更年期にさしかかる40代から50代の女性には、さまざまなストレスがかかるものです。会社で責任ある仕事を任されるようになった人もいるかもしれません。また、家庭では子どもが反抗期になったり、親の介護が必要になったりと、一人ではコントロールし難い状況が生じる世代でもあります。このような、たくさんのストレスがかかる時期に、更年期障害の症状はやってきます。

更年期障害では、「ほてり」、「イライラ」、「動悸」といったさまざまな症状が現れます。このような症状を感じる人は、40代から50代の女性の7-8割にものぼる(*)と考えられています。医療の進歩によって、以前はやり過ごしていることが多かった更年期障害の症状を、現在は適切な治療で和らげることができます。今回のコラムでは、更年期の女性に知ってほしい受診のメリットを伝えたいと思います。

株式会社日本ヘルスケアアドバイザーズによる調査(日刊工業新聞)

当記事はMEDLEYニュース(2019年5月10日配信)より許可を得て転載しています

■1. 更年期かな?と思ったら医療機関を受診したほうが良い理由

更年期障害かもしれないと思ったら、市販薬の購入を検討する人が多いかもしれません。「加味逍遙散(かみしょうようさん)」や「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」などは更年期障害に効果が期待できる市販薬の例です。市販薬で症状が軽くなれば良いですが、もしあまり効果が感じられなくて悩んでいる場合には、あきらめずにお医者さんに相談してみてください。

理由①:医療機関でしかできない更年期障害の治療がある

更年期障害に対する有効な治療の一つにホルモン補充療法があります。この治療は医療機関でしか受けることができません。更年期障害の症状は、エストロゲンという女性ホルモンの減少が原因であり、エストロゲンの補充により症状を改善できます。

ホルモン補充療法は有効な治療方法であるにもかかわらず、諸外国に比べて日本では普及が遅れています。その一つのきっかけは、2002年に発表されたWHI( the Women’s Health Initiative Randomised Controlled Trial)という大規模研究です。WHIでは、ホルモン補充療法によって心筋梗塞乳がんになりやすくなると報告され、ホルモン補充療法は一旦使用が控えられました。しかし、WHIは主に60歳以上に対してホルモン補充療法をしたものであり、更年期障害で困っているもう少し若い年代の人に対しては心筋梗塞や乳がんへの影響が少ないことが分かりました。現在の専門家の意見では、40代から50代の女性に対しては、適切にホルモン補充療法を行えば安全に使用できるとの考え方が多数です。2017年には日本産婦人科学会から「ホルモン補充療法ガイドライン」が出版され、日本でもホルモン補充療法の効果と安全性が少しずつ認知されるようになってきました。

更年期障害の症状は人によって大きく異なります。お医者さんは一人ひとりに合わせてホルモン療法の内容を選んだり、漢方薬や他の治療薬を組み合わせたりして、更年期障害で困っている人の症状が軽くなるようにサポートしてくれます。

理由②:他の病気が隠れている可能性がある

更年期障害の人がよく感じる症状は、甲状腺の病気、心臓の病気、貧血など他の病気でも起こりうるものです。症状の原因が更年期障害によるものかどうか判断するには、医療機関での検査が必要です。例えば、甲状腺の病気や貧血があるかどうかは、問診や身体診察に加えて採血検査を行うことで分かります。心臓の病気が疑われる人は、さらに心電図検査や心臓超音波検査などのさまざまな検査を受けて詳しく調べられることになります。

もしかして更年期障害かも?と思う症状がある人には、更年期障害以外の病気を見逃さないためにも受診をお勧めします。

とはいえ、忙しくてなかなか受診できないという人も多いと思います。近年では、多くの医療機関で休日や夜間の受診が可能になりました。MEDLEYの医療機関検索システムにて、夜間遅い時間帯まで診察している医療機関の検索ができますので、自分の予定に合った所があるか探してみてください。

■2. 受診の目安と更年期障害でよくある疑問

更年期障害かも?と思った時に医療機関で相談するメリットが分かっても、なかなか受診に踏み切れない人がいるかもしれません。そこで、内科医として更年期障害の女性を多くみてきた筆者が、受診をためらっていた人からよく聞かれた質問に答えます。

どのような症状があったら受診をしたほうがよいか

主な症状は、ほてり、のぼせ、だるさ、動悸、精神的に落ち込む、イライラするなどです。早い人では、40歳前後から症状が出ますが、多くの人が45歳から55歳で症状が出るといわれています。ですので、40歳以上の人でこのような症状があるときは、医療機関への相談を検討してみてください。

更年期障害による症状は、ちょっとした不調やストレスによるものだと思ってそのままにされがちです。30代の頃はなかった疲れやすさや、頭痛、肩こり、年のせいなのかなと思ってしまう症状も、更年期障害が原因であることがあります。心配な症状があれば、ためらわずにお医者さんに相談してください。

我慢できる程度の症状でも受診したほうがよいのか

ひどく辛い症状になれば受診を考える人が多いと思います。しかし、軽い症状でも、他の病気の兆候である可能性や、困っている症状が良くなることがあるので、お医者さんに相談して構いません。お医者さんから「この程度の症状でどうして来たのか」と言われるのではないかと不安に思う必要はありません。万が一、心無いお医者さんにそう言われてしまったとしても、症状に困っている人が受診することは間違ってはいません。あなたに非はないので、違う医療機関を受診しましょう。

何科に相談したらよいのか

更年期障害を専門にみてくれる科は婦人科です。医療機関によっては更年期障害専門の外来があり、より専門のお医者さんに相談できます。

心配な症状によっては、内科、精神科、心療内科でも相談できます。例えば、動悸や胸の痛みなどで心臓の病気が心配なときは内科を受診しても良いですし、イライラや、不安感などの精神的な症状が辛いときは、精神科や心療内科に相談してもよいです。

更年期障害の薬はずっと続けないといけないのか

ずっと続けないといけないわけではありません。症状の程度や患者自身の薬に対する考え方など、一人ひとりの状況に応じて、薬を飲む期間は変わってきます。

ホルモン補充療法や漢方薬を始めてみたものの、長期的に薬を使うことが心配になった人は、お医者さんに相談のうえ、一旦中止することもできます。中止した後に症状が再び出て辛くなった場合には再開することもできます。ただし、抗うつ剤などの精神的な症状に効果のある薬は、突然中止すると副作用が出ることがありますので、必ずお医者さんと相談ながら飲むようにしてください。

ホルモン補充療法の副作用にはどのようなものがあるのか

ホルモン補充療法の副作用として不正出血や乳房の痛みがでることがありますが、薬の減量や中止で改善します。また、ホルモン補充療法を受けると、まれに足の血管に血の塊ができてむくむことがあります。足にむくみが出たら、なるべく早く受診してください。

なお、ホルモン補充療法では、エストロゲンだけを使用すると子宮体がんになりやすくなることがわかっており、子宮体がんを予防する効果があるプロゲステロンがエストロゲンに併せて使用されます。

■3. まとめ

更年期を迎えた7-8割もの女性が更年期障害の症状を感じます。さまざまなストレスに晒される時期でもあり、ここに更年期障害が重なればますます辛い状況になります。

近年では、更年期障害は医療機関で受けられる治療の選択肢が広がっています。誰にでも訪れるものだから、と我慢する必要はないのです。このコラムによって、一人でも多くの女性が快適な日々を送られることを願っています。

<クレジット>
文/清水 貴徳
信州大学医学部医学科卒業。茅ヶ崎徳洲会総合病院(現 湘南藤沢徳洲会病院)にて初期研修および総合内科後期研修。その後、新東京病院消化器内科医員および船橋駅前内科クリニック副院長を経て、2019年よりメドレーに参加。日本内科学会認定内科医、総合内科専門医、日本消化器病学会専門医。


参考文献
・「ホルモン補充療法ガイドライン 2017年版」日本産婦人科学会

・Rossouw JE, Anderson GL, Prentice RL, et al.; Writing Group for the Women’s Health Initiative Investigators: Risks and benefits of estrogen plus progestin in healthy postmenopausal women: principal results From the Women’s Health Initiative randomized controlled trial. JAMA. 2002; 288: 321-333

・de Villiers TJ, Hall JE, Pinkerton JV et al. : Revised Global Consensus Statement on Menopausal Hormone Therapy. Climacteric. 2016; 19:313-315