(画像はイメージです)

胃がんは大腸がんに続いて2番目にかかる人が多いがんです。早期の発見および治療を促すため、日本では50歳以上の人を対象に2年に一度「胃がん検診」を受けることが推奨されています *。
しかし、いざ胃がん検診を受けようとした時、「胃バリウム検査」と「胃カメラ検査」の2つの選択肢がある*ことを知って、どちらにしたら良いか迷ってしまう人もいるかもしれません。
そこで今回のコラムでは、検査を選ぶ時のポイントとなる、2つの検査のメリット・デメリットについて説明をします。
(*自治体によって対象や検査内容は異なることがあります)

当記事はMEDLEYニュース(2020年3月10日配信)より許可を得て転載しています
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

■1.胃がん検診とは?

自治体等が実施するがん検診(対策型検診)の目的は、がんを早期に発見して早期治療につなげ、死亡率を減らすことにあります。そのため、その検査を受けることで死亡率の減少効果があるとわかっている方法が採用されます。

胃がん検診ではこれまで「胃バリウム検査(胃透視検査)」が行われてきましたが、近年、「胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)」にも胃がんによる死亡リスクの減少効果があるという報告があり、2016年度から胃がん検診として推奨されるようになりました。人間ドックなどの任意で受ける胃の検査でも、この2つが選択肢として用意されているところが多いようです。

■2.胃カメラ検査と胃バリウム検査の特徴とは?

胃バリウム検査とは、バリウムを飲んでからレントゲン写真を撮影することで胃粘膜の凹凸を映し出すものです。一方で胃カメラ検査は、小さなカメラの付いた細長い管を、口または鼻の穴から入れて、食道、胃、十二指腸の粘膜を画像で見る検査です。

どちらも胃がんを見つけるのに優れた方法ではありますが、早期の胃がんは胃カメラ検査のほうが見つけやすいといわれています。また、胃カメラ検査では、がんが疑わしい箇所があればその場で組織の一部を採取して(生検)、顕微鏡で詳細に調べられるというメリットもあります。

しかし、一般的に胃カメラ検査のほうが費用は高く、検査を受ける際に苦痛を感じることがあるというデメリットもあるため、これらの違いも考慮したうえで選ぶと良いと思います。

■3.費用の違いはどのくらいか?

自己負担額は自治体によって異なりますが、ほとんどのところで胃カメラ検査のほうが高く設定されています。

たとえば、千葉県我孫子市の自己負担額は、胃バリウム検査で1,200円、胃内視鏡検査で4,500 円です(2019年度、一部の人は減免または免除されます)。一方、自己負担額が無料の自治体もあり、東京都中央区では自己負担額はどちらの検査も0円です(2019年度)。住んでいる自治体の自己負担額について知りたい人は、市区町村のホームページなどでご確認ください。

胃カメラ検査では追加料金がかかることも

胃カメラ検査では、窓口で追加料金の支払いが必要になることがあります。これは、前述のように胃カメラ検査と同時に「生検」などの検査を追加で行うことがあるからです。生検には一カ所あたり約5,000円(3割負担の場合)の自己負担がかかります。また、薬の処方やピロリ菌の検査などが検診当日に追加されることもあります。

■4.検査のつらさはどうか?

筆者が医師として検査をやってきた経験から述べると、胃バリウム検査のほうが胃カメラ検査よりも苦痛が少ないと感じている人が多い気もします。

とはいえ、胃バリウム検査でも負担がないわけではなく、発泡剤やバリウムを飲むのに抵抗を感じる人も少なくありません。そこでバリウムの風味を良くしたり少ない量で済むようにしたりと、以前より改良を行っています。それでもバリウムを飲んで気持ち悪くなってしまう人はいますし、バリウムを排泄するための下剤でお腹の調子を崩してしまう人もいるのが現状です。

胃カメラ検査はより苦痛を伴いやすい検査で、特に胃カメラが喉を通過するときに吐き気などの症状を生じることもあります。しかし、胃カメラを鼻から挿入したり、鎮静剤を使用したりするなどの方策で、苦痛が軽減できるようになってきました(詳しく知りたい人は、「胃カメラ検査は本当に辛いのか? 検査を受ける人が知っておくと良いこと」も参考にしてください)。こうした工夫のおかげで胃カメラのほうが楽であると感じる人もいらっしゃるかもしれません。

ただし、医療機関や自治体によって、鎮静剤を使用しないと取り決めているところがあります。鎮静剤を希望する人は、あらかじめ医療機関に問い合わせてから向かうことをお勧めします。

先述の通り、胃バリウム検査のほうが胃カメラ検査よりも楽にできたという人もいるようですが、どのくらい苦痛を伴うのかは個人差が大きく人それぞれですので、自分の考えにあったものを選ぶようにしてください。例えば、のどに物が入ってくる違和感が得意ではない人はバリウム検査を選ぶといった具合です。

■5.安全性はどうか?:偶発症について

胃カメラ検査と胃バリウム検査のどちらのほうが安全かは一概にはいえませんが、どちらも安全性の高い検査であることがわかっています。しかし、検査のリスクはゼロではなく、胃バリウム検査による偶発症(合併症)には、便秘腸閉塞、消化管穿孔、肺炎じんましんなどがあります。一方、胃カメラ検査では、鼻血、消化管出血、鎮静剤による過鎮静、消化管穿孔などが報告されています。

偶発症の可能性があるといわれると検査したくなくなるかもしれませんが、その後に処置をすれば大きな問題にならないことがほとんどです。また、どちらの検査も胃がんの死亡率減少効果というメリットのほうが上回ると考えられているため、心配しすぎず検診を受けると良いと思います。

ただし、高齢者の人は偶発症が生じやすいといわれているので注意が必要です。何歳以上の人で、偶発症のリスクが胃がんを発見するメリットを上回るのかはわかっていないのが現状ですが、80歳を超えるようなご高齢の人が胃がん検診を受けるべきかどうかは、本人の希望の強さや既往症などに応じて、個別に判断する必要があります。胃がん検診を受けるべきどうかで悩んでいるご高齢の人は、お医者さんに相談してみてください。

■6.まとめ

今回は、胃がん検診で行われる胃カメラ検査と胃バリウム検査の違いについて説明しました。検査法を選ぶ時のポイントをまとめます。

【胃がん検診の検査法を選ぶ時のポイント】

  • 胃カメラ検査のほうが早期胃がんを見つけやすい
  • 胃がんによる死亡率を下げるには、どちらの検査も有用である
  • 胃バリウム検査のほうが安いことが多い
  • 個人差はあるが、胃バリウム検査のほうが楽に受けられる人が多い
  • どちらも安全性の高い検査である
  • 80歳を超える人は胃がん検診を受けるべきかお医者さんに相談を

人によって重視する点が異なるのでどちらが良いとは一概に言えませんが、価値観と照らし合わせて自分に合った検査法を選んでみてください。

<クレジット>
文/清水 貴徳(MEDLEY)
信州大学医学部医学科卒業。茅ヶ崎徳洲会総合病院(現 湘南藤沢徳洲会病院)にて初期研修および総合内科後期研修。その後、新東京病院消化器内科医員および船橋駅前内科クリニック副院長を経て、2019年よりメドレーに参加。日本内科学会認定内科医、総合内科専門医、日本消化器病学会専門医。


参考文献

  • Hamashima C, et al. Mortality reduction from gastric cancer by endoscopic and radiographic screening. Cancer Sci. 2015;106:1744-1749.
  • Hamashima C, et al. A community-based, case-control study evaluating mortality reduction from gastric cancer by endoscopic screening in Japan. PLoS ONE 2013;8:e79088.
  • Jun JK, et al. Effectiveness of the Korean National Cancer Screening Program in Reducing Gastric Cancer Mortality. Gastroenterology 2017 ;152:1319-1328.