小学生のお子さんを持つ相談者さんの悩みのタネは時間の使い方。朝食の準備をして家族を送り出してからパートタイムの仕事にでかけ、夕方、家に戻ってからは夕食の支度でてんてこまいで、時間の余裕がまったくないのだとか。もっと効率的にこなしたいけれどやり方がわからない、どうやったら仕事と家事の両輪をうまく回すことができるの!? 悩める相談者さんに、家事を効率的かつ合理的にこなしている黒田さんが指南します。

【相談】
パートタイムで働いている36歳の主婦です。小学校3年生の子どもがいます。パートとはいえ、仕事をしているとなかなか自分の時間が持てません。いつも時間があっという間に過ぎて、いっぱいいっぱいの生活です。黒田先生は仕事をばりばりこなしながら家事もされているとのこと。いったいどうしたら家事をうまく回せるのでしょう。時短や冷蔵庫の余り物の活用など効率的な方法ってありますか? てきぱき家事をこなすコツを教えてください!(36歳・女性)

■「時間家計簿」で自分の時間を見える化しよう

仕事をしていると時間が経つのは早いですよね。私もいつも実感しています。仕事と家事と育児の両立は、女性にとって大きな負担であり悩みでもあります。

私のアドバイスとしてはズバリ、「時間家計簿」をつけてみること。お金の使い方を見える化するのが家計簿なら、自分の時間を見える化するのが時間家計簿。毎日、24時間の中で自分が何をしているかを具体的に洗い出しましょう。そうすると意外に、ぼーっとしている時間が多いことがわかる。工夫次第で活用できそうな時間が見えてきますよ。意外に多いのが移動の時間。通勤に電車を利用している場合は、スマホをいじっているだけじゃなくて、イーラーニングや読書、資格取得の勉強に充てることもできます。

黒田尚子さん(黒田尚子FPオフィス代表)

時間家計簿はノートに書いてもいいし、スマホやPCに記帳してもいい。便利なソフトやアプリもいろいろあります。ソフトやアプリがいいのは分析してくれること。データが蓄積されるのも便利。分析してもらうと自分の時間の使い方のクセや悪いところが浮き彫りになります。

もしソフトやアプリは面倒くさいと思うなら手帳でも構いません。自分が続けられる方法を選ぶのがいいですね。

お金と同じで、時間の使い方にはみなクセがあります。時間家計簿をつけると、このクセが見つかる。例えば、朝は忙しくて時間がないけれど、夜に多少余裕やスキマ時間があるのがわかれば、次の日の料理の仕込みを夜のうちにやるといった工夫が可能になります。

時間家計簿をつける際には、なにをやるべきかをリスト化するのも大事。優先順位をつけて、やるべきことや用事を記入していきます。私の場合、子どもや夫に関連する用事は、待ったが効かないことが多いので、優先順位が高い。頭の中に入れておくだけでは絶対に忘れてしまうので(笑)、真っ先にリスト化しておきます。

とくに、子どもが小さい間は、予定をいっぱいいっぱいに入れないこともポイントです。子どもがいると、急に熱を出したり病気になったり、緊急の呼び出しとかありますよね。私の娘は中学三年生になりますが、いまだに学校から仕事先へ連絡が入ることがあります(苦笑)。ぎりぎりにスケジュールを組んでおくと調整が大変です。

もしご自分の時間的な余裕が取れないようなら、マンパワーを活用することも検討しましょう。夫や実父母、義父母、あるいは仲の良いママ友と交代するなど、代替の方法まで考えておくと安心ですよ。

■買い物にムダな時間を費やしていませんか?

時間の見える化がいいのは、お金の節約にもつながることです。時は金なり。ムダな時間がムダな出費につながっていないか、時間家計簿で確認しましょう。

自分がどれだけ買い物にムダな時間を費やしていたかという現実も見えてきます。買い物の回数を減らせば時間にも余裕が生まれ、ムダも減りますよ。

私は貧乏性なので食材は捨てたくない。だから、ほぼすべて使い切っています。買い物間際の冷蔵庫はほとんど空。こうすると、何があって何がないのかがよくわかるので、「同じものを買ってしまった」というムダがありません。冷蔵庫にあるモノで料理をする在庫一掃処分もよくやりますよ。さすがに、3回続けると在庫も底をつきますが(笑)。

買い物をするときはいつもまとめ買いです。スーパーなどで食材を選んだり、レジに並んだりする時間がもったいないので、買い物に行くのが面倒だと言うのもありますが……(笑)。回数が少ない分、家計簿をつける回数が減るのも楽でいい。家計簿をつける時間も極力省きたい。だから、私は家計簿をできるだけつけないようにするためにも、お金をまったく使わない日を週に2回くらいは設けています。この日はもうお財布からお金を出さない。休肝日じゃなくて休金日です(笑)。

■子どもや夫の時間を貸してもらう発想で

家事を効率的に回すためには、子どもや夫など、家族みんなで家事をこなすこともぜひ考えてみてください。子どもや夫の時間を貸してもらうんです。

その場合、指示の出し方に要注意。指示は3つまで。それ以上は、なかなか覚えられません(笑)。一つの文章に目的語をたくさん入れるとキャパオーバーになるので、指示は必ず単純化しましょう。例えば、「洗濯物を取り込んでおいてね」「ゴミをまとめておいて」「炊飯器をセットしておいて」といった具合に指示を3つぐらいに分けるのがコツ。

これを「洗濯物を取り込んだら畳んでクローゼットにしまって、その間に炊飯器もセットして」などと指示を出してしまうともうアウト。ハードルがかなり高くなります。

指示を出したらすぐやってもらうことも大事ですね。子どもは「わかった」と返事をしても、その後TVを見ると用事を忘れてしまうことが多いです。そうなると「何やっているの!」と怒りたくなります。

無用なストレスを避けるためにも、指示を出したら即動いてもらい、自分も必ず振り返って、すぐやっているかどうかを確認するようにしましょう。こうした一連の動作をすべてシステマティックに行うと家事の負担が減っていきます。

■「ありがとう」は魔法の言葉

お母さん一人があれもこれもやらなきゃということになると大変です。我が家では自分ができることは自分でするのが原則。家族全員が、そういう習慣がついているので、とくに子どもにやり方を教えたことはありません。例えば、小さい頃から、学校や塾からのプリントなど配布物は、私の仕事用デスクのわかる場所に置いておくのは子どもの役割、それをチェックしてスクールバッグに入れるのは私の役割になっています。

家事や育児は積み重ね。一つ一つプラスしていくと、とんでもない負担になるので、できるだけ各自でやってもらいましょう。ただ、私は夫や子どもに用事や家事を頼みたいときには「悪いんだけど」と必ず添えて、やってもらったら「ありがとう」と感謝の気持ちを言葉に出して伝えるようにしています。

たとえ家族であっても最初と最後の言葉は必須。“親しき仲にも礼儀あり”と良く言いますよね。それが円満に家事を回すコツでしょうか。「ありがとう」と言われると誰でもうれしくなるので、「じゃあ、これもやっておこうか」と進んでやっておこうと思い始める。「ありがとう」という言葉は、特に夫に効果的だと感じています(笑)。もっと、家事をやって欲しいという気持ちはもちろんありますけどね。でも、欲を言ったらキリがない。今やってくれていることをありがたいと感じられれば、ストレスもたまりません。

とにかく、ムダを見直し、家族の時間も借りつつ、効率的に時間を使ってくださいね。

<プロフィール>
黒田尚子(くろだ・なおこ) 1969年富山生まれ。立命館大学卒業後、1992年(株)日本総合研究所に入社。SEとしておもに公共関係のシステム開発に携わる。1998年、独立系FPに転身。現在は、各種セミナーや講演・講座の講師、新聞・書籍・雑誌・ウェブサイトへの執筆、個人相談等で幅広く活躍。2009年12月に乳がんに罹患し、以来「メディカルファイナンス」を大テーマとし、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動も行っている。CFP® 1級ファイナンシャルプランニング技能士、CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格を保有。
●黒田尚子FP オフィス

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
文/三田村蕗子
撮影/村上悦子