近年は「ナシ婚」といって、披露宴を開かずに結婚する人が増えています。人生の一大イベントである結婚式は簡略化が進んでいる面があるようです。では、もうひとつ、人生最大にして最後の節目であるお葬式についてはどうでしょうか。

一般財団法人日本消費者協会が定期的に行っている「葬儀についてのアンケート調査報告書」(以下葬儀調査)の最新版(第11回)から、現代の葬儀事情を概観してみましょう。

■単身者の保険、必要保障額の目安は、葬儀費用というけれど

生命保険の必要保障額を考えるとき、「単身者の方は、万が一に備えて、葬儀費用分の備えがあると安心です」といった説明が行われます。

なるほど、と思う一方、「葬儀費用はいくらだろう?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

日本消費者協会「葬儀調査」によると、直近3年間(2014〜2016年)に身内の葬儀があった方811人のうち、491人が葬儀にかかった費用について回答しています。その額は、会食費用から寺院等への支払い、葬式費用など、トータルで下は5万円から上は800万円。どのような葬儀形態か、どのくらいの参加者かなどによって、大きく異なります。もっとも多かったのは、150万〜200万円で【図1】、全国の平均額は195.7万円となっています。

【図1】葬儀費用の合計

(第11回「葬儀についてのアンケート調査」報告書より)

■心付けやお布施の額は?

「葬儀を経験して困ったこと」(複数回答)として筆頭に上がったのは、「心付けやお布施の額」。3人に1人が「困ったこと」として挙げています。これに、「通夜・告別式の接待の仕方や手配」「葬儀の手順がわからなかった」が続き、いずれも5人に1人以上が困ったこととして挙げています【図2】。

葬儀社に一括してすべてを依頼するケースが全国で7割近くにのぼっている背景が、そうしたことからもうかがえます。

【図2】葬儀を経験して困ったこと

(第11回「葬儀についてのアンケート調査」報告書より)

■葬儀も「ナシ」の時代に?

では、どのような葬儀が行われているのでしょうか。最近3年間で身内の葬儀があった方811人のうち、一般葬は56.6%です。次いで、親族や身近な方だけで行う家族葬が35.4%にのぼっています【図3】。エリア別にみると、家族葬は、東京とその近郊(埼玉、東京、神奈川)では45.7%、近畿(三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)では58.8%と、それぞれ一般葬を上回り最も多くなっています。

また、葬儀自体を行わずに火葬する「直葬」も、全国では2.0%ながら、東京とその近郊では5.8%となっています。単身世帯が増えている昨今、葬儀の小規模化、簡略化は増えていくかもしれません。

【図3】葬儀の形式

(第11回「葬儀についてのアンケート調査」報告書より)

【参考資料】
「第11回 葬儀についてのアンケート調査 報告書」(2017年1月、一般財団法人日本消費者協会)

<クレジット>
文/ライフネットジャーナル オンライン 編集部