さまざまな「物」に対する供養があることをご存知でしょうか。

供養とは仏や菩薩、諸天などに供物を捧げることを指し、仏教で使われている言葉です。 例えば人形やぬいぐるみなど、愛着のあるものをそのまま捨てるのはなんだか偲(しの)びないと考える人も多く、神社や祭りごとで供養を行うことがあります。
今回は「物」の供養についてご紹介します。

当記事は「小さなお葬式」より許可を得て転載しています

■人形供養

人形供養とは古くなった人形、もう使わなくなった人形などを寺社に供養してもらうというものです。日本人形やぬいぐるみ、おもちゃでも依頼することができ、人や動物などを模したものであれば何でも供養してもらえるようです。

●寺社の選び方
・費用
寺社によって、無料から数万円と幅があり、大きさや種類によって金額が変わることが多いようです。 費用の内訳を確認してから利用しましょう。

・受付方法
郵送で受け付けているところもあれば、持参のみ受け付けているところもあります。
供養をお願いしたのにただ纏めて焼かれただけだったという事例もあり、公開供養・立ち会い供養ができるかどうかも重要です。

■針供養

針供養とは、折れたり曲がったり錆びたりして使えなくなった縫い針を供養するもので、針仕事が日常生活の一部であった昔から続いているものです。寺社に納める他に、針を豆腐やコンニャクなどに刺す場合があります。これは、針仕事ではいつも固いものを刺しているため、たまには柔らかいものを、というところからきています。

現在でも、服飾関係の企業や教育機関では、行事として取り入れられています。

針供養は2月8日、または12月8日に行なわれる行事です。
関東では2月、関西以西では12月であることが多いようです。

・事八日(ことようか)
2月8日と12月8日はかつて事八日と呼ばれ、農耕を終えたり始めたりする日として定められていました。この日はつつしみをもって過ごす日とされていて、針仕事も休むもの。
それを機に使えなくなった針を供養し、裁縫の上達を祈りました。

■刃物供養

刃物供養は針供養と同じく、折れたり曲がったり錆びたりして使えなくなった刃物を供養するものです。 供養された刃物は、リサイクルされて新しい刃物や金属製品へと生まれ変わります。 愛着のあったものが、供養された後別のものに生まれ変わるのは嬉しいことであり、利用者は多いようです。

●刃物供養祭
刃物供養の行事と言えば、11月8日に岐阜県関市で行われる刃物供養祭があります。 関市は全国でも有数の刃物産地であり、関鍛冶伝承館の敷地内にある刃物塚で行われます。 11月8日に行われる理由は2つあります。

・イイハの日
11月8日はイイハの日という語呂合わせから、刃物の日という記念日になっているため、刃物供養祭の開催日としています。

・ふいご祭り
元々旧暦の11月8日は鋳物師や鍛冶師、石工などの鞴(ふいご)を用いる職人が行う祭りである「ふいご祭り」が行なわれていました。 これは、刀鍛冶の技術をもたらした鍛冶職人である、元重の偉業を称え感謝するためのもので、現在では刃物供養祭が行なわれています。

■まとめ

日本にはこれ以外にも箸供養、はさみ供養、鏡供養、財布供養などさまざまな供養があり、物を大切に考えていることが分かります。

神道では「八百万(やおよろず)の神」というように、どこにでも神がいるという考え方があり、物にも魂が宿るという考え方をしますし、それを付喪神(つくもがみ)としてまつることもあります。「物を大事に扱いなさい」と言われてきたのは、日本に古くから続く信仰が根付いているためと言えます。こういった考え方はとても尊いものですので、感謝の気持ちだけは忘れないようにしていきたいですね。

<クレジット>
提供/日本で一番選ばれている葬儀ブランド「小さなお葬式