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2008年5月に日本で開業したオンラインの生命保険会社である、ライフネット生命。2021年8月に、「海外市場における募集による新株式発行に関するお知らせ」を発表しました。社内の担当チームが、そのいきさつなどについて、リレー形式でお送りしていきます。
第4回は、法務部の三浦が担当します。
>>第3回はこちら


こんにちは。ライフネット生命法務部の三浦です。第4回は、法務部員として今回の増資にどう関わったかをご紹介します。今回の連載の共通テーマは「誰でもできる海外公募増資」ですので、同種の資本調達を検討される方の心理的なハードルを下げる一助となればと思います。

私が主に関わったのは、引受契約書(Purchase Agreement)の確認や関係者間での内容調整、社外資料となる各関連文書のコンプライアンスチェック*、変更登記申請の対応です。

*コンプライアンスチェックとは…契約書や社外文書の内容が、法律に照らして妥当であるか、法的トラブルに発展するリスクはないかといった観点で行うチェックのことです。リーガルチェックと表現する会社もあります。

私自身、株式発行の実務経験はなく、文献による確認や勉強だけでは限界があることから、特に引受契約書に関して他のプロジェクトメンバーやリーガルアドバイザーとなっていただいた社外弁護士の協力を多分に得ながら進めてきました。

さて、引受契約書というのは、新たに株式を発行するに当たり、取引内容や当社及び引受証券会社の権利義務等を定めることを目的として締結するものです。表明保証、誓約、費用の支払い、引受証券会社が義務を履行する条件、デフォルト(債務不履行)時の取扱いなどが定められます。
周辺知識を得るために、詳しく解説された文献を探し、「参考になるかもしれない」との思いで何冊か購入してみました(※)。経験がなくともこういった「手持ちの武器」をある程度揃えておくことはできますし、それによって対応のヒントになることもあるので、有用かと思います。
※「スタートアップ投資契約―モデル契約と解説」宍戸善一=ベンチャー・ロー・フォーラム(VLF)編(商事法務)、 「募集株式発行の法と実務」森本滋 編(商事法務)

引受契約書の内容確認に限らず、各関連文書のコンプライアンスチェックもそうですが、特に意識したのは、①分からないことは聞く・相談すること、②自分のところで長期間止めないようにする、ということでした。業務によっては、「自分で調べる・考える」といったことが重要なことはありますが、今回のような複数のメンバーで資本調達を行う中でその時間を取り過ぎると大きな事故になりかねないです。対外的な文書の準備や投資家への説明を充実させるためにも、他のメンバーの業務に影響が出ないように、普段の業務よりも「スピード」「人に頼る」ことに比重を置いて対応するようにしました。

そういったこともあり、質問(例えば、引受契約書の各条項の意義やマーケットの慣習上どう定めることが多いかといった質問)や急な相談にも丁寧に対応していただいた弁護士や他のメンバーには、心から感謝しています。
また、弁護士の先生には、引受契約書に関する説明会を最初のドラフト版を受領した段階で行っていただきました。契約書全体の概要や各条項の意味などを理解することができ、その後の確認作業における負担が軽減されました。

今回のような業務で大切なことは、「声を掛け合う」「助け合う」「思いやり」ということだと思います。これらは一見初歩的な心構えに見えるかもしれませんが、メンバーの大半が在宅勤務をしている中で、各種法令上必要な手続きが多数あること、携わるメンバーには未経験者もいる状況でしたので、当たり前のことを当たり前に対応する、凡事徹底を意識して対応しました。ただ、偉そうなことを言いましたが、どちらかというと対応漏れや遅延を起こさないよう私自身が助けられたことが多かったので、この点も、他のメンバーに感謝しています。

以上が、はじめて海外公募増資に関わった法務部員が感じたことです。

法務部
三浦

<プロフィール>
同業他社(生命保険会社)を経て、2019年4月ライフネット生命に法務部配属で入社。趣味はない。好きな言葉は愛と平和。

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