※2018年08月29日「ライフネット生命保険 社員ブログ」より

こんにちは、数理部の岸本です。

今日は、「リスク」についてあまり知られていない、意外な考え方についてご紹介したいと思います。

リスク管理においては、あらゆる可能性を考えて、その可能性に備えるというのは難しいことがあります。 「絶対に大丈夫」といえる状況を目指して、ほとんど起こりえないようなことにも対策を立てるということは現実的でないこともあります。

そこで、「100年に1回しか起こらないこと(確率1パーセントの事象)」は無視して、残りの99パーセントの可能性に対して備えるという考え方があります。 (場合によっては95パーセントだったり、99.5パーセントだったりすることもあります。) 

「100年に1回起こること」と聞いて、どういうイメージを持たれるでしょうか。 「ほとんど起こらないから気にしない」という人もいれば、「滅多に起こらないかもしれないけど、頭の片隅においておいた方がいい」という慎重(?)な人もいると思います。

「100年に1回起こること」という言い方は、「1年以内に起こる確率は 1パーセント」という意味で使われています。

この場合、3年以内に起こる確率は、ほぼ 3パーセントです。 さらに10年以内なら10倍の10パーセント、といいたいところですが、ちゃんと計算すると 9.6パーセントになります。

では、100年に1回起こることが、100年以内に起こる確率はいくらでしょうか?

こう言うと、「当然100パーセントでしょ」となりそうですが、そもそも「100年に1回起こる」という言い方が良くないかもしれません。 「1年以内に起こる確率は 1パーセント」という意味で言っているのであれば、「1年以内に起こる確率が100分の1の出来事が、100年以内に起こる確率はいくらでしょうか?」と言い換えられます。

この場合、実は答えは100パーセントではなく、63.4パーセントになります。(数学得意な人向けに付け加えると、ほぼ、1-1/e になります。)

リスク管理の現場では、私たちもついつい「100年に1回」という表現をしてしまいます。 これが、「100年に1回必ず起こる」と誤解させてしまうかもしれないですし、逆に「100年」という長さが、「ほとんど起こらない」とイメージさせる原因になっているかもしれません。

「10年間で10パーセント近い確率で起こる」といえば、「結構起こりそう」と思う方もいるかもしれません。 「どこまでのリスクに備えるか」というのは、状況にもよりますし、とても難しい判断ではありますが、言葉の印象に左右されずに、冷静に判断できるようになりたいものです。