違いなのです。

 受け取った大量のメッセージを扱うときの問題の多くは、単に『すぐやる』だけで解決できるはずだ。だが、大切なのはいつ『すぐやる』かなのだ

先ほど、「仕事の能率向上とは結局、集中力をいかに上げるか」であると述べました。スマホの新着通知に気を取られ、1日に何度も「やるべきか、やらないべきか」判断している状態とは、果たして、集中力が高まっている状態でしょうか。

むしろ、集中を妨げるものはカットすべきなのです。

だから、スマホの新着通知は切り、メールも、SNSも、ネットニュースも、1日のうちに「チェックする時間」を決めてしまう。メールは1日1回のチェックでは足りないでしょうから、「朝・ランチ後・帰宅前」などと決め、それ以外の時間はチェックしないと決めてしまえば、メールについて頭を働かせる時間はグッと少なくなります。

あらゆる雑事についてこうしたルールを適応すれば、「本当にやるべきことになかなか手をつけられない……」と悩まされることもなくなるはずです。

『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』(PHP研究所)

『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』(PHP研究所)

<クレジット>
文/小山田裕哉