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「私は昔から胃の調子が悪いから、胸焼けがあるのは仕方ないですよね。」
筆者が内科医として診察していると、よく聞く患者さんの声です。これは本当に仕方がないことなのでしょうか。

胃食道逆流症(逆流性食道炎)は日本人の約10%にあるといわれる病気です。胸焼けなどの消化器症状の主な原因として考えられていますが、胃食道逆流症であれば、適切に対処すれば症状はほとんど抑えられます。しかし、上記のように「仕方ない」でやり過ごしてしまって、その症状で苦しみ続けている人が少なくありません。今回のコラムでは胃食道逆流症を疑う症状と対処法について説明します。

当記事はMEDLEYニュース(2020年7月7日配信)より許可を得て転載しています。
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません

■胃食道逆流症の症状とは?

胃食道逆流症とは胃酸が食道のほうへ逆流することによって、不快な症状が生じる病気です。医療者はよくGERD(ガード)という呼び方をするので、「ガード」といわれたらこの病気のことなのかなと思ってください。下記で紹介する症状に心当たりのある人は、疑いが強まるので注意してください。

よくある症状:胸焼け、みぞおちの痛み、口が酸っぱくなる感じ

「胸焼け」は、みぞおちのあたりが焼けるようにジリジリしたり、しみたり感じる胃食道逆流症の代表的な症状です。「みぞおちの痛み」を感じる人も多いです。また、逆流した消化液が口に到達して「酸っぱく感じること」もあります。

これらの3つの逆流症状は食後2-3時間以内に生じることが多いという特徴があります。

実は起こりやすい症状:咳が出る

胃食道逆流症は咳の原因の一つでもあります。どうして消化器の病気で咳が出るのか、不思議と思うかもしれません。このメカニズムには「誤嚥(ごえん)説」と「反射説」の2つの説が考えられています。

「誤嚥説」とは、逆流物がのどや気道まで上がって、むせてしまうという考え方です。一方で、逆流がのどや気道まで達しなくても、食道に到達しただけで咳がでてしまうという「反射説」も有力です。このように食道が刺激されただけで咳が出てしまう理由は、食道と脳の咳中枢とが神経でつながっているからだと説明されています。

胃食道逆流症による咳はひどくなるタイミングに特徴があって、会話中、朝起きた時、食事中に悪化するという報告があります。

意外と起こりうる症状:睡眠が浅くなる

これは「胸焼け」や「口が酸っぱくなる」などの逆流症状によって「眠りが浅くなる」からと考えられています。日中に眠たくなって仕事に集中できないなどの支障が生じてしまう人もいます。

なお、逆流が起きるタイミングには個人差があるので、熟眠が妨げられる時間帯は人それぞれです。たとえば、寝つきが悪くなる人もいるし、途中で起きてしまう人もいます。胸焼けなどの逆流症状に加えて睡眠障害もある人には、次に説明する胃食道逆流症の対処法が効果的です。

■「胃食道逆流症かもしれない」と思った人へ

ここまで読んで胃食道逆流症が不安になった人に、まず試してほしいのが、生活習慣の見直しです。

生活を改善する

ただ「生活を見直してください」と言われてもピンとこない人も多いと思います。以下のことを取り入れると症状の改善が見込めます。

【胃食道逆流症を改善する生活習慣】

  • 肥満の人は体重を減らす
  • 枕を高くして寝る(ベッドの頭側を起こして寝る)
  • 食べすぎない
  • 食べてすぐに横にならない
  • 寝るときは身体の左側を下にする
  • 刺激物(お酒、炭酸飲料、カフェインなど)を控える
  • 脂肪分の多い食事を控える
  • 禁煙する

これらのなかでも、「肥満の解消」と「枕を高くして寝ること」がとくに効果的です。しかし、生活習慣を見直すだけでは改善せず、薬が必要になる人もしばしばいます。そんな人は市販薬を試してみるというのは次の一手になります。胃食道逆流症に効果がある薬剤の一つ「H2受容体拮抗薬」は医療機関で処方されるだけでなく、市販薬としても売られています。

市販薬を試す

H2受容体は胃酸の分泌を調節しています。この受容体をブロックすることで、胃酸の分泌を抑える薬が「H2受容体拮抗薬」です。「H2ブロッカー」という呼び方のほうが、なじみがあるかもしれません。この薬は、後述するプロトンポンプ阻害剤という薬に比べて、即効性に優れているという利点があります。

主な副作用は、便秘、白血球減少、肝機能検査の異常ですが、適切に使用すれば安全性の高い薬です。ただし、H2受容体拮抗薬は腎機能が低下している人は少ない量での使用が推奨されていますので、お医者さんや薬剤師さんに相談してから使用してください。

ここまで生活習慣の見直しや市販薬といった比較的手軽に行える対処法について説明をしましたが、胃食道逆流症の症状は他の病気でも起こりうることに注意が必要です。症状が軽ければしばらく様子をみることもできますが、なかなか症状が改善しない人や症状が強い人は、医療機関で調べてもらうようにしてください。

また、医療機関では胃食道逆流症に対して市販薬よりも効果の高い薬が使えますし、一人ひとりにあった薬の組み合わせを考えてくれます。上記に当てはまる症状があれば、まずお医者さんに相談してみるのも良い考えです。

医療機関に相談する

胃食道逆流症かもしれないと思った時に受診する診療科は、消化器科、胃腸科、一般内科が適しています。診察や検査によって胃食道逆流症が疑われれば、プロトンポンプ阻害剤(PPI)をまず処方されることが多いです。プロトンポンプ阻害剤は市販されておらず、医療機関からの処方箋がないと手に入りません。また、H2受容体拮抗薬よりも胃酸を抑える効果が高いといわれています。

病状によってはプロトンポンプ阻害剤に加えて、消化管運動改善薬や漢方薬などを処方されることもあります。

■最後に

食後の胸やけやみぞおちの不快感があっても、体質だからしょうがない、ちょっと食べ過ぎただけかも、などと済ませてしまう人は多いと思います。しかし、胃食道逆流症(逆流性食道炎)が原因であれば、治療をすると、食事を楽しめるようになったり睡眠不足が解消したりと、生活の質を高めることができます。我慢し過ぎず、今回のコラムで紹介した対処法をトライしてみてください。

<プロフィール>
清水 貴徳(MEDLEY)
信州大学医学部医学科卒業。茅ヶ崎徳洲会総合病院(現 湘南藤沢徳洲会病院)にて初期研修および総合内科後期研修。その後、新東京病院消化器内科医員および船橋駅前内科クリニック副院長を経て、2019年よりメドレーに参加。日本内科学会認定内科医、総合内科専門医、日本消化器病学会専門医。


参考文献