「思いを形にするUnipos(ユニポス)」。社員の熱意からライフネット生命では2019年4月に、従業員一人ひとりの貢献を可視化するウェブサービス「Unipos」を導入、ほぼ毎日社員の「ありがとう」が投稿されています。ライフネット生命は3つのフロアに分かれており、毎日顔を合わせることができない社員もいますが、Uniposの投稿により「この部署はこんなこともしてくれていたのか」「この人はこんな風にがんばってくれていたんだ」と、違う部署まで足を運ばなくてもその貢献を知ることができるようになりました。(前編はこちら)

しかし一方で、感謝の投稿に加えてギフト券などに交換できる「ポイント」も送れることについて、編集部員はこんな不安を打ち明けました。

■Uniposはあくまで人間関係を円滑にする数あるツールのひとつ

──実は私自身、良いツールだなと思いつつ、モヤモヤしている部分もあって……。自分なりに良いことをしたから、もしかしてUniposもらえるかも?と期待してしまうんです。そういう期待をしていたのに、ポイントがもらえなくてがっかりしている自分に気付いたりもしました。なんだか、ポイントが目的になってしまったりして、反省することがあるというか。

前田:投稿がインセンティブになっているのは確かです。ポイントの送付というちょっとしたゲーム感覚の要素を加えることで、投稿をより楽しんでもらうことを期待していました。その一方で、純粋な思いが対価を目的にしたものになってしまうという点について、心配もしていました。このため、過度なポイント設定を避けるとともに、「どんな形でUniposを利用してもらいたいか?」という我々の理念を伝えることで応え続けていきたいと思っています。Uniposだけが感謝の伝え方ではないよ、ということは伝えていきたいですね。

嵯峨:Uniposでポイントをもらうために何かするのも、結局その人のために行動できているということなんです。それで他の人に感謝の思いが生まれたり、業務や人間関係が円滑に回ったりするのであれば、そういう気持ちで動くのも悪いことではないと思っています。Uniposはあくまでツールのひとつでしかありません。例えば他の手段で感謝を伝えてくれていた場合もあると思います。Uniposはカジュアルに使っていいもの、そして使わなくてもいいものだということも発信していきたいです。

前田:色々な考えもありますが、すべてを採用することは残念ながらできません。我々がやりたいと思っていたことができなかった、という話もしていきたいと思っています。そのひとつがUniposのサービスを使える対象者の設定ですね。

河合:ライフネット生命には派遣社員や業務委託の形態で働いている方もいらっしゃいます。ですが、派遣元、委託先の企業などとの契約状態とUniposの仕組みとの兼ね合いから、現在は対象にはできていません。

前田:投稿の内容についても「これは感謝の投稿として適していなかったのかも……」とか、「内輪で盛り上がってしまってよかったのかな」といった迷いも聞こえてきましたが、想いの交わしあいが目的なので、まずは各自が投稿したいことでいい、ということにしています。適宜、運用をチューニングしていく必要はありますが、当面は、コミュニケーションの仕方を会社側で縛りすぎることなく継続したいですね。

嵯峨:どんな投稿をしたらいいのかは、頻繁にUniposを活用されている他の社員の使い方を参考にしてもらいたいなとも思います。

──社内交流が活性化されるのであれば、ある程度自由に使ってみていいんですね。例えば特定の人だけに送るという人がいてもいい。ありがとうございます、Uniposの使い方を少し考えてみます!

■「息抜きにUnipos」くらいの丁度良い距離感でお付き合いください

──普段接しない部署の人たちがコミュニケーションをしている様子が見えると、その部署の大変さなども伝わってきます。会社の人たちが何をやっているのか、Uniposを通して可視化されていくのは面白いです。

河合:私は入社時研修でUniposについて説明をしています。入社間もない人にとっては「なるほど、こういう人がいるんだな」「こういう関係性があるんだ」など社内の様子を知ってもらえるきっかけの場にもなると思います。

嵯峨:ポイントも「送ったら送り返さなきゃ」というものではないので、もらったらとりあえずスタンプを返す、で完結していいと思っています。

前田:顔文字だけで送ったりといった気楽さで使ってもらえればいいですね。

Uniposの画面。他の人が送った投稿へ拍手を送ったり、もらった投稿へスタンプを返したりできる

河合:Uniposを使って、自分に対して投稿をもらえることもうれしいですけど、自分が相手に感謝を伝えられるということだけでも個人的には満足しています。投稿をしている時は、自分もほっこりした気持ちになれますしね。

──私も仕事中に息苦しさを感じた時はUniposの投稿を見て、肩の力を抜くようにしています。

嵯峨:優しい言葉が投稿されていく場所なので、息抜きに見ると癒されますね。そういう和みの効果もあるかも。

河合:興味を持った時に、サイトを眺めて他の人たちのやり取りを眺めてもらうだけでもうれしいですね。

前田:私たちが何かを強制することなく、それぞれの社員が使いやすい場にしていくことに力を注ぎたいと思います。感謝を伝える=Unipos、となり過ぎないように、制度の一つとして程よい存在感にできればと思います。

ここまで、Unipos導入チームの3人に話を聞いてみましたが、実際に利用している社員はUniposをどのように活用しているのでしょうか。ライフネットジャーナル編集部員が、Uniposの利用頻度が高い2人に話を聞いてみました。

■Uniposを利用している社員の声① 事務企画部 中野

笑顔でインタビューに答えてくれた中野

──中野さん、よくUniposを利用されていますよね。投稿のタイムラインでよく見かけます! こまめにつかっている理由があれば、教えてください。

中野:私は2019年4月入社で、ほぼ同時期にUniposが導入されました。一度業務で関わった人へUniposを送ることでより深く関わっていける、信頼を築けていけるのではないかと思い、利用し始めました。個人的な目標としても「Uniposで利用できるポイントは全部使う!(そのためにいろんな人に絡んでいく!)」って決めていました。

──中野さん、本当にどの部署の方にも送っている印象があります。投稿するときに心がけていることはありますか。

中野:第三者が見ることを意識して、縁の下の力持ちな人にスポットライトを当てるイメージで投稿しています。「皆、この人の活躍を見て~!」という感じですね。私のいる事務企画部は、自部門だけでは仕事が完結できません。信頼関係の有無は仕事のパフォーマンスに関わりますので、そこにUniposを活用しています。

──Uniposだからこそ、いいなと思っているところはありますか?

中野:使い方の自由さですね。会社から「こういう使い方をしなさい」という強制もされていませんし、社員同士で楽しんで使えるようになっているのはいいと思います。「今日の晩御飯迷ってるから、一番食べたくなる晩御飯提案してくれた人にUnipos送るよ」って言われて、みんなで晩御飯のおかずを提案しあったり。あとは面と向かってだと照れくさいことや、きちんとした場だと感謝を伝えづらいものも送りやすい。ライフネット生命はもともと信頼の文化があると感じていて、その上にこうしたツールがあるのは良いなと思っています。

──Uniposについて印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

中野:自分が仕事でちょっと落ち込んでいる時に、ある社員がお客さまと電話をしているのが聞こえてきたんです。その姿勢とか言葉づかいがかっこよくて、「落ち込んでいる場合じゃない!プロとしてがんばらなければ!」とすごく元気になったんですよね。自分がお客さまだったらこういう人に対応してもらえたらうれしいだろうなって思えるくらい素敵な対応で。そういうのってわざわざ面と向かって「ありがとう」とは言いにくいけれど、Uniposがあるおかげで感謝を伝えられたのは、印象に残っています。そういう自分が感じただけで終わってしまいそうな、片思いのような気持ちを気軽に伝えられるのは便利です!

──片思い……その気持ち、少しだけわかる気がします。中野さんは本当にいろいろな方にコメントを送っていますよね。

中野:意識的に、送っていない社員はいないくらいを目指しています。ちょっと会話があったらこじつけでも送ってみたり。それをきっかけにして絶対仲良くなれるんですよ。ただ、契約形態により送れない人がいるっていうことにもどかしさはありますね。とても助けられているのに、この感謝を伝えられないなぁと。せめてコメントを送れるようにしたいですね。

──ちなみに、もらったポイントの使い道はどうしていますか?

中野:自分の中でルールを決めていて、子育てグッズの購入に使っています。おしゃぶりを買ったり、おもちゃを買ったり……自分が感謝をされたことで、子どもが育つ、妻も喜ぶ(笑)。

■Uniposを利用している社員の声②保険金部 渡邊

──渡邊さんの投稿、読んでいるとほっこりします。絶妙な温度感というか……投稿するときに気を付けていること、意識していることはありますか。

渡邊:自分の部署の同僚には、ハードな業務が続いたり、気持ちが落ち込むようなことがある場合に送るようにしています。「大変だったね」という労いの気持ちを伝えることが多いかな。こんなにがんばっている人がいます、ということを社内に知ってもらえるようにしています。

──確かに、Uniposの投稿を通して、社員同士の仕事の見える化ができていますよね。

渡邊:私も他の人の投稿を見て、マーケティング部はこういうことをやってるんだなぁと分かったり、経理部の社員が、同じ部の同僚に向けた「決算お疲れ様です」という投稿をみて、経理部忙しくて大変そうだなって思ったり。なので私も、自分の部署は今こういうことが大変なんですよ、ってわかってもらえるよう意識しています。

──Uniposだから使いやすい部分というのはありますか?

渡邊:Uniposの大前提は前向きなメッセージを送ることなので、どんなメッセージでも、受け取る人も見る人も良い印象を受けやすいところでしょうか。他にも社内ツールはあるんですけど、自分の会社の日常の中で起きたことを手軽に書けて使いやすい。口下手な人でも「ありがとう」を文章で伝えられるし、毎日少しほっこりできていいと思う。送る人がいて、受け取る人がいて、それに拍手する人がいて。雰囲気がいいなと思います。

──渡邊さんは投稿に添えるハッシュタグの使い方も工夫されていて、個人的にとても好きです!

渡邊:私はSNSをやっていないので、SNSのようにハッシュタグで遊んだり、スタンプで遊んだりするのが楽しくて。別々の人への投稿だけど、コメントが同じ内容で末尾のスタンプは「見ざる・言わざる・聞かざる」が縦に連続するようにしてみたり……遊べて楽しいです。他の人もハッシュタグを自由に使っていて、見ていて楽しいですね。

スタンプをつけたコメント部分を抜粋。お茶目な使い方もできる

──印象に残っている投稿はありますか?

渡邊:退職する人へ投稿していたのを見て、いいなと思いましたね。色紙だと全社員に回らなかったり、手紙だと重かったりするけれど、こういう気軽なツールだと程々に軽くて送りやすいでしょうから。

──新しい社員が入ってくることも多いので、Uniposデビューする人も今後増えていくと思います。Uniposの使い方について、渡邊さんはどんなふうに考えていますか?

渡邊:お礼は直接口で伝えたい!とか、ご自身の考えがあるからこそUniposは使わない、という人も中にはいると思います。なので、使わないならそれは自由でいいと思います。個人的には、毎週の400ポイントって、みんな平等に会社からもらったポイントですし、せっかくだから使った方がいいよねと思って使っていますね。使って損もしないシステムなので、使ってみたくなったら使ってみてもらうのもいいと思います。

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル編集部
文/年永亜美(ライフネットジャーナル編集部)