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2008年5月に日本で開業したオンラインの生命保険会社である、ライフネット生命。2021年8月に、「海外市場における募集による新株式発行に関するお知らせ」を発表しました。社内の担当チームが、そのいきさつなどについて、リレー形式でお送りしていきます。
第3回は、経営企画部の米盛が担当します。
>>第2回はこちら


こんにちは。ライフネット生命経営企画部の米盛です。
今回の海外公募増資のPMO(プロジェクトマネジメントオフィサー)を担い、主に、英文目論見書等の各種文書の作成や体系化の進捗管理を担当しておりました。

今回の海外公募増資は、英文目論見書を作成して、ヨーロッパとアジアの機関投資家へ販売を行うReg.S(Regulation S)フォーマットを採用しています。英文目論見書とは、事業戦略やリスク情報、財務情報など、投資家が投資判断をするために必要となる情報を、網羅的に記載する書類です。

今回は、英文目論見書の作成にあたって具体的に難しかった点、工夫した点をお伝えします。同様の資本調達を検討されている方の参考になれば幸いです。

本件での英文目論見書の主要項目は、以下の通りです。

<英文目論見書 主要項目>
1. 海外募集
2. リスク要因
3. 資金使途
4. 要約 財務データ
5. 事業
6. 経営陣及び従業員
7. 主要株主
8. 日本の生命保険業界の規制
9. 日本の税制

最初に気をつけた点はスケジュールの調整でした。目論見書の作成には、証券会社や弁護士事務所、監査法人等多くの社外関係者の協力が必要です。プロジェクトのキックオフ後、まずは関係者間で無理のないスケジュールかを確認する必要があります。

スケジュールに大きく影響を与えるのは、目論見書に記載する財務情報の対象期です。今回、当社では、3期併記した英文財務諸表を作成し、直近の財務情報を開示対象に含めました。これを行う場合、社内関係者、翻訳会社や監査法人等の外部関係者ともスケジュール上問題ないか確認する必要があります。

英文財務諸表に関するスケジュール調整は、関係者の多さから、他のプロジェクトメンバーと手分けして行いました。結果的に、とてもスムーズに関係各所との進め方などを調整できましたが、多くの関係者の理解があってこその成果だと考えています。

続いて、英文目論見書の作成で苦労した点をお伝えします。英文目論見書は約200ページにわたって英語で作成する必要があるので、はじめのうちはその概要を把握することも一苦労でした。そこで、作成を始める前に、サポートしていただく弁護士事務所に英文目論見書の構成や重要な論点について、レクチャーを依頼しました。英文目論見書の目的、前回からの変更が必要になる箇所、ポイントとなる項目についてレクチャーを受けたことが、理解の大きな手助けとなりました。もし初めての経験で不安に感じる場合はおすすめの手法です。

英文目論見書は作成に携わる関係者が多いので、関係者間の調整が必要な論点については、全関係者が一堂に会したタイミングで決定することも重要です。例えば、「リスク要因」の項目について、蓋然性が低く記載が不要という意見がある一方で、網羅性の観点から記載が必要という意見が出てくることもあります。こういった意見を関係者間で調整する際には、メールでのやり取りではなくミーティングを設定した方が効率的でした。

また、内容が多岐にわたるため、社内のチーム体制は、経営企画部、経理部、法務部、数理部と複数の部門のメンバーでチームを組成しました。チームを組成する際は、無駄な作業を削減するために、あらかじめチームでの文書作成や確認のルールを決めるとともに、分担も明確にしておくことが不可欠です。どんな仕事においても、基盤がしっかりしていることが後々重要になることを痛感しました。

さらに、社内メンバーに公募増資の未経験者も多く含まれていたため、経験が少ないことを前提に社外関係者へ協力を依頼・相談しました。プロフェッショナルファームの皆さんは、今回の増資のような案件を数多く行っていることから、いくつもの引き出しを持っています。それをフル活用するために、時には経験の少なさや不安な点を自己開示することも必要であると感じました。
これによって多くの外部関係者に、当社の状況をご理解いただき、いつでもサポートしていただけたことが、今回のプロジェクトの成功に繋がったと思います。

以上が、英文目論見書の作成にあたって工夫した点となります。他の業務においてもごく当たり前のこともあろうかと思いますが、特別な案件においてこそ、基本的な点を確実に準備することが大事であることがよくわかりました。今回は特に、無駄な作業や効率化が可能な点を事前に整理しておくことが後々の工数削減に直結することを実感した案件でもありました。

 

経営企画部
米盛

<プロフィール>
2015年にライフネット生命新卒入社。今回の海外公募増資にはPMOとして参加し、ひとつの目的に向かってチームをまとめ上げる喜びを感じた。趣味はメジャーリーグを見ること(好きな選手はイチロー、大谷翔平、タティス・ジュニア)

 

【その他の連載はこちら】
>>ライフネット生命の海外公募増資の出口①~海外公募増資の経緯を公開します
>>ライフネット生命の海外公募増資の出口②~海外公募増資の実行に当たって検討したこと