三田村さやかさん(株式会社リタリコ「コノビー」副編集長)

働き方や家族のあり方が、社会の変化と共に少しずつ変わる中、子育てのあり方も徐々に変化しています。男性が外で働き、女性は専業主婦という世帯が減少し、仕事と育児の最適な形を、それぞれの家族で模索しながら、男女とも“頑張って”育児をしている家族が多いのではないでしょうか。

そんな子育て中の方に絶大な支持を受け、共感をもって読まれている子育てメディア「コノビー」では、『本当の「頑張らない育児」』という連載漫画が人気を博し、書籍化することになりました。

ライフネット生命の社内勉強会では、その経緯などについて、「コノビー」副編集長の三田村さやかさんにうかがいました。

■子どもの障害により、親が精神的につらくなる現状

三田村さんは、新卒で人材系ベンチャーに入社し、総務や人事業務を経験した後、障害者支援を主な事業とするLITALICOへ入社しました。同社で人事総務として勤めた後、出産により育休を取得。復帰後まもなく、社内に子育てウェブメディア「コノビー」が立ち上がり、その1か月後にコノビーに異動。三田村さんはもともと本は大好きだったものの、編集やメディアのことは何ひとつ知らないまま、メディアの世界に飛び込むことになったのです。

「子育てに、笑いと発見を」のキャッチフレーズで、さまざまなコンテンツを発信している「コノビー」。月間訪問者数が165万人、ページビューは1,100万の人気サイト

現在、「コノビー」は月間訪問者数が165万人、ページビューは1,100万という大きな子育てメディアに成長しています。そのページのトップで紹介されている記事の多くは漫画なのだそうです。

「LITALICOという会社は、『障害のない社会を作る』をビジョンとしています。もともと仙台で創業し、障害のある方の就職支援や発達障害児向けのソーシャルスキルや学習支援が主な事業です。そういった事業を運営していく中で、『子ども本人だけでなく親の方も精神的につらい』というケースがとても多いこと。親御さんに必要な支援が足りていないのです。何か親御さんのサポートができないかと考え、『コノビー』が立ち上がりました」

■子どもはスーパーで寝転ぶのが自然な姿?

LITALICOの全サービスに共通するコンセプトは、「人はちがう それでいい そこからはじまる」。

例えば、幼稚園や学校で、椅子にじっと座っているのが難しい子どもがいます。「座っていることができない」というと、すべきことができないダメな子のようにとらえられがちですが、そもそも「長時間じっと座れるのが普通」という価値観にとらわれているからそのように見られるだけのこと。長時間座っていられない子どもがいる、という価値観をみんなが持っていれば、座っていられないことは大きな問題ではなくなるでしょう。

「私の息子はいま4歳なのですが、先日もスーパーの床で寝転がられました。そういう経験をされた方、いませんか……?」

会場に尋ねると、10人ほどの挙手がありました。それは、子どもとしては自然な姿だと三田村さんは言います。やりたいことができずに愚図る──それを当たり前と受け取れないから、親たちが息苦しくなってしまいます。

「人はちがう それでいい そこからはじまる」というサービスコンセプトは、子どもに当てはまるのはもちろん、子育てにもあてはまります。それぞれが、違ってよいのです。

■子育てに笑いを提供できるのは「漫画」だった

そんな会社がつくるメディア「コノビー」のコンセプトは、「子育てに、笑いと発見を」。

「多くの人は、余裕がない中で子育てや仕事をしています。笑いがあれば、肩の力が抜けたりリラックスできたりします。お母さんやご家族が楽になるには、笑いがあることが一番よいのではないかと考えました。そんな体験を提供できたらいいなと……」

当初は写真や文字が中心のコラム記事が多かった「コノビー」ですが、子育ての中の「笑い」を追求していくうちに、漫画に力を入れることになっていきました。

「笑いって、どうすれば作れるんだろうと、みんなでお笑いの研究をしたり、落語を見に行ったりもしました。そして出した一つの答えが『漫画』でした。例えば文章で『夜泣きで寝られないのがつらい』と書くと本当につらそうなのに、漫画で描くと『わかる、わかる!』とどこかコミカルになり、つらいことが笑いに変換できるのです。同じ現象を客観的に、視点をずらして見ることができると、ちょっと心の余裕が生まれます」

■笑いと発見につながる企画を!

あるとき、「コノビー」の編集長が編集員に企画を募りました。そこで三田村さんが提出したのが「私らしい子育てってどこにある?『がんばらない』をがんばるママの場合」でした。当初の短い企画書に、三田村さんの想いや、「育児をがんばること」に対するモヤモヤが現れているようです。

「この企画のきっかけになったのは、コノビーで開催していた『コノビーサロン』です。スタートして1年半ほどですが、初産で0歳児を持つお母さんに限定して、4か月のワークショップを通してコミュニティを作っています。そこで、0歳の子育てをしている方のリアルな声や悩みがたくさん聞けたのです」

その声を反映し、ブラッシュアップした2通目の企画書から生まれたのが、『本当の「頑張らない育児」』の漫画連載でした。

もともと「育児は頑張るもの」という考え方が社会に根強くありましたが、それに対してここ2~3年は、「頑張らない育児」という考え方が、頑張りすぎるお母さんに向けて広まってきました。

ところが今度はさらに、「『頑張らない育児』を頑張る」という現象が起きている、と三田村さんは考えました。

もともと「コノビー」で漫画記事を描いていたやまもとりえさんを作者として、「コノビー」では前例のなかった長期連載を計画。それは、書籍化を見据えてのことでした。

連載1本目は、1日経たないうちに10万PVを記録。大ヒットとなる連載がスタートしたのです。

(つづく)

<プロフィール>
三田村さやか(みたむら・さやか)
株式会社LITALICO。”子育てに笑いと発見を”をコンセプトにした子育てメディア「コノビー」副編集長。連載累計500万PVとなった「本当の頑張らない育児」企画・担当編集。好きを応援する編集者/居場所をつくるワークショップデザイナー/ウルトラマン好きな4歳息子の母。好きな場所は本屋と図書館。年間読書300冊の本好き人間。
●株式会社LITALICO
●コノビー

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
文/栃尾江美
撮影/横田達也

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