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お金にまつわる悩みは、大小はあれどもきっと誰にも心当たりがあるのではないでしょうか。今は一定の収入があっても、年をとって働けなくなったときの生活が不安だったり、会社のお給料以外の収入も得て余裕のある生活をしたいと思ったり、年老いた両親に楽をさせたいと考えたり。お金の悩みを解決するひとつの方法は“投資”です。投資は定期預金や財形貯蓄より、(投資内容によって異なりますが)積極的にお金を増やす方法であると言ってもいいでしょうか。

投資と聞くと、株の売買をイメージして、素人がへたに手を出しても損をするばかりなのではないかと考える人も多いかもしれません。そこで、長い時間をかけてじっくりお金を育てるつもりで投資に取り組む方法を教えてくれるのが『臆病な人でもうまくいく投資法〜お金の悩みから解放された11人の投信投資家の話』(竹川美奈子著)です。経験のない人が、どのように投資を考えて実践すればよいのか、段階を追って解説しています。

今回は、同書の中からいくつかのポイントをご紹介します。

■無理のない投資のために、まずは自身の許容度を計ってみる

同書では最初に、22歳から60歳になるまで38年間、毎月2万円を積み立てた場合の例が示されています。これを定期預金0.025%で運用した場合、積立総額912万円(2万円×12か月×38年)に対して得られる金利は約4万円。最終的には約916万円になります。これに対して、同じ912万円の積立をしても、投資信託を仮に5%で運用できたとした場合は金利だけで約1,800万円、最終的には約2,720万円の資産と、定期預金と比較して約3倍もの差が出ます。

それを知ると、投資はなんとなく怖そうだと遠ざけている場合ではなく、無理のない形で投資を始めておきたいと思うでしょう。

無理のない投資を始めようとしたら、まず現在自分がいくらもっているのかを確かめて、不測の事態、つまり失業や天災などの場合に使える「非常用資金」を確保します。次に「リスク許容度」を考えます。これは「どれだけのリスクを許容できるかという最大損失額」のことです。投資において大切なのは、短期的な価格変動を受け入れて長期的なリターンを享受すること。そこで実際いくら投資に回せるかを決めるために、まず毎月のお給料など手取り収入と、生活費その他の支出の差を算出します。それが1年でプラス100万円なら、その100万円という数字が「1年間に貯蓄や投資に回せる金額」であり、最大損失許容額の目安になります。

さらに、たとえば2008年のリーマン・ショックのような問題があって一時的にお金が減る場合を考えます。そこで3割の損失があるとすると、100万円をその3割と考えれば、投資した金額は約333万円ということになり、損失が出ることを覚悟して投資しても耐えられるのは333万円。これが投資可能な上限額ということになります。

以上のようにして投資金額を決めるのですが、それを確定するときには「精神的にどのくらい耐えられるのか」もリスク許容度の重要な決定要因になります。精神的な強さ弱さも考えて、上限額まで投資するのか、もっと余裕をみて、それより少ない金額を投資に回すのかを考えればよいのです。

■分散投資という手段

さあ、こうして自分のリスク許容度を確かめたら、いよいよ何に投資するかを検討することになります。
無理なく/長期でじっくりととりくむ「コツコツ投資」のメインの道具に、投資信託のなかの“インデックスファンド”があります。特定の株式などではなく、市場全体にまとめて投資する、つまり多くの株式や株以外の資産に分散して投資するものです。インデックスファンドの利点は、購入時に販売会社(銀行や証券会社など)に払う手数料や、投信を保有している間に運用会社、販売会社、信託銀行に払い続ける運用管理費用などの手数料、そして解約時にかかる信託財産留保額も安いことです。そしてこのインデックスファンドを一括購入するのでなく、毎月一定の金額で買い付ける積み立て投資という方法があり、これがまさに「コツコツ投資」というわけです。

■自分の資産を増やすだけでなく、誰かの活動を支援すること

コツコツ投資を実践している11人の投信投資家の例が、本書で紹介されています。
ある人はリーマン・ショックで危機感を覚え、さまざまな情報を集めた後に「投資方針書」を作成してから投資を始めました。方針書には、自分の投資の目的、期待するリターンの前提や投資額及び目標の資産額、投資の見直し周期などを書きました。自分で作った基本ルールに従って少しずつ積み立て投資を実施するので、一時的な株価の上下があっても動揺することなく、じっくりと資産の動きを見守れるとこの人は考えています。

また別の投資家は、インデックスファンドから始めて、その後個別株について研究し、将来有望であると考えられる会社や、応援したい事業に投資するようになりました。自分のお金を増やすだけではなくて、社会にとって何らかの価値を生む活動をしたいという気持ちからです。個人の資産を増やすという目的が、日本や世界のさまざまな企業がどのような考えで、どのような事業を行っているかを知ること、さらにその活動を手助けしているという達成感につながることもあるのですね。

登場する投資家は、ほとんどが会社勤めしながら、いろいろなきっかけで投資に興味をもった人たち。本を読んだりネット情報を探したりして研究し、納得してから投資を始めました。でも、ある程度の知識を得て投資を始めてからは、資産状況をチェックしたり投資配分を調整するのにそれほど時間をかけているわけでもないようです。それまでと同じように仕事や趣味などの活動を続けながら、たとえば1年で4日くらいとか、月に10分程度というわずかな時間を投資に割いていると話しています。経済的な面だけでなく、時間的にも無理のない資産運用が可能なのです。

投資をギャンブルのようにとらえると、恐い気持ちが先にたってしまう人もいるでしょうが、本書が勧めるように、まずは少し興味をもって情報収集し、しっかり方針を立て、少しずつ積み立てる方式ならば、これまで投信など考えたことがなかった人も一歩を踏み出せるかもしれません。セミナーに参加したり、ファイナンシャルプランナーに相談するという方法もあります。

長い人生の先を考えながら、少しずつ増えていくお金や、それによって社会に参加する楽しみを味わうこともできそうです。

『臆病な人でもうまくいく投資法 お金の悩み から解放された11人の投信投資家の話』竹川 美奈子 (著)、プレジデント社

『臆病な人でもうまくいく投資法 お金の悩み
から解放された11人の投信投資家の話』竹川
美奈子 (著)、プレジデント社

<ご注意>
投資を行う際は注意事項等を必ずお読みください。また、当社が直接投資を推奨することはございませんので、お取引にあたってはご自身の判断で行ってください。

<クレジット>
文/長谷川圭子