J.D. パワー(株式会社ジェイ・ディー・パワー アジア・パシフィック)の受付け壁面にかけられた額

J.D. パワー(株式会社ジェイ・ディー・パワー アジア・パシフィック)の受付け壁面にかけられた額

世界中のさまざまな業界において、ビジネス成果の向上に役立つ顧客の声を集め、分析し、顧客満足度のランキングを発表している「J.D. パワー」という会社をご存知でしょうか?

創業から45年以上にわたり独自のモデルを用いて顧客の声を分析し、ビジネスに役立つ情報を提供し続けてきた同社。消費者の声から抽出された公正なデータは、各業界から厚い信頼を寄せられており、自動車、金融、保険、トラベル、IT、通信などの業界を対象に毎年算出されるさまざまな項目による調査結果は、実用性の高いデータとしておおいに活用されています。

その同社が実施した2015年生命保険契約満足度調査(募集編)において、ライフネット生命が、業界同率第1位に選ばれました。

今回はそんなきっかけもあり、顧客の声を企業へと伝える重要な橋渡し役、J.D. パワー代表の鈴木郁さまに「顧客満足とは何か?」といったテーマでお話をうかがいました。

︎■「お客様の声」という指標をベースにしたビジネス

──J.D. パワーの成り立ちやコンセプトについて教えて下さい。

鈴木:元々は、J.D. パワーⅢ世が1968年に創業した自動車業界を中心としたマーケティング調査会社が始まりで、創業当初からお客様視点の重要性を強く意識していました。

企業は、商品やサービスを良いと思ってもらいたいし、また使って欲しい。さらに新しいお客様をもっと増やしたい。その起点となるのは、あくまでお客様の声(Voice of the Customer)だという考えです。

製品品質の良し悪しは、突き詰めると「買ったお客様が良いと思ったかどうか」。消費者が製品に対して認識する品質、つまり「知覚品質」が一番重要です。ですから、お客様の声を起点とした情報をしっかりつかみ、それをベースに品質の向上や改善をすることが、企業の競争力につながります。そんな考え方から、お客様の評価を色々な指標で表して、企業に利用してもらうビジネスを始めました。

J.D. パワー代表の鈴木郁さん

J.D. パワー代表の鈴木郁さん

──J.D. パワーが生まれた当時(1960年代)の自動車業界は、どのような感じだったのでしょうか?

鈴木:アメリカの事例なんですが、当時国産車と輸入車とで、エンジンのかけ方が違っていたそうなんです。技術的には輸入車の方が優れていたのですが、アメリカの消費者たちは、不便でも慣れ親しんでいるやり方に愛着を持っていて、新しいやり方を受け入れなかった。結局、技術的には進んでいた輸入車が、消費者からは品質が劣っていると認識されてしまったということがありました。

これはあくまで一例ですが、企業はお客様の声をしっかりと聞かなければ商品性能がいくら良くても、市場に受け入れられないということです。

■顧客満足が企業の利潤につながる

──お客様の声を聞くということについて、どのようにお考えですか?

鈴木:お客様の声を聞くと一口に言っても、色々な方法や活用の仕方があります。

例えばお客様の声として代表的なものに、苦情があります。苦情を受けたときは、「こういうことを言われるのは何が問題で、何を改善すればいいんだ」と活用することができます。

また、改善を進めていくにあたり、お客様の評価が上がっているか、その結果業績がどうなっているか、つまり、会社にとって改善したことがどういう意味を持つのかをきちんと把握し理解しないと意味がないですよね。

そのために、一番理解しやすい数字という形でお客様の声を測定できる仕組みをつくるということが、大切なんです。そして、そこに定性的な情報なんかを組み合わせて、うまく改善に結びつけていく。お客様の声とは、そういうものだと思っています。

──顧客満足(CS)自体を否定する経営者はいないと思うのですが、時として、利益を優先するがためにCSはないがしろにされてしまうこともあるかと思います。顧客満足に関しては、どのようにお考えですか?

鈴木:経営者にとって企業の存続、成立、存在の意味は、当然重要です。しかし、その時に利潤をあげることと、お客様の満足を求めることは違うと、捉えることに間違いがあると思います。

なぜ顧客満足を標榜するかというと、満足したお客様はまた来てくれるし、新しいお客様を連れて来てくれる。つまりビジネスそのものなんですよね。だからCSが大事で、それと利益はなんら相反するものではなく、満足を追求した先には自然と利益がついてくる。そう考えています。

■アクションを起こせば、スコアは良くなる!

──評価のスコアが悪かったところから、だんだん改善された企業はありますか?

(次ページ)キーポイントは消費者との接点。