HELP YOUメンバー集合写真。中央が森勝宣さん

在宅でインターネットを活用し、リアル業務のサポートを行う──。オンラインアシスタントと呼ばれる新しい働き方「HELP YOU」を提供しているのが2017年に設立した株式会社knit(ニット)です。「ニットを編むように人と人、社会と社会をつなげていけたら」という社名の由来そのままに、人材不足に悩む企業と在宅で働きたい人とをマッチングし、社会的課題の解消に貢献しています。

今回はマーケティング全般を担当している森勝宣さんに、「多様な人材×多様な働き方×経営側のニーズ」を推進するベンチャー企業の成り立ちや現状、目指すところをお聞きしました。

■多様な働き方ができる会社

──まず森さんがニットに参加したきっかけを聞かせてください。

森:以前はマーケティングリサーチの会社で営業を担当していました。楽しい会社でしたが、学生時代にインターンでウェブマーケティングを手掛けていたこともあり、改めてマーケティングをちゃんとやりたいと思ったときに紹介されたのがニットです。社員は8人だけですが、人事は国内外問わず各地を転々としているし、奈良や鳥取に住んでいる人もいる。東京のオフィスにいる5人も全員が毎日出社しているわけではありません。

──ニット自体が多様な働き方をしている会社なんですね。

森:そうなんです。社長の秋沢(崇夫)は、今後自分でなにかしたいと思い、前職を退職後、先輩からのアドバイスを受け、アメリカ横断旅行をしました。その旅の途中で知人に頼まれた仕事をしているとき、リモートでも普通に仕事ができることに感動を覚えたそうです。こんな風に場所や時間、状況にとらわれずに働けることが当たり前になる世の中を創っていきたい、という思いがHELP YOUにつながりました。

HELP YOUでは、オンラインのワーカーをたくさん抱え、その人たちの能力を企業に提供しています。「未来を自分で選択できる社会を作る」というビジョンのもと、これからさらに進んでいくであろう働き方改革やフリーランスなど、働き方が選べる時代にマッチしていると思ったのが、僕が参加した動機です。

──HELP YOUの仕事の受注状況はいかがですか。

森:ありがたいことに仕事の問い合わせの方が上回っています。課題はオンラインのワーカー集めとリソースをうまく配分すること。オンラインアシスタントサービス自体は市場ではそう知られていませんが、ここ1年ぐらいでかなり認知度が上がりました。リモートワーカーやフリーランスも増えています。仕事を外に発注できる環境が整ってきたことで、弊社のサービスも伸びてきたように思います。 

──ライフネット生命でも複業をしているメンバーが複数人います。そうした会社が増えているのも影響しているのかもしれないですね。

■チーム制で業務にあたる

──いまHELP YOUにはどのぐらいの方が登録されていますか。 

森:累計で約400人です。アクティブに動いている人は約200人。女性が9割でほとんどが主婦の方です。HELP YOUのコンセプトが、子育てや介護中の方、地方にいる方など、何らかの事情で通勤できない方に仕事を提供することなので、女性が多いのは想定通りでしたが、意外だったのが、海外在住者が多いこと。全体の1割が海外にお住まいで、しかもイランやクウェート、ペルー、フィンランドやスウェーデンといったメジャーどころではない国が目立つんですよ。

──国内はどの地域が多いんでしょう。傾向はありますか。

森:東京在住者が全体の3割、地方が6割という構成です。なぜか北海道や東北、北陸、長野など雪がよく降る地域の方が多い(笑)。

──HELP YOUはチームを編成して業務にあたっているとお聞きしました。 

森:ええ。1チームは約20~30人。マネージャーの下にディレクターがいて、チームメンバーがいます。マネージャーはチームビルディング(チームやメンバー育成や満足度調査)を行います。ディレクターは業務内容のヒアリングを行い進捗管理や品質管理をはじめ、案件に応じてチームメンバーに仕事を割り振ります。仕事のやりとりはスカイプなどを使ってすべてオンライン上で行います。チームで業務を行っていくことで業務に関するノウハウが蓄積され、更なる業務の効率化にもつながっています。

──それはすごいですね。ディレクターとチームメンバーは顔を合わせる機会はない?

森:たまにリアルのオフ会をやることもあります。そこでお互い「はじめまして」になるわけです(笑)。今日の午前中もリアル会をやっていました。やはりいったん顔合わせをすると、オンラインとはいえその後のコミュニケーションが円滑になりますね。 

──わかります。ライフネット生命はオンラインの生命保険会社ですが、お客さまを招いたイベントを3か月に一度やっています。ネットだからこそ、こうしたリアルの接点はお客さまには好評ですね。

■幅広い業務に対応し顧客の負担を減らす

──メンバーのスキルを上げるためにニットとして何か取り組んでいることはありますか。

森:リモートワーク勤務は通常の仕事と違うので、スキルアップのための研修は随時行われています。ただ、スキルはもちろんですが、一番大事なのはクライアントの意思をくみとり、相手のことを考え、コミュニケーションを取りながら仕事ができることです。リモートワークを通して自分の暮らしと仕事のシナジーを実現したい方、成長意欲の高い方と一緒に働きたいと思っています。

──HELP YOUを採用する企業はどういった業種が多いでしょうか。

森:人手が足りない50人以下の規模の会社が中心です。社長が経理も営業も担当している個人事業主もいますね。スタートアップはもちろんですが、誰もが知っているような有名な企業からの問い合わせも増えてきました。依頼内容で多いのは、SNSやメディアの運用、あとは経理部門などのバックオフィス系でしょうか。資料作成、提案書作成などの営業サポートの依頼も多いです。

──ずいぶんと幅広く対応されているんですね。

森:対応できる業務範囲が広いのもHELP YOUの「売り」です(笑)。マーケティングや経理のアウトソーシングを一社でまかなうことができれば、コミュニケーションコストが減りますからね。

──クラウドソーシングとの違いを教えてください。

森:定型化されていない業務に対応できるのは、クラウドソーシングと異なる点です。ただし、メンバーは専属でフルタイムに仕事をしているわけではないので、即対応が求められる仕事は難しい。依頼から2、3営業日の余裕をいただける仕事とか、プロジェクトのようにスケジューリングしている仕事の方がパフォーマンスが発揮しやすいんです。定期的に業務が発生するものだと対応しやすいですね。

そして何より、HELP YOUというサービスを通じて実現したいのは、”個人の時間の使い方を変える”ということです。オンラインアシスタントサービスを活用することで、社員一人一人の働き方、時間の使い方が変わり、自分のしたい生き方を実現することができればと思います。
HELP YOUを導入することで社員にとってプラスになる、一種の福利厚生のようなサービスになればいいと個人的に思っています。

──依頼主とオンラインアシスタントがいっしょに仕事を作り上げていく。そんな柔軟性があることがよくわかりました。今日はありがとうございました。

<プロフィール>
森 勝宣(もり・かつよし)
1992年生まれ。兵庫県出身。甲陽学院高等学校を卒業。上京し、早稲田大学政治経済学部に入学。学生時代にIT×教育領域のベンチャー企業で約3年間インターンを経験。メルマガやSNSの運用を行うメディアチームや自社サイト最適化業務を担当。その他インターン生のメンター制度設計やインターン採用を経験。新卒でマーケティングリサーチ会社に入社。法人営業を中心に、リサーチ案件のディレクター、新卒採用、大手広告代理店とのアライアンス締結及び新規サービス企画、カスタマーサクセスなどを経験。
現在、株式会社knitにて、ウェブマーケティング全般を担当。

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部