(写真はイメージです)

地震、噴火、豪雨、台風など、日本はさまざまな自然災害が起こる国です。いつ災害が起きてもおかしくない国に住む限り、十分な備えをしておかなくてはなりません。水や食料などの確保はもちろんのこと、普段飲んでいる薬についても日頃から対策を考えておくことが大切です。

大災害が起きた時には、支援物資が届くまで数日かかることがあります。そのため、命にかかわる重要な薬は余裕をもって1週間分を常備しておくことが勧められています。また、常備している薬を必ず持って避難できるとも限らないので、普段使用している薬の名前や量を常にわかるようにしておくことも必要です。

薬の内容をしっかり暗記しておくのも一つの方法ですが、薬は名前や量を少し間違えただけで全く効果が変わってしまうことがあるので、文書として残しておくのが、より正確で安全です。

このコラムでは、万が一の時に普段使用している薬の内容がわかるようにしておく方法を紹介します。

当記事はMEDLEYニュース(2019年8月6日配信)より許可を得て転載しています

■1.東日本大震災では「お薬手帳」や「お薬の説明書」が有用だった

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、多くの人が避難所での生活を強いられました。大災害の直後には、お医者さんに受診ができなくても特例により調剤薬局や避難所の救護室などで数日分の薬をもらえることがあります。しかし、普段使用している薬の内容が正確にわからないと、適切な薬はもらえない可能性があります。

また、受診できたとしても、これまでかかったことのない医療機関では患者さんの情報は持っていませんし、たとえいつもと同じ医療機関であっても、大災害の混乱状態で過去の処方内容のデータが引き出せないこともあります。

東日本大震災では「お薬手帳」や「薬剤情報提供文書」が有用であったという報告が多くあります。「お薬手帳」というのは、いつどのような薬をどのくらい処方されたかが記録できる冊子で、「薬剤情報提供文書」というのは調剤薬局で薬と一緒に受け取る「お薬の説明書」のことです。

これらを常に携帯できれば良いのですが、かさばるので普段は自宅に置いておきたいという人が多いのではないでしょうか。自宅ではいつでも持ち出しやすい場所に置いておくことが大切です。また、防災袋に薬の内容のコピーやメモを入れておくと、災害時に持ち出せる可能性が高くなります。

しかし、大災害時の混乱の中では持ち出せない可能性も考慮しなくてはなりません。実際、東日本大震災では「お薬手帳」や「お薬の説明書」を持っていない人が多くいました。

そこで、次のような対策を併せて講じておくことをお勧めします。

■2.「お薬手帳」や「お薬の説明書」がなくても薬の内容をわかるようにする方法とは

対策のポイントは、自分の手元と、離れた場所の2箇所以上に情報を置いておくということです。

①いつも持ち歩いている財布やカバン、スマートフォンに薬の情報を入れておく

外出先で被災した時の備えとして、普段持っている財布やカバンに常用薬の内容を書いたメモを入れておくと良いです。メモは「お薬手帳」や「お薬の説明書」のコピーでも構いませんが、薬の情報をQRコードにするとコンパクトに収納できます。最近では多くの調剤薬局で処方内容をQRコードにしてくれますので、相談してみてください。

また、近年普及が進んでいるスマートフォン用アプリの「お薬手帳」を入れておくのも一つの策となります。

②離れて暮らす家族や友人に処方内容のメモやお薬手帳のコピーを送っておく

離れた場所に住む家族や友人、親戚などに、常用薬の情報を渡しておく方法です。たとえ何も持ち出せず、薬の内容を覚えていなかったとしても、家族や友人に問い合わせをすれば使用している薬の内容がわかります。ただし、家族や友人の連絡先を忘れないようにしておく必要があります。

③クラウド型のメモやメールに薬の情報を入れておく

近年はさまざまなクラウド型のデータ管理システムやメールがあります。一定の容量を超えなければ無料で使えるサービスもあります。

クラウドに薬の情報を保存しておくと、災害時に着の身着のまま逃げてきても、パスワードとIDさえ覚えていれば必要な時に薬の情報を引き出すことができます。ここ数年の大災害では、携帯キャリア各社のWi-Fiの無料解放などによって提供されるFREE Wi-Fi「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」が使用できるようになり、2016年の熊本地震や鳥取中部地震でも発動しました。クラウドに薬の内容などの必要な情報を入れておくことは災害時に大変有効な手段といえます。

ただし、FREE Wi-Fiを使用すると通信内容が盗まれる可能性があると言われており、保存する情報は流出しても問題とならない程度のものに留めると良いかもしれません。

情報を最新に保つためには写真を活用すると便利です。処方薬を受け取るたびに「お薬手帳」の写真をスマートフォンなどの端末で撮ってクラウド型のメールに送ったり、データ管理システムに保存したりしておくとよいです。

■3.まとめ

いつでも処方薬の内容がわかるようにしておくと、災害があっても病状に即した薬を確保できる可能性が高くなります。また、医療スタッフが効率的に必要な薬を選ぶことができるので、その分多くの患者さんの手当てをすることができます。

常用薬がある人やその家族は、いつ起きてもおかしくない災害に備えて、上記の方法を実践してみてください。

<クレジット>
文/清水貴徳(MEDLEY)
信州大学医学部医学科卒業。茅ヶ崎徳洲会総合病院(現 湘南藤沢徳洲会病院)にて初期研修および総合内科後期研修。その後、新東京病院消化器内科医員および船橋駅前内科クリニック副院長を経て、2019年よりメドレーに参加。日本内科学会認定内科医、総合内科専門医、日本消化器病学会専門医。