好きなことで、生きていく――。そんな広告をYouTubeが展開したのは2014年のこと。それから約5年。フリーランスの人口は増え続け、副業としてフリーで働いている人も含めると、1000万人を超えたという試算もあります

ランサーズ「フリーランス実態調査 2018年版」

日本は国の「国民皆保険」制度によって、すべての人が、病気や怪我の治療のほか、さまざまな形で健康に関する支援を受けられる「健康保険」に加入しています。「健康保険」には職種などによってさまざまな形がありますが、企業に勤める方は、企業や同業者組合が独自につくる健康保険組合や、地域ごとの社会保険協会の健康保険に加入しており、いずれも企業が、社員やその家族の健康を守る「健康保険」の保険料を本人と折半する形で負担してきました。加入や保険料・補助の支払いなどの諸手続きは、会社が行なってくれます。

しかし、副業の容認がますます広がり、会社に依存しない働き方が当たり前のものになっていくと、個人で健康保険に加入したり各種手続きをしたりすることも増えていくと予想されます。

■「フリーランス=国保」とは限らない

健康保険のなかで、もっとも広く知られている保険は、自営業者や年金受給者などが加入する「国民健康保険」(国保)でしょう。こちらは、いざ自分で保険料を支払ってみると、その負担額の大きさに驚く人も少なくありません。

しかも、保険料は前年の年収をもとに算出されるため、ある年は稼げたけど次の年はいまいちだった、なんていうことになると、この健康保険料によって家計がかなり圧迫されます。“フリーランスあるある”ですね。

こうしたピンチはフリーランスにはつきもの……ではあるのですが、実はフリーランスが加入できる健康保険は、国保だけではありません。それ以外に、「健康保険組合」(健保)という選択肢もあるのです。

■最大のメリットは保険料が所得額に左右されないこと

その代表的なものの一つが、「文芸美術国民健康保険組合」(文芸美術国保)です。これは文芸や美術、著作活動に従事している人とその家族が加入できる健保です。

原則として、組合加盟団体の加入者である必要があるのですが、そのカバーする職業の範囲が、かなり広いことでも知られています。

編集者やライター、作家はもちろん、画家、イラストレーター、カメラマン、さらには演劇・映画・放送人、そしてウェブデザイナーやYouTuberまで加入できるのです。

なぜ、「文芸」「美術」と名が付く保険組合に、YouTuberのようなウェブクリエイターが加入できるのか? それは2013年末に設立された「日本ネットクリエイター協会」も、この文芸美術国保に加盟しているからです。

この文芸美術国保の最大のメリットは、所得の大小にかかわらず保険料が一律であること。2018年度は組合員が月額1万9,600円、家族が1人あたり月1万300円となっています。(満40歳から64歳までの被保険者は介護保険料負担もあり。)事業が順調になると、国保でもこのぐらいの金額をあっさり超えてくることがあるので、検討する価値は十分にあるといえます。

ただし、これは特にウェブクリエイターの方に該当するのですが、各加盟団体に所属できたとしても、この文芸美術国保に加入できるとは限りません。

というのも、審査の過程で直近の確定申告の職業欄に何と記入しているかが重要になるからです。たとえばウェブデザイナーの方でも、確定申告の際に、「ソフトウェア・IT・WEB関連業」(国税庁の確定申告のサイトで申告しようとすると、この選択肢が出てきます)などと記入していると、審査が通りません。

これと同じことはシステム関連の事業に従事するプログラマーや、アフィリエイト収入が主であるブロガーなどにも言えるようです。つまり、重要なのは仕事がウェブ関連であるかどうかではなく、「文芸」や「美術」関連で収入を得ていると証明できなければならないということです。

アフィリエイト収入が主である場合は、原稿料ではなく広告収入が収入源であるため、「文芸」の従事者とはみなされない、ということのようです。さらにYouTuberの方でも加入できた方はいるのですが、審査がスムーズに通るとは限らないため、税理士などのプロフェッショナルに相談したほうが確実です。

つまり、ウェブクリエイターは新しい職業であるため、同じような仕事をしていても、加入できたり、できなかったりすることがあります。まずは文芸美術国保の加盟団体に登録する前に、自分の加入資格について確認したほうがいいでしょう。

■少子高齢化で保険料の値上げを検討するところも

このほかにも、健保にはさまざまなものがあります。たとえば、「東京芸能人国民健康保険組合」も、そのひとつです。

文芸美術国保とカバーする職業がやや似ているのですが、こちらは主に芸能関係の「実演家」を対象としています。それに加え、照明、カメラ、舞台美術などの関係者も加入可能。実演家とその周辺の職業人を対象にした健康保険組合と言えそうです。

保険料は一律ではなく、収入に応じて月額1,000円~30,000円と変動します。東京のほかにも、「大阪文化芸能国民健康保険組合」「京都芸術家国民健康保険組合」があり、いずれも保険料は変動式で、加盟団体に所属している人か、所定の審査を経た人が加入できます。

また、保険料の安さで圧倒的なのは、「大阪府整容国民健康保険組合」です。大阪府内の個人経営の理美容室の経営者、及び従業員を対象にしており、月額なんと1万3,500円(店主)と1万500円(従業員)。(満40歳以上の被保険者は介護保険料負担もあり。)

さらに出産一時金や交通事故の医療費の立て替えといった制度もあり、多方面から理美容室の経営者や従業員をサポートする健保となっています。

ほかにも、税理士や弁護士が加入できる保険組合や、食料を扱う小売店の事業者を対象にした保険組合など、職業を限定したものまで含めれば、多くの健保が日本にはあります。

しかし、どの健保にもいえることですが、少子高齢化の影響を受け、保険料の値上げを検討しているところが少なくありません。実際、文芸美術国保は2017年4月から、月額2,400円の値上げを行いました。今後もさまざまな健保での保険料の値上げが予想されます。こうした点も、加入を検討する際に注意が必要です。

いずれにせよ、「フリーランス=国保」と安易に考えずに、自分がこうした健保を利用できないか、利用するメリットはあるか、しっかり把握しておくことが、フリーランス化が進む時代においては大切なことであるといえるでしょう。

※2019年3月1日時点の情報です

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文/ライフネットジャーナル オンライン編集部