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みなさん、「ワッセナー」ってご存じですか? いま、斬新なコンセプトの「変なホテル」オープンで話題のテーマパーク・ハウステンボス(長崎県)。ワッセナーは、そのハウステンボスに併設されている住宅街の名前です。なぜ、テーマパークの中に住宅地があるのか、そこにはいったいどんな人たちが住んでいるのか。その秘密を探ります。

※この記事は、おうちと暮らしの情報マガジン「オウチーノ de ヨムーノ」から提供を受けています。

■ハウステンボスに住宅街をつくったワケ

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1年を通して季節の花々が咲き誇り、夜になると建物や運河にはイルミネーションの光がきらめく。そんな非日常の世界を体験できるハウステンボスのことは、観光地という認識しかお持ちでない人がほとんどではないでしょうか。しかしパークの一角には、「ワッセナー」というオランダに実在する高級住宅街の名を冠した居住エリアが存在しているのです。

「なぜ非日常の象徴とも言えるテーマパークに住宅街が?」という疑問が頭に浮かびます。しかしワッセナーは、ハウステンボスの構想には欠かせない重要な要素であったと、ハウステンボス・技術センター株式会社の岳本忠晴さんが教えてくれました。

「当時の創業者がオランダを訪れた際、豊かな自然環境と共存した生活に心を打たれ、『自分の故郷にもある美しい森や海を生かし、新しい街をつくることで、たくさんの人々を呼ぶことができるのではないか』と考えたことがハウステンボスの構想のキッカケでした。街には生活者がいてしかるべきですから、住宅街をつくることは当然の流れだったのです」

通過型の観光施設ではなく、滞在型のリゾートを、そして将来的には人口3万人が定住する都市を目指して、ハウステンボスは開発されてきたのだといいます。

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ワッセナーは、10棟(120戸)のマンションと130戸の戸建住宅で構成されています。マンションは70㎡、80㎡、100㎡と3タイプの広さがあり、間取りはすべて2LDKです。平成4年に分譲が開始され既に完売済みであるものの、築23年が経過した現在では、毎年2~3戸ほどが、約1,600万円~3,000万円の売買価格で、中古物件として流通しています。一方の戸建住宅は、オランダの伝統的な家屋をモデルにしたそれぞれコンセプトが異なる4タイプの建物があり、敷地90坪~370坪、間取りは2LDK~4LDKとさまざまです。売買価格も2,500万円~1億8,000万円と幅広く設定されています。こちらは毎年10戸程度が売買されているそうです。

■単なる住宅購入ではなく、ライフスタイルを選ぶということ

そんなワッセナーには、一体どのような人たちが暮らしているのでしょうか。岳本さんによると、「約2割が定住者で、他は別荘として利用している方々」とのこと。確かに、戸建住宅の6割(マンションの場合は半分)には桟橋があり、クルージングや釣りなどを楽しむことができるワッセナーは、別荘に最適ですね。一方で、四季折々の花々に囲まれ、野生の鳥や小動物を身近に感じながら、ゆったりと生活できる理想的な住環境でもあります。自然と共存するというライフスタイルを求めて、九州はもちろん全国から移住してくる方もいるそうです。

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ここで気になるのが、観光客と居住者の住み分けについて。岳本さんは、「運河を隔ててすぐ隣がテーマパークですが、一般の観光客はワッセナーへ立ち入れないようになっています。ワッセナーの入口には管理センターがあり、警備員が常駐することで居住者のプライバシーを守っているのです」と明かしてくれました。

管理センターでは、食事のケータリングや庭の管理、室内清掃やリネン類のレンタルなど各種サービスも提供しています。また、ゴミの収集や道路の清掃など、生活インフラの維持も管理センターが行っており、これらの費用は居住者からの共益費でまかなわれているそうです。共益費は物件の大きさによって2~5万円程度だといいます。また、街の景観を維持する目的から、ワッセナーオーナー間では建築協定・緑化協定が結ばれています。自由に建物の外観や庭を変更することはできず、実施するには協定に従った事前の申請・許可が必要となります。居住者の生活を守るため、そしてワッセナー全体の環境を守るために、維持管理の仕組みが徹底されている点は大きな魅力です。

また、ワッセナーの居住者やその家族は、いつでもテーマパークに無料で入場できるという特典があります。園内で催される花火やショーを楽しみにしている方も多いのだとか。「騒音の問題など、特にパーク側に一番近いオーナー様には、多少我慢いただいているはずです」と、岳本さんはいいます。しかしこれまで大きなクレームにならなかったのは、ワッセナーに住むことを、ハウステンボスという環境そのものを満喫することだと考えている方が多いからでしょう。

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万全の管理体制に支えられた美しい街並み、豊かな自然に囲まれたワッセナーでは、都心では得ることのできない喜びや感動を日々感じることができます。庭先に船を停められる住宅は、日本広しといえど他にはないでしょう。理想の日常を手に入れたい、また贅沢で穏やかなセカンドライフを送りたいと考える人にとって、ワッセナーはぴったりの選択肢なのかもしれません。

<クレジット>
記事提供元:おうちと暮らしの情報マガジン「オウチーノ de ヨムーノ