15063001_3(2)

鈴木:事例はたくさんあります。ただひとつ言えることは、企業側が何も変えずに、ずっとスコアが良いという例はない。評価が上がる企業は、どこも何かしらのアクションはとっています。

例えば製品を供給している会社の場合、製品の品質面や機能面の改善をおこない、お客様がそれを受け入れていることもあります。もしくは、製品面ではそんなに差別化ができていないなかでも、それを届けるセールス活動やサポート活動の品質が格段に良くなっていたり、価格的にとても高いベネフィットを提供する形に出来ていたりなど、アクションの方法はそれぞれに違います。

──アクションに対して、スコアはちゃんとついてきているんですね。

鈴木:そうです。企業の強み弱みはそれぞれ違うので、顧客の知覚品質を変えるための改善ポイントは、各社の立場でまったく異なります。改善すべきところをきちんと理解し上手いアクションをとれている企業が、お客様の認識を変えていける企業だと言っていいと思います。

■顧客との接点をつくることで生まれるロイヤルティ

──今後、従来型の企業と比べて顧客との直接の接点が少ないネット企業が、どんどん評価の対象になっていくと思います。ネット企業がお客様からの評価を上げるには、何が大切だとお考えですか?

鈴木:企業の各チャネルと消費者との接点が、どう保たれているかが非常に重要な要素だと思います。「ネット、ネット」と言われているからこそ、接点の品質がとても重要になっていると思っています。

それから、接点の頻度も消費者にとっては大事なんですよ。ビジネスモデルとして「人を介する」、もしくは「ネットでやる」のかに関係なく、お客様との関係性を保つことが基本ですから、頻度が多い方が平均的に評価は高くなる。そのための接点の場や中身の品質をどう維持するかが、やはり大事だと思います。

──海外の事例も含め、スコアが高いネット企業などはありましたか。

鈴木:ネット中心のサービスをされているある企業は、顧客と提供側とはまったく会わなくていいビジネスにも関わらず、メンバーシップの方々とオフサイトをやるんです。非対面型の事業であるにもかかわらず、あえてフェイス・トゥ・フェイスの機会で、顧客との関係性を高めています。

──それで、顧客の満足度を上げていくということですよね。

鈴木:そうです。そして顧客満足度をあげることが、実は企業のロイヤルティ向上にもつながっていきます。

■「顧客の声を、自分たちのプロセスに翻訳してみる」

──お客様の声を聞く姿勢や心がけることなど、現場で責任を持って仕事をされているビジネスパーソンに向けてのアドバイスをお願いします。

鈴木:お客様の声は、言葉でも数値化されたものでも、顧客が見えるところだけで判断しています。すると、「悪い」という評価が出たときに、顧客が指摘することがイコール企業の課題ではないケースが出てきますよね。だから、「お客様が言っていることが、何故そのように見えているのか」と、原因を考える癖をつけることがとても大事だと思っています。

顧客の声を分析していくこと、我々は「顧客の声を自分たちのプロセスに翻訳してみる」と言ったりするのですが、そういうことが大事だと思います。

<プロフィール>
鈴木郁(すずき・かおる)
1992年株式会社J.D. パワー アジア・パシフィック入社。主に通信、IT、OA機器、保険、ホテル、金融業界などにおけるJ.D. パワーのCS調査・サービスの開発に従事。2013年2月に代表取締役社長に就任。

<クレジット>
取材・文/ライフネットジャーナル オンライン編集部