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学校生活や社会生活に大きな影響を与えるインフルエンザ。1日も早く治したいものですが、治療はどうすればよいでしょうか。また、インフルエンザになる前に予防するには、どうすればよいでしょうか。
前編「【医師が解説】インフルエンザ検査って何をするの? 再検査は必須?」はこちら

当記事はMEDLEYニュース(2017年2月15日配信)より許可を得て2回にわたり転載しています

■インフルエンザの治療はどうしたら良いのか?

インフルエンザには治療薬があります。以下がインフルエンザに用いられる主な治療薬です。

  • オセルタミビルリン酸塩(タミフル®)
  • ザナミビル水和物(リレンザ®)
  • ペラミビル水和物(ラピアクタ®)
  • ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(イナビル®)
  • バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ®)

これ以外にもアマンタジン塩酸塩(シンメトレル®)という薬がありますが、インフルエンザB型に効果がないことと耐性のインフルエンザウイルスが増えているので、実用性は低いと考えられます。

●インフルエンザの治療薬は特効薬なのか?

インフルエンザになった時、薬を飲んだら直ちに良くなったという経験をした方はいるでしょうか。実は抗インフルエンザ薬を飲んでもそういった即効性は期待できません。なぜならタミフルなどの治療薬にそういった特効薬的な力はないからです。

「でも、このあいだインフルエンザになって薬を飲んだらすぐ治ったけど」と思う方がいるかもしれませんが、インフルエンザは放っておいても数日で治ります。

インフルエンザの治療薬の力はせいぜい症状のある期間を1日程度短くするくらいです。もちろん重症になるのを防ぐ効果は決して小さくありませんが、そもそもたいていの人でインフルエンザは重症になりません。そのため、高齢者や持病のある人のような重症になりやすい人以外では抗インフルエンザ薬は要らないのではないかという意見もあるくらいです。

抗インフルエンザ薬はタミフルもほかの薬も同程度の効果しかありません。抗インフルエンザ薬は特効薬と考えるのは難しいです。また、症状が出てから48時間以内に使わないと効果に乏しいことも分かっていますので注意してください。

●インフルエンザの治療薬に副作用はあるのか?

抗インフルエンザ薬の副作用も無視できません。タミフルを用いて治療した人のデータでは、タミフルを飲むことで確かに症状は1日程度早く消えていますが、吐き気が1.6倍に、嘔吐は2.4倍に増えたという結果でした。

また、抗インフルエンザ薬を使用した人が異常行動を起こした例も報告されています。突然興奮状態になったり、飛び降りようとしたりすることが実際にあったようですが、これは薬のせいなのかインフルエンザの脳への影響のせいなのかは現段階で定かではありません。いずれにせよ、薬を飲んだか飲まないかにかかわらず、インフルエンザでは異常行動が出ることに注意するべきです。

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少なくとも抗インフルエンザ薬の副作用として吐き気や嘔吐があるのは事実です。効果が出ないで副作用だけが出るといった事態を防ぐために、不必要な薬の使用は避けなくてはなりません。

●インフルエンザに漢方薬は効くのか?

インフルエンザにかかった場合に漢方薬が効くといった話を聞いたことがある方もいるかもしれません。実は麻黄湯(マオウトウ)という漢方薬がインフルエンザに有効であるといった報告があります。ここではタミフルよりも麻黄湯の方が発熱期間を短くする効果があったとされています。インフルエンザに麻黄湯を使用するのも一つの手段になります。

しかし、麻黄湯にも副作用があります。主な副作用は以下になります。

  • 吐き気
  • 食欲低下
  • 発疹
  • 動悸
  • 発汗過多

副作用によってさらに衰弱してしまうことも考えられますので、これらの症状を感じたらすぐに飲むのをやめて医師や薬剤師に相談してください。

■インフルエンザの感染力はどの程度か

感染症は周囲に伝染します。伝染力は病気ごとに異なります。例えば、HIV感染症は日常生活で手を触れた程度でうつることはまずありませんが、麻疹(はしか)は感染力が強いため患者が近くにいるだけで周囲に伝染します。

感染症において周囲への伝染力の強さを数字化したものに基本再生産数と言うものがあります。基本再生産数は1人の感染者が現れた場合に、周囲の何人に感染をうつすかを表したものです。主な感染症の基本再生産数は以下になります。

【感染症ごとの基本再生産数】

感染症 基本再生産数
インフルエンザ 2-3
百日咳 16-21
麻疹 16-21
風疹 7-9
水ぼうそう(水痘) 8-10
おたふく風邪(ムンプス) 11-14

インフルエンザの基本再生産数は2-3ですので、1人が感染すると周囲の2-3人に感染をうつすという計算になります。

ここで基本再生産数を3と仮定してみましょう。1人がインフルエンザにかかると3人にうつします。するとその3人が3人にうつして9人になりといったように、3倍3倍で感染者が増えていきます。しかし、もし周囲の人がワクチンを打っていればインフルエンザをうつされる人の数は減ります。後ほど詳しく説明しますが、ワクチンは自分が感染しない意味もありますが感染を広めないという意味でも重要です。

また、インフルエンザの症状が出てから3-7日間程度は体外にウイルスが排出されていると考えられています。そのため、学校保健安全法では出席停止期間を「症状が出てから5日」かつ「解熱から2日(幼児は3日)」としています。しかし、インフルエンザウイルスが盛んに排出されるのは症状が出てから24-48時間程度がピークとされていますので、そうした状況を鑑みて学校保健安全法の登校禁止期間は定められています。

■インフルエンザにはワクチン(予防接種)がある

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インフルエンザにはワクチンがあります。ワクチンを打てばインフルエンザ対策は万全なのでしょうか?ワクチンを打ってしまえばインフルエンザにはかからないと期待してしまいがちですが、必ずしも安心とは言い切れません。

●インフルエンザワクチンを打てばかからない?

麻疹のワクチンは感染をほとんど予防できますが、インフルエンザワクチンは残念ながら万全ではありません。インフルエンザワクチンを打ってもインフルエンザにかかることはあります。

2015年度からインフルエンザワクチンは4価ワクチンになりました。4価ワクチンとは多くの種類があるインフルエンザウイルスの中でも最も流行りそうな4種類のウイルスの型が含まれているということです。WHO(世界保健機構)が世界各国の感染状況の情報を集めて、流行を予測して決め手となりそうな4つの種類を決めています。

子どもではワクチンを打つと20-50%程度インフルエンザにかかりにくくなると言われており、18-64歳の大人では70%程度、65歳以上で34-55%程度インフルエンザにかかりにくくなると考えられています。また、ワクチンの最大の効果は重症化を防ぐことと考えられています。特に高齢者や免疫不全患者や心臓・呼吸器に持病のある人、子どもはワクチンを打って重症化を予防するべきです。

●なぜワクチンを打ってもインフルエンザにかかる?

インフルエンザワクチンはインフルエンザの持っている情報(ここでは抗原)を免疫細胞に覚えさせることを行っています。抗原の情報を覚えた免疫細胞は、次に同じ抗原が入ってきてもそれに対する効果的な対策が取れるようになります。この流れのことを抗体獲得といいます。

しかし、インフルエンザウイルスは非常に変異するスピードが早いことが分かっています。つまり、ウイルスは自分を常に変化させており、ウイルスの抗原を決定するタンパク質を支配する遺伝子を変化させながら生きています。この遺伝子が大きく変わる場合を不連続抗原変異(antigenic shift)といい、小さな変化を連続抗原変異(antigenic drift)といいます。

インフルエンザワクチンはインフルエンザの抗原情報を免疫細胞に覚えさせるのですが、ウイルスはこれを回避するかのように抗原を変化させているのです。いわばワクチンとウイルスのいたちごっこが起こっているのです。

●インフルエンザワクチンは自分だけのためではない? 集団免疫とは?

インフルエンザワクチンを打つと、インフルエンザにかかりにくくなり、インフルエンザにかかっても重症になりにくくなります。実はこれ以外にもインフルエンザワクチンの重要な価値があります。

それは集団免疫と呼ばれる効果です。これは多くの人がワクチンによるインフルエンザに対する免疫を持つことで、周囲にうつさないようにすることです。

(MEDLEYサイトより)

つまり、社会全体で感染する人を減らす効果があり、特に高齢者などの免疫の落ちている人をインフルエンザから守ってあげる効果があります。

■インフルエンザにかからないようにしたい人のために

だれでもインフルエンザにかかりたくはありません。高熱や関節痛と言った症状は非常につらいものです。ここではいかにインフルエンザにかからないようにするかを説明していきます。

●インフルエンザは流行期以外にはかからない?

インフルエンザの流行期は12月から翌年の2月であることが多いです。しかし、この時期以外にもインフルエンザにかかることはあります。沖縄では夏でもしばしばインフルエンザが流行します。ほかの都道府県でも季節外れの流行はときどき現れます。現在日本全土で簡単に行き来できる交通網がありますので、いつどこでインフルエンザの季節外れの流行が起こってもおかしくありません。

●どうすればインフルエンザにかからない?

インフルエンザを予防するおすすめの方法を挙げます。

  • 手洗い
  • うがい
  • マスク
  • インフルエンザワクチン

手洗い・うがいは習慣にするといいでしょう。マスクも流行を広げないために役立ちます。特にインフルエンザが流行する兆しが見えたら、これらを徹底することが重要です。

インフルエンザワクチンは毎年打つことをおすすめします。自分自身を守る意味でも社会全体を守る意味でもワクチンをみなで打つという考え方が大切です。

■おわりに

インフルエンザウイルス感染に限らず、どんな病気においても正しい知識を持つことは大事です。病気の正しい情報を知らないまま想像だけで対策を考えたところで、生活の幅が狭くなることはあっても、効果を期待できるとは言えません。現代の医療は進歩しており、病気の知識(原因、感染性、治療法、予防法など)について分かっていることも多いです。ぜひ病気の正しい知識を知っておくようにしてください。

とはいえ、インターネットや書籍、テレビ、新聞などの中には、残念ながら不適切な医療情報も多く存在しています。その中から正しい情報だけを抜粋することは簡単ではありません。つまり、正しい知識を得ようと情報を探しても、どれが正しい知識なのかなかなか見分けがつかないというジレンマがあるのです。

そこでメドレー社では、「病気のことならメドレー」と思って使ってもらえるよう、より正しい情報を分かりやすく発信していくことに尽力しています。メドレー社の情報を読むことがみなさんにとっての安心になるようにこれからも創意工夫してまいります。

<クレジット>
文/園田唯(MEDLEY)