(画像はイメージです)

父とのよくある話題は大別すると6種類です。私から話しかけることはほとんどありません。

会話は野球中継のラジオが流れる車の中、駅から実家へ向かう10分程度の間で交わされます。
父からの質問や報告はシンプルです。

「米は足りているか」
「そうめんはいるか」
「次帰ってくるのはいつか」
「今夜は焼き肉と寿司どちらがいいか」
「心配ごとがあったら母さんに相談しなさい」
「タイヤをスタッドレスに履き替えておいた」

可愛げのない娘はそれに、

「大丈夫」
「いらない」
「わかんない」
「お父さんの好きなほうでいいよ」
「うん」
「ありがとう」

とこちらもシンプルに返します。
話題というより、質疑応答のほうが正しいかもしれません。
このあと、みなさんはなんと会話を続けているのでしょうか。

全国のお父さんに知ってほしいことは、父親を嫌っているわけではないということです。
友人と話すのとは違って、あれを聞いておきたいとか、ちょっと面白いことを言いたいとか、そういった会話の工夫を深く考えていません。
会話はさほどしなくても、父のやっていることや考えていることを知る方法がいくつかあるので、それを怠っているのかもしれません。

我が家では、ひとつは父が書くメモとカレンダーです。
実家の車のハンドルには、チラシの裏側に書かれたメモがセロハンテープで貼ってあります。 何か忘れてはいけないことがあるとき、食卓にかじりついて、ため息をついたり頭を抱えたりしながら、メモを書き出すのです。強く書いてもチラシが破れないよう、その日の新聞の上にチラシを置くのが常です。
細かくtodoと注意書きが繰り返されるメモを読むと、なんとなく父親が慌てている内容がわかります。

居間に飾られたポスター大のカレンダーにも、目標の体重まで書いてありますし、母に怒られたことも付箋に貼られています。
家で起きているたいていのことは、このアナログな方法で把握できます。
雲行きが怪しいものがあれば、娘から声をかけます。

「相手の考えていることを知る」は、楽しい会話への第一歩、かもしれませんが、残念ながら、メモとカレンダーから会話が弾むことはありません。

もうひとつは父から来るメールです。
主に体調不良がないかを心配する内容なのですが、だいたいのメッセージは「次はいつ帰ってくるのか」であると受け取っています。

『元気でやってますか。仕事が忙しいと思いますが、無理をしないでネ。「人生は長いです。ゆっくり考える時間も必要だと思います。」※何か悩んでいる事があればお母さんに電話してください。よろしくネ。』

「ネ」がカタカナになるのは、なぜなのでしょうか。
「遅いことは猫でもやる」と早く風呂に入るよう言い続けていたのに、いきなりゆっくり考える時間の大切さを教えてくれるなんて、オトナって感じだなあ。
悩みごとを母親のほうに相談するよう勧めるのは、よくわかっているなあと思うけど。
という感想も伝えないので、残念ながら、メールから会話が弾むこともありません。
オトナとして「ありがとう」と返しておきます。

こういうときに、「今日は昼ごはんに食べたささみモッツァレラチーズカツカレーがおいしかった」とか、細かなことも報告しておけば、もしかしたら車の中でも会話が弾むのかもしれません。
ここまで振り返ってみると、娘の努力不足で父親と会話が盛り上がらないと言わざるをえません。

メールを返した後、父の日になにもしていないことを思い出しました。
もしかしたら今回は「父の日でしたよ」というメッセージだったのかも。

さすがに申し訳なく思い、珍しく電話をして「父の日なにもしてないけどいつもありがとう」と言いました。
すると、「父さんも(おじいちゃんに)何もしてないからいいよ」と返事があり、すぐに電話は切れました。

この温度感で、盛り上がることなく父親とコミュニケーションをとっていくのだろうなと思います。

マーケティング部
安藤