「LGBT & Friends Working Together!」というメッセージを、シンプルに力強く伝えるデザインのPOP(特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ ウェブサイトより)

G7加盟国の中で、唯一、同性パートナーの法的保障がない国をご存じですか? 実は日本なんです。 LGBT当事者は家庭環境だけでなく教育現場、職場、そして老後の生活に至るまで、人生のさまざまな場面で困難を強いられている現状があります。

自分らしく生きたい、希望する職業に就きたい──そんなLGBTの悩みに寄り添うNPO法人『虹色ダイバーシティ』は、国際基督教大学ジェンダー研究センターと共同で、LGBTの労働環境改善のためのアンケート調査を実施しました。

この調査から見えてくる、LGBTが職場で直面している問題、そして非当事者との認識のすれ違いとは?

この記事は、特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティより許可を得て、同団体の「niji VOICE 2018」「LGBTも働きやすい職場づくりのための企業アンケート」のデータを元に構成しています。

■LGBTは安心して働けているのか?

『LGBTと職場環境に関するWebアンケート調査 niji VOICE 2018』では2,262人の参加者から、LGBTを取り巻く職場環境の実態についての質問に対する回答が得られました。

まず、「性的マイノリティもいきいきと働ける職場だと思いますか?」という質問に対しては、LGB他で44.9%、Tで46.1%の当事者が、「いきいき働けるとは思えない」と回答しました。一方、非当事者(CisH)は38.4%が「LGBTでもいきいき働けると思う」と回答しており、性的マイノリティが職場で抱えている悩みや問題を、周囲の非当事者と共有できていない状況になっているようです。

niji VOICE 2018 報告書(©︎特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター 2018)

では、具体的にどのような施策をLGBTは望んでいるのでしょうか。「職場に欲しいLGBT施策は?」という質問に対して、LGB他・Tのどちらでも多かったのは「福利厚生での同性パートナーの配偶者扱い」、特にTで多かったのは「トランスジェンダーの従業員へのサポート」でした。

niji VOICE 2018 報告書(©︎特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター 2018)より一部抜粋

しかし実際に、職場で何らかの性的マイノリティに関する施策が行われているか、という質問では、LGB他・Tどちらも実に約70%以上もの当事者が、「特に何の対応もない」と回答しています。

niji VOICE 2018 報告書(©︎特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター 2018)より一部抜粋

■企業はどのように施策を行っていくべきか?

LGBTに対する施策の数と心理的安全性の相関の調査では、「LGBT施策なし」に比べLGBT施策を「1つ行っている」企業では、LGBT当事者の職場での心理的安全性が高いと感じる人が約44%から約49%に上昇する一方、心理的安全性が低いと答える人が約2.5%増えています。施策数が1つではLGBTの心理的安全性は高まらず、施策数が多ければ多いほど、安心だと感じるLGBTが多いことがわかります。

niji VOICE 2018 報告書(©︎特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター 2018)

また、虹色ダイバーシティと株式会社プラップジャパンによる、東京2020オリンピック・パラリンピックスポンサー/サポーター企業への、LGBT当事者も働きやすい職場づくりのためのアンケートの結果からは、複数のLGBT施策を実施できている企業がある一方で、LGBTへの対応に積極的ではない企業も散見されました。

LGBTも働きやすい職場づくりのための企業アンケート(©︎特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、株式会社プラップジャパン 2019)より一部抜粋

『虹色ダイバーシティ』代表の村木さんは、LGBT当事者が働きやすい環境をつくる、ということは特別なことではない、と言います。

「職場でのLGBTへの配慮は、ハラスメント対策などと同じ、当事者と企業のどちらの側にとっても当たり前の“リスク対策”です。企業側は“プライベートなことだから”“センシティブな問題だから”と尻込みすることなく、また過剰な配慮をする必要もありません。人事や上司など当事者の相談窓口となる存在が、現場と対話を重ね、必要な制度を整えていくことが必要です」

■個人でも、職場全体でもすぐにできるLGBT支援の表明

2つの調査から見えてきた、LGBT当事者が職場で感じている、目に見えにくい息苦しさ。職場がLGBTへの施策に取り組んでいても、身近な上司や同僚、人事担当者にも悩みを相談しにくい……という現状があるようです。

逆に、相談しやすいのは、「当事者の友人」や、「職場外の相談窓口」との回答が多く、わかってもらえる安心感や、余計な人に知られなくて済むという点が、心理的なハードルを下げてくれるのではないでしょうか。

niji VOICE 2018 報告書(©︎特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター 2018)より一部抜粋

Ally(アライ)という言葉をご存知ですか? LGBTなど、困りごとや問題に直面している人々と連帯しながら、自分(たち)の問題として主体的に取り組む人を指す言葉です。虹色ダイバーシティでは、LGBTについて「知る、表明する、行動する」という、アライになるための3 STEPを提案しています。

アライである、またはアライになりたい、なろうと思っているということを周囲の人に表明すると、LGBTの当事者は「LGBTについて理解がある、理解しようとしている人がいる」と認識することができ、相談できる人がいる、という安心感に繋がります。

niji VOICE 2018 報告書(©︎特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター 2018)

レインボーフラッグなどのグッズをデスクに置いたり、アライ同士のグループをつくるなど、小さなアクションからLGBTへの支援の輪を広げることができるのです。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、LGBTに対する差別をなくそうとする動きが高まっています。しかし、オリンピックをゴールとするのではなく、「LGBT当事者を含め、みんなが安心して働くことができる」社会を目指して、全ての企業が前向きに取り組んでいくことが期待されます。

<クレジット>
文/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
協力/特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ