リカ・デリシャスさん(スーパーオーガニックHD株式会社CEO、国際NGO 一般社団法人OASISBANK 代表理事、世界有機農業アジア連盟元日本代表理事)

建築デザインの世界からオーガニックのビジネスへ。出産・育児をきっかけに安心安全な食べ物を求めて北海道に移住をしたリカ・デリシャスさんは、国内在住の外国人向けに野菜販売をスタートし、スーパーオーガニックHD株式会社を立ち上げました。オーガニックを軸にさまざまな事業を運営し、世界有機農業アジア連盟(IFOAM ASIA)の日本代表理事としても東奔西走したリカさんの起業ストーリーが続きます。

■「オーガニックを選ぶのは社会責任」という考え方のイギリス

──リカさんは2010年にスーパーオーガニックHD株式会社を創業されました。社名の由来を教えてください。

リカ・デリシャス(以下リカ):一般的な「オーガニック」よりさらに上を追求しているので、「ビヨンド」とか「スーパー」をつけようと思ったんですが、わかりやすいほうがいいと思って「スーパー」にしました。

学術的な話でいうと、いまの日本のオーガニックの基準である有機JASの制度では、非オーガニックの堆肥も使用していいことになっていますが、本気でエシカルやオーガニックを追求するなら、家畜の食べる飼料がどこから来ているのかにも着目する必要があります。その点、私たちが扱っている野菜の農家は川上がきっちりしていて、非オーガニックの家畜から出た堆肥は一切使用していない。それが有機JASとの違いですね。

──だから「スーパー」なんですね。日本のオーガニックの市場規模は欧米と比べて小さいですか?

リカ:日本にもマーケットはあるとは思いますが、美容のために食事にこだわるという人と、食事でがんやアトピーを予防したいという人のマーケットが分かれています。そこが融合して大きなうねりになると循環式ライフスタイルとしてのマーケットが成立してくると思いますね。イギリスではオーガニックを選ぶことが社会責任だと思っている人が多いです。

──美しくなれると思ってオーガニック食品を選んでいるわけではない?

リカ:入り方が逆なんです。私たちがもし容器にプラスチックを使っていたら、それはオーガニックではないので応援できないと言われるはず。ヴィーガンが欧米で増えているのも、それが社会責任だととらえられているからです。

■エンタメ性にあふれたオーガニックを伝える

──スーパーオーガニックHD株式会社の事業は多岐にわたっています。

リカ:大きく分けて3つの事業部があります。1つ目は、オーガニック野菜を軸にしたフード事業。企業向けにオンラインで販売している弁当事業の「BENTONIPPON」もここに入ります。2つ目が、4歳から8歳の子どもを対象とするフリースクール事業(SuperOrganicSchool)。学童の代わりに、英語で食育と数学と農育を学んでもらうスクールです。3つ目がジャーナル(SuperOrganicJournal)ですね。日本は情報が少ないので、ロンドンに拠点を置いている友人に情報を出してもらい、それを記事化して英語と一部日本語でまとめ、提携先や取引先の関連ショップに置いています。

スーパーオーガニック ウェブサイトより。スーパーオーガニックな食材でつくられた鮮やかでヘルシーな弁当は、ウェルネスフードアワード(2018)を受賞

──軸はフード事業ですか?

リカ:宅配をメインにしていますが、モノを売るのが目的ではないんです。近い将来、地球の反対や宇宙に旅立っていく人たちがスーパーオーガニックという考え方のもとに適正な選択ができるようにしていきたい。そのために、とっかかりが楽しくて誰でも参加しやすくて敷居が低くて、エンタメ性にあふれたオーガニックを伝えています。

イベントでスーパーオーガニックのコンセプトを伝えるために考案した「野菜人間」というキャラクター。キャッチーで可愛らしい姿が目をひいた。

──エンタメ性のあるオーガニックっていいですね。

リカ:「コドモマルシェ」がそうですね。スクールでは午後2時から6時まで英語で数学と食育を学び、違う農家から旬の野菜をもらって、英語を使いながら料理をしてみなで食べていますが、応用編では埼玉県小川町にある教育農家に行って、カモミールの種植えからハーブティーにしたり、味噌作りなども体験しています。そして、収穫した野菜は週末に都心で子どもたち自身が販売する。それが「コドモマルシェ」です。

──生産から販売までを一貫して子どもたちに体験してもらうんですね。

リカ:ええ。10歳までに、種植えから収穫、商品化、販売までを経験し、収益の一部をオーガニック農家に還元していく循環を学んでもらいたい。子どもたちが主役で、私たちはあくまで黒子です。

スーパーオーガニック ウェブサイトより。英語と数学と食育を学ぶ「SuperOrganicSchool」

■ゆるやかな成長が見込めるオーガニックは投資家向き!?

──2016年には「OASISBANK」を立ち上げられました。

リカ:バンクという名前ですが、銀行業をやるのではなく、支援金を集めて必要な場所に必要な量、エネルギーを投下していくという意味でのネーミングです。世界有機農業アジア連盟(IFOAM ASIA)日本代表理事に就任したときに、IFOAMと国連の方々にこういうアイデアで推進していくのはどうかとプレゼンしたのがきっかけで生まれた非営利組織です。国連みたいに一つの手法を決めて各国に落としていくやり方よりも、国を超えたメンバーシップを通して活動を支援するお金の流れを作った方がいいと考えたんです。

世界有機農業アジア連盟(IFOAM ASIA)と木更津市との有機農業推進のための調印式

左から、IFOAM ASIA代表理事Dr. Zejiang Zhouさん、小泉進次郎さん、リカさん、一般社団法人エシカル推進協議会発起人メンバー坂口真生さん

──具体的な活動としてはどのようなものですか?

リカ:「1%オーガニック」といって、弊社のような会社や企業理念に賛同する企業が自分たちの部署やプロジェクトの売上の1%を、オーガニック農家をやりたい人や維持したい人、成長させたい人など投資が必要なところに無担保で寄付する制度です。大手の銀行と組んで資金を運用していく形を取ろうと考えています。

「1%オーガニック」プロジェクト

──CSRに熱心な企業が増えています。興味を持つところも多いのでは?

リカ:CSR部とか未来創造部といった部署、昔で言うメセナ的な機能を果たしている部署にいる有能な役員候補の人たちからよく問い合わせをいただきます。日本では有能な若いスタッフの方は残念ながら決裁権を持っていないことが多いのですが(笑)。ただ、「1%オーガニック」というコンセプトにはすごく興味を持っていただいています。

──日本の投資家の反応はいかがですか?

リカ:オーガニックには興味がないですね。エコファンドやサスティナブルビジネスへの投資は流行っていますが、土臭いところは敬遠されている気がします(笑)。ただ、変化は感じます。オーガニックの面白い点は、いったん理念に共鳴してファンになると、顧客離れがない。ゆるやかな成長が望めるので本来は投資家向きですし、その点は銀行や協力者に向けての発信すべき核になると思います。

──今後のご計画について教えてください。

リカ:ぜひともやりたいと思っているのが、1年間に自分たちが食べる分の野菜の収穫を農家や農園に委託するサービスです。「エアファーム」といえばいいのかな。月額2、3万円の運用費用を払えば、オーガニック野菜が手に入るビジネスは手掛けてみたいですね。

──女性に人気がある「エアクローゼット」の野菜版ですね。

リカ:そうそう(笑)。女性は子育てもするけれど仕事もするので、左脳と右脳がつながっている。循環しているから共感しあえるんです。でも、男性は分けて考える傾向があるから、オーガニックやサスティナブルな分野は苦手な人が多いですね。女性がさらに活躍できる時代が来ればCSRにもオーガニックが浸透してくると思いますし、男性も女性的な志向をもった人が増えているので、これからが楽しみですね。

 

<プロフィール>
リカ・デリシャス
1974年生まれ。高校からアメリカに留学。建築デザインとコンテンポラリーアートを専攻。NYの建築デザイン会社を経て帰国後、コンテンポラリー建築デザインのディレクションとマネジメントに従事。出産・育児を機に、2010年に北海道に移住し、スーパーオーガニックHD株式会社を創業。2015年には世界有機農業アジア連盟(IFOAM ASIA)の日本代表として、女性としては初めて理事に就任。多方面にわたる創造的アプローチでオーガニックのニュースタンダードを仕掛けている。

<クレジット>
文/三田村蕗子
撮影/村上悦子

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