日本では罹患率が増加していると言われる「がん」。かつては不治の病と恐れられていたがんも、今では早期に発見できれば“治る病気”になりつつあり、働きながらがんの治療を受ける人もたくさんいます。

では、そんながん経験者の悩みにはどんなものがあるのでしょうか。2017年8月、治療費と収入減をサポートする新しいがん保険「ライフネットのがん保険ダブルエール」を発売開始したライフネット生命は、特定非営利活動法人キャンサーネットジャパンの協力により、572名のがん経験者にアンケート調査を実施しました。その結果について、「生活」「経済」「仕事」の3つのテーマで、3回にわたって紹介します。

【調査概要】ライフネット生命保険 がん経験者572名へのアンケート調査
 [調査実施時期]2017年6月
 [調査対象]がん罹患時に就労していたがん経験者 572名
 [調査方法]ウェブアンケート
 [調査協力]特定非営利活動法人キャンサーネットジャパン

■罹患後の生活で困ることには、男女による違いも

がんと診断されたときに感じた不安でいちばん多いのは、男女とも「再発や転移」で約8割。ついで「仕事」(男性58%、女性62%)が多いという結果でした。では、罹患後の生活で困ったことは、何だったのでしょうか。

罹患後の治療中に感じた不安や困りごとは、男女で少々違いがあるようです。
男性の場合は「食生活への配慮」が53%と最も多く、「治療や体調の相談」が46%、「医療情報の取得」が35%と、これに続きます。

それに対して女性の場合、「治療や体調の相談」と答えた人が43%いましたが、「外見ケア」も同じ43%で(男性は19%)、男女差が最も大きく現れた悩みがこの「外見ケア」だと言えるでしょう。抗がん剤による頭髪や眉毛・まつ毛の脱毛、肌の劣化で悩んでいる人が「外見ケアを個人的にレクチャーしてくれる場所がほしい」と答えた例もあります。

続く「買い物」「食生活への配慮」(どちらも39%が回答)は、日常的に家族の生活や食事の世話を受け持つ女性に多い悩みとも考えられます。

■がん治療中の方は、どんな生活サポートが欲しい?

サポートサービスには、“がん研修を受けたスタッフ”による家事などのサポートを望む声も。
ある男性は、自身のがん治療の経験から「私の身の回りのこと、家事、子どもの世話を全てひとりで行う妻が倒れたら何もかも回らなくなってしまう」と答えています。治療中は体力がなく、買い物が負担になったり、薬の副作用による味覚異常や食欲不振により、料理が苦痛になることもあります。買い物や食事の準備、掃除などのサポートを望む人が多いようです。

また、通院時、入院時にひとりで移動するのは体の負担が大きいので送迎サポートを望みたいという回答や、「家族に弱音を吐けないので、それを聞いてくれる人がいたら」という精神面のサポートの要望もありました。

子どもの保育園などへの送り迎えもサポートのニーズが高いのですが、地域の子育て家庭に対するサポートの場合などは、「半ばボランティア的な仕組みで、利用の理由が周囲に広まると思い、利用できなかった」という人もいました。

(治療中困ったこと・欲しいサービスの例 <自由記述より抜粋>)

  • 【家事】1週間分の野菜を切ってくれるだけでも助かります(30代 女性)
  • 【家事】がんについて勉強した方やサバイバーさんによる家事・買い物サポートなどがあればいいと思います(40代 女性)
  • 【家事】治療中は体力がなく、買い物が負担。薬の副作用による味覚異常や食欲不振により、料理が苦痛な時も。買い物や食事の準備の際、気軽に使えるサービスがあると良い(40代 女性)
  • 【育児】出産直後の再発で、上にも子どもがいたので、母親(私)の入院時だけでも保育園などに預けたかったが、満員で預けられなかった(30代 女性)
  • 【育児】化学療法中の免疫低下時に、子どもが病気になったときは病児保育の必要性を感じた。投与日に子ども(当時乳幼児)が急病の場合、預かってくれるところがないことで自分が投与可能な状態であっても投与延期となることがある(30代 女性)
  • 【育児】保育園児の子どもの「送迎の部分」だけでもサポートがあれば、ずいぶん楽であった。有償でも、あれば検討していたと思う(40代 男性)
  • 【育児】保育園の子どもの送り迎え。地域には子育て家庭へのサポートのサービスがあったが、半ばボランティア的な仕組みで、利用の理由が周囲に広まると思い、利用できなかった(40代 女性)
  • 【通院】抗がん剤治療の通院などで通院に一緒に付いて来てくれる人がいたらうれしい時がある。通院の行き帰り、ひとりで電車に乗っていて体調が悪くなることがある(20代 女性)
  • 【食事】食べられない、食べたくない時の、献立の提案(30代 女性)
  • 【食事】食生活に気を使っていますが時間的にできないこともあるので、時々でも利用できる、栄養・化学調味料保存料不使用などに配慮した食事の宅配などがあるとうれしい。市販の物は何が使われているかわからないものも多く利用していません(30代 女性)
  • 【メンタルケア】家族に弱音を吐けないので、それを聞いてくれる人。励ましてほしいわけではない。「私はいつまで生きれるのかなあ」とか絶対に口にできないことを口に出したかった(30代 女性)
  • 【外見ケア】外見ケアを個人的にレクチャーしてくれる場所がほしい。抗がん剤による眉毛まつ毛の脱毛、肌の劣化で悩んでいます(50代 女性)

■生活サポートは欲しいけれど、問題は……

しかし、サポートサービス利用の壁は、やはり費用のようです。アンケートでは、サービス利用の壁となるものとして、53%の人が「費用面」と回答しました。通院費や検査費だけでも負担になる上に、罹患後に収入が減少する人も多く、サポートサービスの利用は難しいケースがあるのでしょう。

当事者の事情や気持ちを理解したうえでの利用しやすいサポート制度の充実が望まれます。

アンケート結果の詳細はこちら

治療費と収入減をサポートする新しいがん保険「ダブルエール」

<クレジット>
文/ライフネットジャーナル オンライン 編集部