黒田尚子さん(黒田尚子FPオフィス代表)

今回は31歳の女性からの相談です。彼女の悩みは、お付き合いが続かないこと。交際を始めても、3ヶ月ほどで自然消滅してしまうことが多いというのです。なにか大きなトラブルやケンカがあったわけでもないのに、気付けばいつの間にか関係がフェイドアウト……。交際を続けられる人間になるにはどうしたらいいのかと深刻に悩む相談者さんに黒田先生がアドバイスしました。さて、その内容は!?

【相談】
私は、男性との交際がいつも短期間で終わってしまいます。3ヶ月以上続いたことはゼロ。「付き合っちゃおうか?」と軽い気持ちで付き合い始めた人でも、10年来の友人で結婚を見据えて付き合い始めた人でも、いつも同じ結果に終わります。3ヶ月くらい経つと、なんだか合わないなという雰囲気になり、自然消滅してしまうのです。
大きなケンカをしたわけでもないし、「あなたのこういうところが耐えられない」と言われたわけでもないので、自分の何が悪かったのかわからず、いつもモヤモヤしています。気が合わないと感じてからも交際を続けていくにはどうしたらよいのでしょう。交際をきちんと続けられる人間になるためにはどんな努力をしたらよいのでしょうか。黒田先生、教えてください!(31歳・女性)

■無理して続ける必要はない

私はファイナンシャルプランナーであって、恋愛のスペシャリストというわけではありません(笑)。ただ、人生の先輩として、まずはっきりと言ってしまいますね。気が合わないと感じたら、無理してお付き合いを続けることはないですよ。無理して続けても、自分がつらくなるだけです。相談者さんは「交際をきちんと続けられる人間になるためには、どんな努力をしたらいいのか」とお尋ねになっていますが、こういうことに努力はいりません。相談者さんがモヤモヤしたり、自分に問題があるのではないかと悩んだりする必要は全くないと思います。

友人も同じです。友人はつくるものではなく、自然とできるもの。無理やり友人や恋人をつくって続けようとしても、その後、破綻すると思うのです。

ただし、いったん築き上げた友人関係を続けていくにはメンテナンスが必要です。とくに女性は結婚や出産などで環境が変わると、友人と疎遠になりがちです。自分にとって本当に大事な人であればコンスタントに連絡を取るなど、関係を維持していくための気配りや配慮は欠かせないでしょう。

■自分を大事にしつつ、相手の立場に立ってみる

ところで、相談者さんは一人の時間が好きですか? 一人の時間を大切にしていますか? 私は、夫や子どもと一緒に過ごす時間はもちろん、それ以上に、一人でいる時間が大好きですし、とても大事にしています。

自分を大事にする人は相手も大事にできます。逆に言えば、自分のことをおろそかにしたり、後回しにしたりして、相手のことばかり考えていると、相手にとってはそれが重荷に感じられることがあるかもしれません。自分の想いが報われない、わかってもらえない場合も、かなりのストレスではないでしょうか?
自分を好きになり、自分一人の時間を愛おしみ、自分の生活を丁寧にケアしているでしょうか? もし、そうでないなら、少し心がけてみませんか。そうするうちに、自分がどんな人と一緒にいれば居心地が良いのか、自然体でいられるのかが、何となく見えてきます。

相談者さんは、お付き合いする方にどのようなことを求めているのでしょう? 学歴、容姿、性格、経済的な安定などなど……こういったスペックを重視しているわけではなくても、実は相手に求める条件があるのだとしたら、それは自分にも求められるということをお忘れなく。そこで、ぜひ相手を思いやり、相手の立場に立って考えることも意識してみてください。

相手への思いやりや気遣い、配慮は自然に態度に出ます。それができれば、いつか自然にお相手が見つかり、無理をしなくても長くお付き合いできるようになるはずです。

自分の価値観を踏まえつつ、思いやりの心を大事にしましょう。そうすれば大丈夫。「この人こそ」という方が現れるのは時間の問題だと思います。

■相手のお金に対する価値観は知っておきたい

さて、ここからはライフネットジャーナル的な「お金」にまつわるアドバイスをしましょう。

相談者さんには、結婚を見据えた相手もいらっしゃったとのこと。お付き合いが続けば、そのうち結婚の話が持ち上がるかもしれませんよね。このとき、相手がお金に対してどのような価値観を持っているかは、あらかじめ知っておきたいことの一つです。金銭感覚は結婚生活を続ける上で、非常に重要な要素です。「生活費を渡さない」「浪費する」など、お金に関するトラブルは、性格の不一致や価値観の相違などと並ぶ代表的な離婚の原因でもあるのです。

どうやってお金を稼ぐか、何にお金を使うかといったお金に対する価値観は、人生の価値観であり、生き方そのもの。何を優先し、何を大切にするのか。相手の考えや判断基準、優先順位を知ることは長く一緒に過ごす上では欠かせません。

私がご相談を受けた経験からすると、男性の場合、趣味にお金を使いがちです。
趣味にお金を使いすぎる人はちょっと……なんて思った方、それはちょっと待って。
車に費やす方もいれば、マンガや映画、洋服や化粧品に使う方もいます。友人との付き合いに一番お金を割いているという方もいるかもしれません。
「お金のかかる趣味」といっても、人によってさまざまですよね。あなた自身にも、心当たりはありませんか。

趣味に関する相手のお金の使い方が気になったときには「自分はどうだろう」と振り返ってみてください。そうした消費が自分にとって意味のあるお金の使い方だとすれば、相手だって同じなのです。

■メリハリのあるお金の使い方ができているか

お金を使う上で一番大事なのはバランスです。収入に見合う使い方なら問題ありませんが、収入に対して趣味への出費が異常に多く、バランスがとれていない場合には要注意。一人で生活しているのなら問題ありませんが、お互いをパートナーとして、これからさまざまなライフイベントを乗り越えていく上では、大きな障害になることもあります。

ただし、そうした場合でも、一度コミュニケーションを取ってみるといいでしょう。柔軟に考え方を変えられる人かもしれませんからね。

相手の趣味が自分には全く縁がなく、関心が持てないとしても、メリハリを効かせてお金を使っているのなら、そうとやかく言う必要はないでしょう。お金の価値観についてもコミュニケーションができる人をぜひ見つけてくださいね。

さて、最後に相談者さんにもう一度、この言葉を贈りたいと思います。

気が合わないと感じているのにお付き合いを長く続けようとして、自分を押し殺したり、努力をしすぎたりする必要はありません。

続くものは続くし、そうではない関係は終わるのです。相談者さんにいま一番必要なのは、「交際が長続きしない自分」にモヤモヤせずに、ご自分の生活や時間を大事にして自己肯定感を高めることではないでしょうか。日々を大事に過ごしてください。

 

<プロフィール>
黒田尚子(くろだ・なおこ)。 1969年富山生まれ。立命館大学卒業後、1992年(株)日本総合研究所に入社。SEとしておもに公共関係のシステム開発に携わる。1998年、独立系FPに転身。現在は、各種セミナーや講演・講座の講師、新聞・書籍・雑誌・ウェブサイトへの執筆、個人相談等で幅広く活躍。2009年12月に乳がんに罹患し、以来「メディカルファイナンス」を大テーマとし、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動も行っている。CFP® 1級ファイナンシャルプランニング技能士、CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格を保有。
●黒田尚子FPオフィス

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
文/三田村蕗子
撮影/村上悦子