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ストレスが続いて胃のあたりがキリキリと痛くなってきたら、胃潰瘍(いかいよう)という病名が頭に浮かぶかもしれません。ストレスはリスク因子の一つではありますが、胃・十二指腸潰瘍の主な原因は「ピロリ菌感染」と「NSAIDs(消炎鎮痛薬)エヌセイズ」の2つと考えられています。

潰瘍が進行すると胃や十二指腸の壁から出血して吐血をすることもあり、重症化する前に症状に気づいて治療することが大切です。(症状と治療についてはこちらのコラムを参考にしてください。)また、これらの2大原因に対処することで予防につなげることができます。

当記事はMEDLEYニュース(2019年7月30日配信)より許可を得て転載しています

■1.胃・十二指腸潰瘍の原因は何か

潰瘍とは「粘膜が深く傷ついてえぐれた状態」のことです。本来ならば胃・十二指腸の粘膜は胃酸から保護されていますが、何らかの理由で防御の仕組みが崩れると粘膜に傷がつきやすくなります。

胃・十二指腸潰瘍の2大原因は「ピロリ菌感染」と「消炎鎮痛薬(NSAIDs)」と考えられています。

◆ピロリ菌は胃に感染して炎症を起こす

ピロリ菌(Helicobacter pylori)は胃に感染する細菌で、慢性胃炎胃がんの原因になると考えられています。ピロリ菌が長期にわたって胃に感染すると萎縮性胃炎と呼ばれる慢性胃炎の状態となり、萎縮した胃粘膜では胃酸に対する防御作用が低下して潰瘍が発生しやすくなります。

また、胃にピロリ菌が感染すると、その影響で十二指腸では胃酸過多の状態になり、十二指腸潰瘍が発生する原因となります。

◆NSAIDsは粘膜の保護作用を低下させる

胃・十二指腸潰瘍の原因となる薬剤はNSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれる消炎鎮痛薬です。代表的な薬剤はアスピリン、ロキソプロフェン、ジクロフェナクで、痛み止めや解熱薬として使われます。

少し専門的な話になりますが、NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる酵素を阻害することで痛みの原因となるプロスタグランジン(PG)という物質の産生を低下させます。しかし、このPGという物質には胃・十二指腸の粘膜を保護するという役割もあるため、NSAIDsを使用することで結果として粘膜の保護作用が低下して傷つきやすくなり、潰瘍の原因となります。

これまでの研究で報告されている、それぞれの潰瘍の起こりやすさは次の通りです。

  • ピロリ菌感染・・・18倍
  • NSAIDsの使用・・・19倍

また、ピロリ菌感染とNSAIDs使用の両方があると61倍にもなると言われています。

■2.胃・十二指腸潰瘍の予防法とは

胃・十二指腸潰瘍をできにくくするには、上記の2大原因に対して手を打つ必要があります。それぞれについて簡単に説明します。

◆ピロリ菌を除菌する

胃・十二指腸潰瘍になった患者さんのピロリ菌を駆除することで、潰瘍の再発を予防できることがわかっています。また、今まで胃・十二指腸潰瘍になったことがない人でも、ピロリ菌に感染していると判明した場合には除菌治療を行うことで将来の潰瘍発生を予防できる可能性があります。(ピロリ菌の除菌治療についてはこちらを参考にしてください。)

◆NSAIDsを使うときは予防的薬物治療を併せて行う

NSAIDsを一定期間(3か月以上など)内服する人では、潰瘍の発生・再発を予防するために潰瘍の治療薬(プロトンポンプ阻害薬H2ブロッカー防御因子増強薬)を合わせて内服することが勧められます。

ただし、これらの薬剤は胃・十二指腸潰瘍になったことがある人の再発予防のみ健康保険が適用となり、潰瘍になったことがない人の予防には健康保険が適用されないので注意が必要です。詳しくは主治医の先生と相談することが大切です。

胃の痛みを引き起こす潰瘍の予防にはピロリ菌とNSAIDsへの対策が重要です。本コラムを参考に予防治療を検討してみてください。

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<クレジット> 文/佐藤達也(MEDLEY) 東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、太田西ノ内病院で初期研修後、日本赤十字社医療センターで消化器内科の研鑽を積む。その後、東京大学医学部附属病院で消化器内科、主に胆道・膵臓領域の診療・研究に従事。2019年からメドレー参加。日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。


【参考文献】
・「消化性潰瘍診療ガイドライン2015」(日本消化器病学会/編)、南江堂、2015年
・非静脈瘤性上部消化管出血に置ける内視鏡診療ガイドライン Gastroenterological Endoscopy Vol,57(8)Aug 2015
・「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン」(日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会)、先端医学社、2016年