家計簿をつけた方がいいとわかっていても、面倒くさくてやる気になれない。数字は苦手だし、飽きっぽいので続ける自信がない……という方も多いのではないでしょうか。今回の相談者さんもその一人。支出と収入をしっかり管理したいと思いつつ、難しいイメージがあってなかなか手を付けられずにいます。赤字にはならないので、なんとなくお金を使ってしまっているそうです。簡単で、かつ継続しやすい家計管理の方法はあるのでしょうか。黒田先生がずばり指南します。

【相談】
自分は今、28歳です。私の悩みは家計管理がどんぶり勘定なこと。本当はちゃんと支出と収入を管理した方がいいとは思うのですが、難しそうで実現できていません。独身なので差し迫って困ることもないので、結局、なんとなくお金を使っています。幸い、赤字ではないものの、このままでいいとも思っていません。何か簡単な家計管理の方法はないでしょうか。家計に関する基本的な考え方や手軽な方法を教えてください、黒田先生!(28歳・男性)

■通帳を使って収支を知ろう

簡単で効果的な家計管理の方法を知りたいんですね。ありますよ、一年に一度で済む、とっても楽な方法です。

それは、年末年始に通帳を確認すること。相談者さんのお給料や報酬が振り込まれて、生活費を引き出したり、クレジットカードの支払いや公共料金などの引き落としに使っていたりしているメインの口座、つまりお金が一番よく出入りする口座がありますよね。その口座の通帳の、その年の1月1日から12月31日までの1年間の残高を見て、ちゃんと収支をチェックするだけ。

通帳に記載された内容は、収支一覧表になっています。残高が増えていれば、その年は黒字になったわけですし、逆に減っていれば、預貯金を取り崩したということ。通帳の中身に目を通せば、自分がどのように暮らしているのか、キャッシュフローがどう回っているのかがよくわかります。

一年に一度ではちょっと物足りないということであれば、少しハードルを上げて、月単位で通帳の残高を確認してはいかがでしょう。毎月、月末や給料日に通帳をチェックして、収支を把握するクセをつけるんです。これならさほど難しくないと思います。

■毎月の目標残高を設定し、貯金するクセをつける

月単位で家計を管理する場合には、毎月の目標残高を設定して、家計の健全度をはかる方法があります。例えば、お給料が30万円で、公共料金なども含めた生活費が20万円とします。毎月5万円は貯蓄分として、先に別の貯蓄用口座に移し、月末あるいは次のお給料が入る日までの残高が5万円をキープできるように、やりくりをしてみましょう。

毎月、目標残高を設定する方法のメリットは、お金が貯まりやすいだけではなく、予算内で家計をまかなう術を体で覚えられることです。今週はお金を使いすぎちゃったから、来週以降は支出を控えようとか、このままでは残高が5万円に満たなくなりそうだからもう少し節約しなくちゃといった具合に、自然と「やりくり」が身につくようになります。

なお、会社員であれば、ボーナスを貰える企業もありますが、毎年必ず貰えるものではありません。もしも想定よりボーナスの金額が少なくなった、あるいはカットされたとなると、住宅ローンでボーナス払いをしている人や、毎月の赤字分をボーナスで補てんしていた人は、非常に困ってしまうはず。不確実な収入を見越して計画を立てるのではなく、ボーナスはないものとして、月単位での家計管理を習慣づけておけば、もしものときの影響も小さく抑えられます。

また、欲しいものを買うためになんとなく貯金を取り崩す人もいるかもしれません。しかし、無計画に貯金に手を付けることはおすすめできません。

貯金の取り崩しはクセになります。きりがなくなる可能性が高いんです。相談者さんはいま28歳ですから、これからお金が必要になる場面が多くなることは間違いない。いまのうちから貯金をするクセをつけておくと、この先が違ってきますよ。

私が30代前半で結婚したときには、夫婦共働きで、家計に余裕がありました。それでも、子どもが生まれるまでは、毎月ギリギリの予算で生活して、いつも夫に文句を言われていました。「なんで、こんなに節約しなくちゃいけないんだ!!」って。でも、子どもを持つつもりなら、貯め時は短いことを知っておかなくてはいけません。収入が多いからと言って、一度生活レベルを上げてしまうと、なかなか元に戻すのが難しいものです。私自身、FPとしてよく理解しています。

それに、早い時期から家計の引き締めをやっておくと後が楽。50代になった今だから、これは実証済みです。これからは自分で資産を準備する「自助」が大切な時代。ライフイベントやいざというときに備えて貯金を増やしておくことはとても大事です。いまからぜひ、家計管理のクセをつけておいてください。

■便利な家計簿アプリに頼ってみる

相談者さんは、何か簡単な家計管理の良い方法はないかとお悩みでしたね。パソコンやスマートフォンを使って、マイ家計簿を作成するのも一手です。ただ、最初にお話しした通帳を使った方法以外なら、「家計簿アプリ」をおすすめします。

マイ家計簿での家計管理は、レシートを取っておいてそれを入力して……と、手順が煩雑になりがちです。後から入力しようと思っていると、いつのまにか時間がたって、何に使ったかがわからなくなり、入力も忘れてしまう……。簡単な方法を求めている相談者さんの場合、そうして管理が続かなくなる可能性も、想像できるのではないでしょうか。

そこで、便利な「家計簿アプリ」を使いましょう。スマートフォンのカメラ機能でレシートを撮影すると、日付や品名、金額、店名などを素早く読み取りしてくれるものもあります。レシートを撮影すればいいだけなので、本当に手間いらず。私は、突発的な支出があったときにも、すぐにアプリに入れています。これなら忘れることがありません。便利なツールがあるのですから、それに頼ってしまいましょう。私も利用しています。楽ちんですよ。

いずれにせよ、お金の出入りを見える化するのが、家計管理の第一歩。家計管理も「持続可能性」が大事で、続けることで、自分のお金の使い方のクセも見えてきます。ぜひとも、いろいろ試してみて、ご自分がしっくりくる方法を選んでください。

<プロフィール>
黒田尚子(くろだ・なおこ)。 1969年富山生まれ。立命館大学卒業後、1992年(株)日本総合研究所に入社。SEとしておもに公共関係のシステム開発に携わる。1998年、独立系FPに転身。現在は、各種セミナーや講演・講座の講師、新聞・書籍・雑誌・ウェブサイトへの執筆、個人相談等で幅広く活躍。2009年12月に乳がんに罹患し、以来「メディカルファイナンス」を大テーマとし、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動も行っている。CFP® 1級ファイナンシャルプランニング技能士、CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格を保有。
●黒田尚子FPオフィス

<クレジット>
取材/ライフネットジャーナル オンライン 編集部
文/三田村蕗子
撮影/村上悦子