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すり傷や切り傷は、日常でよくあるけがです。転んで膝をすりむいたり、誤って包丁で指先を切ったりといったことは誰にでもあると思います。とくに小さい子どもがいる家庭では、ほんの少し目を離したすきに子どもが足を滑らせてけがをしたという経験が一度はあるのではないでしょうか。

当記事はMEDLEYニュース(2019年4月4日配信)より許可を得て転載しています

軽いすり傷や切り傷であっても、いざ自分や家族の身に起こった時はどう対処すればいいか困ってしまうかもしれません。本コラムでは、誰にでも実践しやすい傷の手当ての方法について、最新のガイドライン(2019年4月時点)を踏まえた5つの基本ステップを紹介します。

けがをしてしまった時は、まずは落ち着いて、以下の手順を参考にしてみてください。(内容を完全に覚えておくのは難しいので、このコラムをブックマークしておくといざというときに思い出せるかもしれません。)

■すり傷・切り傷の手当て:5つの基本ステップ

けがをして傷ができてしまった時には、誰しも慌てるものです。けがをした部位によっては傷から血がどんどん溢れてきて、どうしたらいいか焦っているうちに気分が悪くなってしまう人もいるかもしれません。そこで子どもから大人まで使える傷の手当ての方法について、以下の5つの基本ステップを知っておくと、いざという時に安心です。

  1. 傷をよく洗う
  2. 血が出ていたら、傷を直接圧迫する
  3. 傷の状態を確認する
  4. 傷を清潔に保ち保湿する
  5. ふさがった傷は遮光する

上記は傷の手当ての大まかな流れを示したものですが、けがをした時の状況によって、基本ステップ1、2、3の順番が入れ替わっても構いません。

また基本ステップ1、2は、自分の手に負えなさそうな大きなけがをした時でも、まずはやっておきたい応急処置として役に立つ方法です。

では次に、それぞれのステップについて詳しく説明していきます。具体的な方法とともに、医療機関への受診の目安についても解説していますので、参考にしてみてください。

◆ステップ1 傷をよく洗う

◎具体的な方法

どんな傷でも、まずは傷をよく洗うことが大切です。できる限り傷の中に異物が残らないよう、水道水で洗い流します。できれば泡立てた石鹸を使って、傷の周りの皮膚の汚れもあわせて落とすように洗ってください。この時、消毒の追加は不要です。

傷を洗う時には、痛みを和らげるためにも、人肌程度のぬるま湯で洗うことをおすすめします。痛みが強くて自分では傷を十分に洗えない時は、無理せず医療機関を受診してください。

ただし、傷口からの出血がひどい場合は無理をせず、基本ステップ2へすすんでください。

【医療機関を受診する目安】

  • 傷の中の異物が完全に取り除けない
  • 汚い水が溜まっている場所(どぶや古池など)でけがをした
  • 動物や人に咬まれてけがをした
  • 錆びた鉄や古い木材でけがをした

 上記に当てはまる人は、傷に感染が起こったり、ときに破傷風が起こったりすることがあります。傷をできる限り洗ったあとは、速やかに医療機関を受診するようにしてください。

◆ステップ2 血が出ていたら、傷を直接圧迫する

◎具体的な方法

けがをしたら、傷から血が出ることも少なくありません。傷口からどんどん血が溢れてきて怖い思いをした人も中にはいるかもしれません。

傷から出血している場合、傷を直接圧迫するようにしてください。ひどい出血であればあるほどこの圧迫が大事です。傷に清潔なガーゼやタオルなどを当てて、その上から血が出ている場所を押さえます。押さえる力は全体重をかけるほどに強くする必要はありません。通常の出血であれば数分で血は止まりますし、ひどい出血であっても出血量を抑えることができます。

圧迫する部位に関して注意点があります。傷の真上以外の場所を圧迫したり、ゴムや紐などでしばったりすると、かえって出血がひどくなることがあるのです。あくまでも出血している傷そのものを押さえるようにしてください。

【医療機関を受診する目安】

  • 傷を5分以上押さえても血が止まらない時は、速やかに医療機関を受診する
  • 受診するまでの間は、できる限り傷のある部位を高く上げて傷の圧迫を続けることが望ましい

◆ステップ3 傷の状態を観察する

◎具体的な方法

傷からの出血がとまったら、傷の状態をいま一度よく観察してみてください。とくに傷の深さに注意して観察します。基本的に自宅で様子をみることができるのは、比較的浅いすり傷や切り傷までです。傷が深い時や、傷の深さを自分で確認するのが難しい時は、お医者さんにみてもらうようにしてください。また、止血が済んだ傷を細かく触るとまた出血が見られることがあるので、出血がひどかった場合には観察しすぎないようにしてください。

傷の状態を観察する時には、傷の中に異物が残っていないか再チェックすることもポイントです。また、もし傷がまだ汚れていれば基本ステップ1へ、再び血がにじんでくるならば基本ステップ2へ戻って繰り返してください。

少し気持ちが落ち着いたところで、けがをしたところの動かしにくさやしびれた感じなど、普段と違った感覚がないかも調べてみてください。

【医療機関を受診する目安】

  • 傷の中に黄色い脂肪の組織や筋肉、骨が見えている
  • 切った傷口が大きく開いている
  • 傷がえぐれている
  • 刺し傷である
  • けがをした場所に動かしにくさやしびれがある

上記に当てはまる人は、専門の処置が必要になります。傷を洗ったあとは速やかに医療機関を受診してください。

◆ステップ4 傷を清潔に保ちつつ保湿する

傷をきれいな状態で保護するために自宅で行うことは、「傷を清潔に保つ」ことと「傷を保湿する」ことの2つです。なお、このステップで説明する「傷を清潔に保つ」内容は、医療機関で縫合(糸や医療用ホッチキスで縫い合わせること)を受けた傷にも当てはまります。

以下でそれぞれの方法について説明します。

傷を清潔に保つ

◎具体的な方法

傷が完全にふさがるまでは、傷を清潔に保つことも重要です。傷を軟膏や被覆材(ひふくざい)で保護している期間も、1日に1回は傷を水道水で洗って、新しいものに取り替えるようにします。ただし傷の中を強くこする必要はありません。傷の上に残っている古い軟膏類を取り除くつもりで洗ってください。

同様に傷周りの皮膚の洗浄も大切です。傷口の周りの正常な皮膚に、傷から出た滲出液(治る過程で出てくる汁のようなもの)や血のりがこびりついたままにならないよう、泡立てた石鹸で優しく洗って落とすようにします。

傷を汚い状態のままで放っておくと菌が繁殖しやすくなり、新たに感染を起こす原因となります。傷に汚れがついていると異常が起きても気づきにくいものです。一日に一回は傷を洗って、傷の様子を観察するようにしてください。

【医療機関を受診する目安】

  • 傷が赤く腫れて痛みが強いとき
  • 傷からの滲出液(しんしゅつえき※)がなかなか減らないとき
  • 傷から膿(うみ)が出てくるとき
  • 傷から悪臭がするとき

※炎症を起こしたときに、血管から外に漏れ出てくる液。傷口から出てくる透明、薄赤などの液体は滲出液であることが多い

上記に1つでも当てはまる人は、傷に感染をおこしている可能性があります。専門の処置を受ける必要がありますので、速やかに医療機関を受診するようにしてください。

傷を保湿する

(画像はイメージです)

◎具体的な方法

傷を早くきれいに治すには、保湿を行ってできるだけ乾燥させないことが大切です。傷に潤いを持たせて密閉する方法を湿潤療法(モイストヒーリング)と呼びます。傷の保湿を行うための専用の保護アイテムとして、モイストヒーリング用の被覆材(ひふくざい)が市販でも売られていますので、これらを購入して傷を覆うのが1つの方法です。

しかし専用の被覆材は比較的値段が高くつきますし、限られたサイズしか売られていません。そこで専用の被覆材を使わずに傷を保護する方法を次に紹介します。

用意するのは、精製度の高い白色ワセリン基剤の軟膏と、ごく普通のガーゼや絆創膏です。傷口全体を覆うようにワセリン軟膏をやや厚み(1-3mm程度)をもたせて塗り、その上からガーゼや絆創膏で保護します。また、傷の治りを少しでも早くするために、軟膏の上に食品用ラップを被せて最後にガーゼで覆う方法もあります。ラップを用いるのは傷の密閉度を高めるためです。ただし正常な皮膚がかぶれないように、傷の周りの皮膚を覆う範囲は最小限となる大きさにラップをカットして使ってください。

ワセリン軟膏は全身に使える保湿剤としても有能ですから、自宅に常備しておいていいかもしれません。一方で、ステロイドを含む軟膏の使用はここでは避けてください。

被覆材や軟膏類は少なくとも1日に1回は取り替えます。傷から滲出液が多く出ているときは、それより頻回に取り替えてください。傷がピンク色の薄い皮膚で完全に覆われるまでは、保湿を続けるようにします。

◆ステップ5 ふさがった傷は遮光する

◎具体的な方法

順調に傷が治ると、最終的にピンク色の薄い皮膚で覆われて傷は完全にふさがります。ここで忘れがちなのが、ふさがった後の傷あとのケアです。傷あとの薄い皮膚に赤みが残っているあいだは、紫外線が当たると色素沈着を起こしやすいため、茶色いシミとして後々目立ってきます。最低でも2-3ヶ月は意識して遮光(直射日光を避けること)を行うと、より傷あとが残りにくくなります。

遮光の方法としては、傷あとに茶色いテープや絆創膏を貼ったり、日焼け止めを塗ったりします。帽子や長袖の衣服などで傷あとが日に当たらないようにするのもよいでしょう。

とくに顔や手の甲など、日光にさらされやすく、見た目も気になる部位の傷は、遮光期間を長めにすることをおすすめします。

【医療機関を受診する目安】

  • 特になし

この段階で、感染などの問題が起こることはほとんどありませんが、傷あとをできるだけ残したくない、少しでも傷あとを見えにくくしたいという人は、皮膚科や形成外科のある医療機関へ相談してみてください。

■困った時は迷わず医療機関へ

今回のコラムでは、日常でよくあるすり傷や切り傷の手当ての方法について、5つのステップに分けて説明しました。

それぞれのステップで、医療機関を受診したほうが良い場合の判断のポイントも示していますが、自分での判断に迷う時は医療機関を受診することをおすすめします。

また、糖尿病や膠原病(こうげんびょう)などの持病がある人は、通常の手当てでは傷が治りにくくなっています。けがをしてしまった時は早めにかかりつけのお医者さんに相談してください。

けがはなるべくしたくないものですが、けがをした時にやるべきことをあらかじめ知っておくと、少し安心ですよね。このコラムを参考に、いざという時は傷の手当てを実践してみてください。

<クレジット>
文/池田 飛鳥

熊本大学医学部卒業。初期研修修了後、熊本大学医学部附属病院消化器外科、国立病院機構熊本医療センターで外科全般の診療に従事。熊本大学大学院消化器外科学で学位取得後、がん研有明病院、静岡県立静岡がんセンターで大腸外科医として研鑽を積む。2018年よりメドレーに参加。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、消化器がん外科治療認定医、日本ロボット外科学会専門医。医学博士。


参考文献
・「創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン-1:創傷一般ガイドライン」日本皮膚科学会 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン委員会

・「形成外科診療ガイドライン2 急性創傷/瘢痕ケロイド」日本形成外科学会、日本創傷外科学会、日本頭蓋顎顔面外科学会