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「ひきこもり」とは、自分の部屋から一歩も外へ出られない人であるとか、周囲に甘えてなまけている人間であると考えてしまいがちではないでしょうか。それは一部の偏った情報による認識なのだということを知ってもらおうと、自身の体験を生かして「ひきこもり新聞」を編集している一般社団法人全国ひきこもり当事者連合会代表理事の木村ナオヒロさんにお話をうかがいました。

当記事はFMラジオJ-WAVE「JK RADIO TOKYO UNITED」の番組で、世の中をもっと楽しく、グッドにするためのアクションを紹介する『COME TOGETHER』より許可を得て転載しています

■インパクトが強い名前ですが、「ひきこもり新聞」とは?

ひきこもり当事者の声を社会に届けるために設立された一般社団法人全国ひきこもり当事者連合会が、ひきこもり新聞を発行しています。当団体は、ひきこもりに対する偏見をなくし間違った支援方法を正すために設立されました。

一般社団法人全国ひきこもり当事者連合会 代表理事・編集長の木村ナオヒロさん

■ひきこもりという状態について、改めて説明してください。

家族以外との人間関係がなく、就労や就学などのかたちで社会参加していない状態を指します。部屋や家から出られない人ではなく、人間関係が断たれ社会的に孤立している人をひきこもりと呼びます。外出できても人間関係がなく、おおむね家庭にとどまり続ければひきこもりに該当しますので、高齢者や主婦のひきこもりもいるのです。

■木村さんは、なぜ彼らを支援しようと考えたのでしょうか。

自分自身がひきこもり当事者だったんです。司法試験を目指して勉強していたところ、精神科医でひきこもりの第一人者である斎藤環先生からひきこもりだと指摘されました。その後、オープンダイアローグと呼ばれる手法で家族の関係を調整してもらい社会復帰しました。ひきこもりに該当する期間は10年です。

■ひきこもりから抜け出すには、まず何が必要なのでしょう?

本人の自覚と家族の正しい理解が必要です。ひきこもりは、それが短期的ならトラウマの回復や人生を見直すうえで意味があるかもしれませんが、長期になると鬱や不安障害などが現れ精神的な苦痛を伴います。人間関係を失ったことにより精神的に追い詰められ、それを取り戻さない限り、ひきこもったことで生じた苦痛はなくなりません。人との交流自体が薬になるので、斎藤環先生はこれを『人薬(ひとぐすり)』と呼んでいます。

■木村さんが編集長である「ひきこもり新聞」は、どのような内容ですか?

これまで語られることのなかったひきこもり当事者や家族の声に光を当て、ひきこもり当事者や家族が必要とする適切な情報を発信しています。

■周りからは、どんな反応がありますか。

親御さんからは子どもの気持ちが分かってよかったと言われました。また、詐欺まがいの自立支援ビジネスの実態についてマスコミに情報提供し、問題提起のキッカケにもなりました。

■今度、どのような発信をしていきたいと考えますか?

ひきこもりについての正しい理解と人間関係の重要性を伝えていきたいと思っています。なまけているとか犯罪者予備軍だととらえている人がいますが、こうした偏見は、マスコミなどが一部の極端な例をセンセーショナルに取り上げたことが原因でしょう。

しかし、非正規雇用が多いことも一つの原因ではありますが、人間関係を失いやすく孤立しやすい現代社会では、誰でもひきこもりになる可能性があります。他人事としてではなく、社会全体でその問題性と解決方法を考えていく必要があるのです。ひきこもり新聞は、ひきこもりに対する偏見をなくし、ひきこもりを社会につなげるための情報を伝えていこうと思っています。

ひきこもり新聞やその活動については、ぜひウェブサイトをご覧ください。

<インフォメーション>
ひきこもり新聞
●http://www.hikikomori-news.com/