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年末年始といえば忘年会に新年会。ついついお酒の量が多くなりがちなシーズンには、健康診断で引っかかっていたγ(ガンマ)-GTPの値が気になる、という人もいるかもしれません。今回はγ-GTPとはそもそも何なのか、γ-GTPと飲酒がどう関係しているかなどについて説明します。

当記事はMEDLEYニュース(2018年12月13日配信)より許可を得て転載しています
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

■1.健康診断の血液検査で調べられるγ-GTPとは?

健康診断の項目の1つにγ-GTPがあります。この値が高めだと「お酒を飲みすぎたかな?」と考える人もいるかと思います。そもそもγ-GTPとは何なのかについて、まず説明をします。

γ-GTPとは肝臓の状態を調べる時に血液検査で測られるものの一つで、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-グルタミルトランスフェラーゼと呼ばれることもあります)の略称です。γ-GTPは肝臓を構成する細胞に含まれる物質であり、肝臓が壊れる時にγ-GTPの値が上昇します。

余談になりますが、γ-GTP、実は臓器ごとに比較すると腎臓にもっとも多く存在します(1)(ついで膵臓、肝臓の順番)。しかし、腎臓が壊れた場合のγ-GTPは血液中には漏れ出さず尿に漏れ出るため、血液中のγ-GTPの値は肝臓の状態を把握する検査として用いることができます。

■2.γ-GTPと飲酒の関係

さて、そんなγ-GTPですが飲酒による肝障害、すなわち「アルコール性肝障害」の検査として用いられることがあります。アルコール性肝障害とは進行すると肝硬変を引き起こす病気です。肝臓の病気の中でアルコール性肝障害の占める割合は年々増えており、肝硬変の約 20%がアルコールによるものとも言われています(2)。肝硬変で辛い思いをする人を少しでも減らすためには、アルコール性肝障害の早期発見、早期治療が重要です。アルコール性肝障害は進行しないと症状が現れにくいので、早い段階で見つけるためには血液検査などを上手に利用する必要があります。

肝臓の状態を調べる血液検査において、検査項目となるものにはAST、ALT、ALPなど他にもいくつかありますが、そのなかでγ-GTP値がアルコール性肝障害の指標として注目される理由は以下の二つがあります。

  1. γ-GTP値はアルコール摂取の影響を受けて上昇する
  2. γ-GTP値はアルコールの摂取量を反映する

ひとつずつ説明していきます。

【1.γ-GTP値はアルコール摂取の影響を受けて上昇する】

実はγ-GTP値は肝臓が壊れる時に上がるだけでなく、アルコールによりγ-GTPそのものの量が増えます。実際、アルコール常飲者では他の肝臓の検査(AST、ALT、ALP)の値が正常でγ-GTP値だけ高いということも珍しくありません。γ-GTPを調べることで、肝臓が壊れる前にアルコール常飲の習慣を見直すきっかけができれば、アルコール性肝障害への進行を未然に防げます。逆にASTやALTの値も上昇してきている人は、肝臓の破壊が始まっているサインなので注意が必要です。

【2.γ-GTP値はアルコールの摂取量を反映する】

γ-GTP値は飲酒量をある程度反映すると考えられています。飲酒量といっても、お酒によってアルコール度数が異なるので把握するのは簡単ではありません。そこで、お酒の中に含まれるエタノールの量を計算して客観的に評価します。

イギリスの研究によれば、エタノール換算で20g/日未満の飲酒量で基準値を超えた人はいなかったのに対し、エタノール換算で80g/日以上の飲酒量では85%の人が基準値を超えたと報告されています(γ-GTP値が60 U/mL以上を基準値にした時)(3)。アルコール性肝障害は長期の過剰な飲酒(目安としてエタノール換算で 60 g/日以上の飲酒を5 年以上(4))で起こると考えられています。そのため、γ-GTPがアルコールの摂取量を反映する検査である点は重要です。

ちなみにお酒の種類とエタノール換算した時のおおまかな量は以下の通りです(5)。

お酒の種類 お酒の量 エタノール換算
ビール中瓶 1本 500ml 20g
日本酒 1合 180ml 22g
焼酎 1合 180ml 50g
ワイン 1杯 120ml 12g
ウイスキー ダブル 60ml 20g
ブランデー ダブル 60ml 20g

イギリスの研究がそのまま日本人に当てはまるかどうかについては検討が必要ですが、上の表を参考にしてエタノール換算20g/日以下を目指すと良いかもしれません。

■3.お酒をあまり飲まないのにγ-GTP値が高いのだけれど……

なかにはお酒をあまり飲まないのにγ-GTP値が高いと指摘されたことがある人もいるかもしれません。実はγ-GTP値が上がる原因は、飲酒やアルコール性肝障害だけではありません。γ-GTP値は胆管結石や胆管がん肝細胞がん、薬による肝障害など、さまざまな病気が原因で上がることがあります。そのため、健診などでγ-GTPが高いと言われた場合には医療機関を受診し、他の病気が隠れていないかも含めて調べてもらうことをお勧めします。もちろん特に異常がないのにγ-GTP値が基準値を超えるということもありますが、詳しく調べることなしに問題なしと判断することは難しいです。

■4. γ-GTP値の上昇が飲酒によるものかそれ以外か調べる方法は?

γ-GTP値が、がんなどでも上がると聞くと恐ろしく感じる人もいるかもしれません。ではγ-GTP値の上昇が飲酒によるものかそれ以外によるものかはどのように調べられるのでしょうか。

飲酒によるものかそれ以外が原因かを調べる方法としては以下の二つが考えられます。

一つ目は、飲酒をやめることでγ-GTPの値が下がるかどうかを確認する方法です。もしγ-GTP値の上昇が飲酒によるものであれば、飲酒をやめることで下がっていくので、経過を見ながら飲酒によるものかどうかを判断することができます。ただし、飲酒を長期間続けているとγ-GTP値が下がりにくい体質になることがあるので(※1)、飲酒をやめて数週間たってから下がり始める人もいます。

二つ目は、他の検査結果と併せて判断する方法です。例えば、胆管結石やがんがないことは超音波検査などの画像検査で確認してもらうのが一番確実です。がんなどが心配な人は医療機関で一度調べてもらうことをお勧めします。

飲酒が原因の場合にはγ-GTP値の上昇に加えて、「ASTがALTの2倍以上の値に上昇する」、「平均-赤血球-容積 (MCV)が100以上になる」といった血液検査の異常を伴うことがあります。これらの値の異常は慢性的な飲酒で引き起こされるビタミンや葉酸の欠乏によるものと考えられています(※2)。

※1 γ-GTP値の半減期(半分の値になるのに必要な期間)は通常10日程度ですが、アルコール常飲者では28日程度になると言われています(6)。

※2 飲酒が影響してASTがALTに比べ増えやすくなるのは、ビタミンB6が不足するとALTの活性が落ちるので相対的にAST値が上昇しやすくなるためとされます(7)。MCVが上昇するのはビタミンB12や葉酸の欠乏が起こるため(8)です。

さて、ここまでγ-GTPとは何か、γ-GTPと飲酒との関係などについて説明してきました。γ-GTPは飲酒だけでなくさまざまなことで上がることがあるので、健診で異常を指摘された場合には医療機関を受診し、一度原因を調べてもらうことをおすすめします。もし、すでにγ-GTP値の高い原因が飲酒であるとはっきりしている人がγ-GTP値を下げる有効な方法は、「お酒を控えること」です。

アルコールの過剰摂取は、今回解説したアルコール性肝障害に限らず身体にさまざまな影響を及ぼします。体調も肝臓も壊さないようお過ごしください。

<クレジット>
文/佐々木貴紀(MEDLEY)
慶應義塾大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターの初期研修で内科全般の研鑽を積み、その後慶應義塾大学でリウマチ内科医として勤務。2017年からメドレー参加。日本内科学会認定内科医。


【参考文献】
1. 「異常値の出るメカニズム第7版」(河合 忠/著)医学書院、2018
2. 肝臓59巻7号 312-318(2018)
3. Q J Med 1996;89:137-144
4. アルコール性肝障害診断基準2011年版

5. 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター「アルコール性肝疾患」

6. Medscape: Gamma-Glutamyltransferase

7. Up to date: Alcoholic hepatitis: Clinical manifestations and diagnosis
8. Up to date: Alcoholic hepatitis: Hematologic complications of alcohol use