生きていくうちには、きっと悲しいことや辛いことを経験するでしょう。重病にかかり、肉体的にも精神的にも厳しい時を乗り越えなければならないこともあるでしょう。人には、そういうときだからこそ見えてくる美しいものがあり、それによって難しい時を生きていくことができるかもしれません。
その瞬間をカメラのレンズを通して切り取り、多くの人に見てもらおうと「がんフォト*がんストーリー」というウェブサイトを作り、運営している木口マリさんに話をうかがいました。
当記事はFMラジオJ-WAVE「JK RADIO TOKYO UNITED」の番組で、世の中をもっと楽しく、グッドにするためのアクションを紹介する『COME TOGETHER』より許可を得て加筆転載しています
■がんフォト*がんストーリーとは?
投稿型のオンライン写真展です。名前に「がん」と付いているとおり、がん患者さん、その家族や友達、そして医師や看護師などから、写真と、その写真にまつわるエピソードを集めて掲載しています。
■なぜこのようなサイトを作ったのですか?
私自身も38歳のときに子宮頸がんが見つかり、手術と抗がん剤治療を行いましたが、合併症を起こして、治療に1年以上かかってしまいました。そう聞くと、ほとんどの人は「大変だな」「死んでしまうのかな」と考えるでしょう。がんにかかって心身ともに苦しい場面ももちろんありますが、実は逆に「がんになったからこそ、見えてくるもの、感じるもの」もたくさんあります。
人との絆や自然の美しさなどが、はっきり見えるようになる。そう感じている人たちがとても多いということに気づき、それをウェブサイトで紹介していきたいと思ったのです。
■美しい“もの”との出会いを写真で表現しようと思ったのはなぜでしょうか?
私は仕事で写真を撮っていますが、治療中は体力が落ちて、重い一眼レフを持つことができなくなってしまいました。そこで、治療中はずっとiPhoneで撮影していたんです。それなら、寝たままでも、片手さえ動けば写真が撮れます。しかも、今のスマートフォンは本当に性能がよくて、かなりきれいに撮れて楽しい。それで「人は、どんなときでも楽しみを作れるものなんだ」と知ったからなんです。
■ウェブサイトには、どんな写真が集まっていますか?
予想を上回るすてきな作品がたくさん集まっています。いわゆる“お涙ちょうだいもの”はひとつもありません。ある人は、入院中に支えになった「おいっ子ちゃんの写真」を送ってくれたのですが、それが「ウルトラマンなんとかの必殺技で、悪い病気をやっつけてあげる!」というポーズで、「その写真でやられたのは、私。うれしくて涙が出ました」という言葉が添えられていました。
■サイトに何を期待していますか?
ウェブサイトを始める前に、ある病院で同様の作品展を開催しました。その展示を見て「何だか温かい」と言ってくれたひとがいます。きっと、人の本来の強さや温かさなどを感じてくれたんだと思います。そんな感覚が、ウェブサイトでも生まれるだろうと思っています。
■クラウドファンディングに挑戦したそうですね。
写真展イベントを開催するために行いました。「がんフォト*がんストーリー」は、「だれか一人の作品展」ではなく「みんなの作品展」ですから、イベントもみんなの協力で作れたら最高だと考えたのです。57名の支援により、目標以上の金額を集めることができました。それだけでなく、たくさんの人がSNSや口コミで情報を広めてくれたりもしました。そのように、たくさんの人がかかわってくれるということが、とてもすてきだと思うんです。特に、がんにかかった人が「誰かに支えられている」と思えれば、とても力になります。それも伝えていけるといいなと思っています。
イベントは、7月28日(土)に谷中で開催し、写真展だけでなく、ワークショップやチャリティーのグッズ販売なども行います。ぜひ、たくさんの人に来てもらいたいと思います。
■このサイト、取り組みを通して発信していきたいことは?
どんなことでもそうですが、想像と実際は違います。「つらさ」しかないと思えるようなことでも、その中に「輝き」がある場合も実は多い。そんな、「一見しただけでは知り得ない世界」を発信していけたらと思っています。
「がんフォト*がんストーリー」の写真やメッセージ、イベントの情報は、ぜひウェブサイトをご覧ください。
<インフォメーション>
がんフォト*がんストーリー
●http://ganphotostory.wixsite.com/ganphoto