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新社会人! 初めての給与をもらったら気をつけるポイント

社会保険労務士(社労士)でもあるファイナンシャル・プランナーの中村薫先生が教えてくれる「だれも教えてくれなかった社会保障」シリーズ。
今回は、初めての社会人生活を迎える方に向けて、給与の「中身」についてです。基本的なことは知っておきたいものですよね。中村先生に教えてもらいましょう!

今回のポイント
• 「額面(がくめん)」と「手取り(てどり)」の違いに注意!
• 税金の天引きは社会人としてのコスト
• 社会保険料等の天引きは自分を守るコスト


知っておいて欲しい給与の中身とマネープランの基礎


社会人になると、学生時代のバイト代よりも、受け取る給与の額が多くなる方もいるでしょう。また、仕事に慣れるまでは心身共に大変でしょうけれども、自由に使えるお金が増えたと思うと、うれしさもひとしおでしょう。

ただ、さすがに全部使ってしまうと後悔することになりかねません。少し先の予定も視野に入れて、上手にお金と付き合う練習をすることも大切です。
今回は、新社会人や若い社会人の皆さんが後悔しないために、知っておいて欲しい給与の中身とマネープランの基礎をお伝えします。

今回紹介した内容で気になることがあるときは、以下の手段で確認をしてみましょう。

  • 勤務先の制度や給与のことなら、勤務先の総務担当者・部署に相談

  • 税金のことを調べるなら国税庁やお住まいの市区町村のサイトを確認する

  • 社会保険のことを調べるなら加入している健康保険、日本年金機構のサイトを確認する

もちろん、みんながみんな、税金や社会保険に詳しくならなくたっていいんです。困ったときに分かっている人に聞いて、そのときそのときで解決していけば、大丈夫ですからね。

※専門的な用語をできるだけわかりやすい用語に置き換えています。また、詳細な説明を省略しているため、すべての要件などまで触れていません。
※今回、もろもろの税金の計算の目安としている人物は未婚、扶養親族なし、その他税制などの特例対象ではない、企業に勤める新入社員です。

「額面(がくめん)」と「手取り(てどり)」の違いに注意!


春の猫のイメージ

給与の中身は給与明細書に書かれています。
難しそうに見えますが、面倒がらず、ある程度は目を通しましょう。
そして必ず保存しておきましょう! 給与がいくら支払われているかの証拠となる大事なものです。
みなさんは、給与明細書には「額面」と呼ばれる金額と、「手取り」と呼ばれる金額があることをご存じですか?どのような違いがあるのか、いっしょに見ていきましょう。

(1)「額面」は支給されるお金の総額

一般的に給与明細書には、この1ヶ月間に就業時間通りに働いた日数や、時間外に働いた時間、休日出勤した日、休んだ日や遅刻・早退があった場合の時間などが書かれます。それによってその月の給与の大枠が計算されるのです。
交通費など、給与以外にもらえる各種手当などの額も記載されています。「額面」とは、これらの手当を含めた金額です。

交通費は一般的な手当ですが、それ以外は会社によってさまざまです。

入社する前から資格を持っていたり、新たに資格を取得したりすると、資格手当が給与に上乗せされる場合もあります。会社にどのような手当があるのか、就業規則や給与規程などで確認してみると良いでしょう。たとえば資格取得のための専門学校の費用を補助してくれるといった、うれしい制度を会社が用意していることもあります。

合わせて確認しつつ今後のキャリアアップをイメージしてみるのもおすすめです。(あ、話がずれました。)

(2)「手取り」は税金などを引いた後の金額

給与明細書には、いわゆる「天引き(てんびき)」される額も書かれています。天引きとは、主に税金や社会保険料が額面給与からあらかじめ引かれることです。
結果として、実際に自分が受け取れる金額は額面より減ることとなり、その額を「手取り(てどり)」と呼びます。

いくらぐらい引かれるのかというと、仮に給与が20万円(別途:交通費1万円)なら以下のようになります(概算です。給与やボーナスの金額、住んでいる地域等によって異なります)。

·    所得税…約4,000円~5,000円
·    住民税…約8,000円
·    社会保険料等(健康保険、厚生年金保険、雇用保険料)…約3万円(額面の約15%)

合計すると月に約4万3,000円も天引きされるわけですね!

とはいえ、実は社会人1年目は住民税が引かれない人がほとんどなので、少し負担は軽くなります。
なぜなら、住民税は前年の所得に応じて決まるからです。前年がアルバイトのみで、税金がかからない範囲であれば、2年目から住民税が引かれることになります。

また、原則として入社した月の給与からは、社会保険料等も引かれません。前月の分を翌月に支払う仕組みのため、4月からの新入社員であれば、社会保険料が引かれるのは5月からです。

税金の天引きは社会人としてのコスト


せっかくがんばって働いても、給与から引かれている額が大きく感じて切ないかもしれませんね。でもこれらのお金の目的や役割を知って、前向きな考え方に切り替えましょう。

所得税や住民税は、私たちの身近なところで役立っています。

たとえば身の安全を守る警察や、健康を守るための地域の衛生管理、毎日使っている道路の整備、学校や子育てなどの費用も、あなたが社会人になるまでは、大人たちが払ってきた税金によって、まかなわれていました。
子どもの間は大人が払ったコストに支えられる側ですが、これからは大人になった自分たちが国や地域を支える側にも加わるということです。

「税金を払える」のは、それだけ稼げるようになったことの証明とも言えそうです。
自分が払った税金が、国や地域の設備や仕組みなど、ありとあらゆるものに広~く役に立っているんですよ。忘れずにいてくださいね。

社会保険料等の天引きは自分を守るコスト


春の猫のイメージ2

給与から天引きされている社会保険料も、今後の人生できっといつか役に立ちます。詳しく説明すると長くなってしまうので、超・コンパクトに健康保険、厚生年金保険、雇用保険を例にとり、使える制度をご紹介します。さらっと読んで頭の片隅に入れておき、いつか役立てて下さい。

(1)健康保険のメリットは3つ

  1. 病気やケガで病院へ行ったときに窓口で払う費用が一部負担(1~3割)で済む

  2. 入院などで1ヶ月の医療費が飛び抜けて高くなってしまったときは「高額療養費」制度で一定額を超えた負担分を払い戻してくれる

  3. 病気やケガで会社を4日以上休むと、給与の2/3を「傷病手当金」として払ってくれる

(2)厚生年金保険の3大機能

  1. 老後の基礎生活費を補う「老齢年金」

  2. 病気やケガで重い障害を負ってしまったときに受け取れる「障害年金」
    事故で体が不自由になったケースだけでなく、がんや精神の障害でも、症状が重くて仕事が難しいといった状況によって障害年金を受け取れる可能性が出てきます。

  3. 「遺族年金」は、自分が亡くなった後の遺族の生活を支えます。パートナーや子どもができて、家計を支える自分に万が一のことがあったというときの助けになります。

厚生年金保険は、これら3つの機能を併せ持っています。
給与から天引きされた分、将来の支えになりうることを忘れないでくださいね。

(3)雇用保険は会社を辞めずに使うのがポイント!

雇用保険は失業したら使う「失業保険」というだけでなく、むしろ失業しないためにキャリアアップしたり、「休業制度」を利用したりして、辞めずに仕事を続けるために使う保険とも言えます。
勤務期間など様々な条件がありますが、以下のようなメリットを受けられる場合があります。

  1. 「教育訓練給付」で専門学校等の学費を一部戻してもらえる

  2. 会社勤めの父母が育児休業で1年間(条件が合えば最大2年間)休んでも、「育児休業給付」を受けられる

  3. 家族の介護で会社を休む場合に「介護休業給付」を受けられる

  4. 失業時、再就職するまでの一定期間、「基本手当(いわゆる失業手当)」を受けられる

※日数・金額・年齢等の詳細は省略してあります。興味がある場合はハローワークのサイトをチェック!

というわけで、社会保険・雇用保険のメリットを並べましたが、約3万円(月20万円の給与であればそのうちの約15%)程度のコストで、ここまでさまざまな保障がカバーされています。
しかも、勤務先である会社も保険料を負担しているのです。給与からの天引きは、「自分を守る」ためのコストとして捉えてみてくださいね。

後編では、給与を計画的に使うためのマネープランの基礎についてお伝えします。

<クレジット>
●なごみFP・社労士事務所 中村薫

<プロフィール>
中村薫(なかむら・かおる)1990年より都内の信用金庫に勤務。退職後数ヶ月間米国に留学し、航空機操縦士(パイロット)ライセンスを取得。訓練中に腰を痛め米国で病院へ行き、帰国後日本の保険会社から保険金を受け取る。この経験から保険の有用性を感じ1993年に大手生命保険会社の営業職員となり、1995年より損害保険の代理店業務を開始。1996年にAFP、翌年にCFP®を取得し、1997年にFPとして独立開業。2015年に社会保険労務士業務開始。キャリア・コンサルタント、終活カウンセラー、宅地建物取引士の有資格者でもある。

※こちらの記事は、ライフネット生命のオウンドメディアに過去掲載されていたものの再掲です。

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